HOME > 理事長室からの花だより

理事長室からの花だより

新着 30 件

一覧はこちらから

理事長室からの花だより

2011.01.07

vol.107  − 寂光 −

ここ福島では、今が最も日の出が遅く(6時54分、1月3日〜10日)、出勤時に行き交うすべての車がライトを点灯しています。
空気が乾燥しているせいか、暁方(未明)や薄暮(日没後の黄昏)での、透明感を伴った静寂感は、この時季、際立っています。特に、暁方の鳥のさえずり、あるいは庭先での落ち葉焚き、そして煙突からの水蒸気の白煙が、ものの憐れ(あわれ)を一層深くしています。我が国を象徴する風情の一つではないでしょうか。
その後に続く朝日と夕陽の金色の光が、ビルの壁面に乱反射して、街全体自らが発光しているように見えます。この光の散乱は、モネの「ルーアン大聖堂」連作をみるようで、倦(う)むということがありません。

澄み切った大気の効用は、福島盆地にも素晴らしい風景を贈ってくれます。
高台にある大学から市街地に降りていくときに、北の方角遥かに蔵王連峰が発光体のように白く輝いているのが望めます。福島盆地の壁を構成している、薄く雪を纏った吾妻の峰々の薄墨色が前景を構成しており、この対照が鮮烈です。

今日は、春の七草粥の日です。
私には、地域性か、時代のせいか、子供の頃に食べた記憶がありません(もう忘れてしまっているのかもしれません)。この行事にも、ハレの日が続いての胃のもたれや、新鮮な野菜が不足する冬に対する備えという先人の知恵が込められているのではないでしょうか。


         松とりし 船荒海に 航行す
                                      (石原舟月)
今年はより厳しい環境が待ち受けています。
ひたむきに、そして愚直に進むことでしか道は拓けません。
人間や組織の有り様を、「運命」、「時代」、「環境」などの言葉で言い訳して妥協してはいけないと、心に刻み込んでいます。

今週の花材のキーワードは、花と花器との組み合わせです。
執務室は花器と花材の色が相俟(あいま)って、勁く、凛々しい新年の覚悟をみるようです。
秘書室は酒井抱一の絵のような優しさが溢れています。それにしても、この白磁のロクロの技の冴えは見事です。

(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■ヘリコニア(カリバエレッド)   バショウ科/多年草/原
産:熱帯アメリカ/《名前の由来》ギリシャ神話に登場する女
神ムーサの住む山「ヘリコン」の名より/熱帯アメリカ〜南太
平洋諸島に150種ほど分布。バナナの葉のような大きな葉を
持ち、大型種は5〜7mの草丈に育つ。花(苞)は赤やオレン
ジなど、熱帯特有の鮮やかで美しい色彩。花は苞に包まれる
ように数個ずつ咲く。今回使用したような直立する花序の他、
下垂タイプの花序をもつ品種もある。
■ドラセナ(コーディラインレッド)   リュウゼツラン科/原
産:熱帯アジア・熱帯アフリカ/日本で出回っている観葉植物
の代表的なもの。以前はドラセナ属に分類されていた為、ドラ
セナで流通するが正確にはコルジリネ。「コーディラインレッド」
は葉色が赤で、他に「アイチアカ」や「アトム」なども赤色の品
種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1071.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■ピンポン菊   キク科/多年草/原産:オ
ランダ/ピンポン玉のようにまん丸に咲く菊。
花持ちのよい菊のなかでも、特に長く楽しめる
品種。今回使用した白色の他、黄色、オレン
ジ、ピンク、赤、緑、茶など様々ある。
■千日紅(センニチコウ)   ヒユ科/一年草
/《名前の由来》紅色が長く色褪せないことか
ら/赤色の他、白、ピンク、紫などある。ドライ
フラワーにも適し、花色も綺麗に残る。
■ハラン(旭ハラン)   ユリ科/多年草/江
戸時代から生け花に利用されている青々とし
た大きな葉。葉の先端に白い斑が入るのが旭
ハランの特徴。他に縦縞の斑があるもの、
点々の斑が入るものがある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1072.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

▲TOPへ