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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2011.01.14

vol.108  − 寒気 (かんき) −

暖かい陽気のせいか、浴室前の坪庭に在る辛夷(コブシ)の花序が、ネコヤナギの花穂のように、ふわふわした状態になっていました。それが一転、寒気の到来で固く身を縮こまらせてしまいました。
自然の中での営みの変化は驚く程大きいものです。
只、一番日の出の遅いこの時季、庭の木蓮(モクレン)をみると明らかに芽吹きがみられます。
玄関脇の山茶花(サザンカ)もこの寒気に晒(さら)されて、一挙に生気を失って、萎れたり落花したりしてしまいました。
         さざん花の花ちる庭のわりなしや
         よべのあらしに冬来りけり                      (保田與重郎)
を実感させられる年の始めです。

この時季の関東平野は、大気が澄み、爽やかです。関東平野の冬は、乾いた空気、突き抜けるような青空が特徴です。1月に東京へ赴任した時に肌に感じた快適さは、今もはっきりと覚えています。
しかし、考えてみると、昔は潮風の吹き抜ける湿地帯と広大な原野であったはずです。水の問題を克服できたから、当時、世界一の大都市になったのです。家康入府の時代、井戸掘りの技術は未発達で、深く掘れない井戸からの水は、金気や潮気の含んだ水しか得られなかったはずです。
この問題を解決したのが小石川上水、のちの神田上水です。
この発案者が保科正之です。明暦の大火(振袖火事、1月18日)で焼失した天守閣再建を排し、町屋の復旧に当たったのも彼です(中村彰彦「保科正之」)。彼こそが、司馬遼太郎が西洋の騎士道精神と対比して言及している武士道の一つの典型を発揮した会津藩の祖です。

東京オリンピックのマラソンランナー円谷幸吉が、川端康成はじめ多くの文人や国民を感動させた遺書を残して、自裁したのが1月9日です。
彼は、福島県の出身です。この時の世の中の雰囲気は、今でも肌で覚えています。
遺書の中にある「三日とろろ」は、東日本にみられる風習のようです(2010年12月9日「読売新聞[福島版]」)。小正月の行事である「団子刺し」と同様の分布です。

私の母校である安積高校(旧福島中学)の第1期生(明治22年卒)の在校生に高山樗牛がいます。
私が在学中の生徒手帳には、彼の「吾人(ごじん)は須く(すべからく)現代を超越せざるべからず」という言葉が印刷されていました。
彼は、山形県鶴岡(vol.74)で1月10日に生を受けています。残念ながら、彼は今や、忘れられた文学者(思想家)の一人です。後輩の一人としては、彼のあまりに変化した思想遍歴もその一因ではないかと思います。
(vol.74 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=100

今週の花材は、執務室は山茱萸(サンシュユ)の小さな黄色の花が早春を演出しています。
秘書室は、白でまとめられており、新春の新鮮さの象徴になっています。


(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■サンシュユ   ミズキ科/落葉小高木/原
産:朝鮮・中国/《名前の由来》中国名の「山茱
萸」の音読みから/葉が芽吹く前に小さな黄色い
花を枝いっぱいに付ける。茱萸はグミのことを指
し、グミに似た果実をつけ、秋に真っ赤に熟す。薬
用植物として江戸時代に渡来。現在は春を告げ
る花木として親しまれる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1081.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■エピデンドラム(ホワイトキャッスル)   ラン科/多年草/
原産:中南米/《名前の由来》ギリシャ語の“epi”(上に)と“de
ndron”(木)から。本属が一般的に着生蘭であることから/
細く伸びた花茎の先に小さな花が密集して半円形になる。
次々と開花するので、非常に長く観賞できる。
■アナスタシア   キク科/多年草/花弁が花火のように広
がる大きな菊。通常の大菊とは異なる細く繊細な花弁が特
徴。グリーンやブロンズなど、モダンアレンジにもぴったりな品
種が多い。
■ブバルデイア(ロイヤルユリア)   アカネ科/常緑低木/
原産:中央アメリカ メキシコ/《名前の由来》ルイ13世の王国
庭園長で植物学者のブバールの名から/十字型の小さな花
が集まって咲く。白〜赤・ピンク系の花色で、八重咲きや香り
の強い品種などがある。「ロイヤルユリア」は花弁のフチが淡
いピンク色。
※拡大写真http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1082.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

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