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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2010.12.03

vol.103  − 冬木立 −

福島盆地に時雨(しぐれ)がまたやって来ました。
時雨は、昔から人生の定め無さや儚さ(はかなさ)の象徴とされています。
毎年この時季に時雨を迎え、歳を重ねるとともに自分自身もそのことが実感できます。自分には見えない己(おのれ)の後ろ姿、そこに重なる迷い、孤独、老い、そして諦めがみえてきます。
時雨の“憐れさ”は、vol.12で記したように、断念や後悔の積み重ねである人生という道を長く歩いてくると、初めて分かる感覚であると思うようになりました。
  (vol.12 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=27
         うしろすがたのしぐれてゆくか
                                      (山頭火)
時雨も、雨でなくて、もう一方の陽光の部分に焦点を当てると、また違った風景がみえてきます。
光の束が、葉を落としきった冬木立を、逆光の中に黒い影として浮き立たせます。今、この時季だけにみられる哲学的な風景です。
同じ風景は、執務室からも、東の木立をみる時、日の出の時に短時間ながらみることができます。

この時季の冬木立は、フリードリヒの「樫の森の修道院」をみるようです。私の好きな風景の一つです。
カナダで勉強していた頃、広大な畑の境界線として聳えて(そびえて)いる大きな並木が、地平線との境をつくるように逆光を浴びて輝いている風景も、鮮烈な印象として残っています。
         冬こだち月に憐(あはれ)をわすれたり
                                      (与謝蕪村、清水孝之校注「与謝蕪村集」)

玄関へ通じる植え込みや垣根の山茶花(サザンカ)も咲き始めました。
山茶花が、我が国で愛される理由の一つは、花の素朴さでしょう。もう一つ、咲いたと思っていると散り始める儚さも、もう一つの魅力なのではないでしょうか。
事実、以前にも書きましたが(vol.16)、早朝、家を出る時に緑の葉と、まだ明けやらぬ薄暗い闇を背景に、白い鮮やかな花弁が、帰宅時に、玄関に続く敷石に散り敷かれているのをみると、時間も歩みも、一瞬止まり、無常という字が脳裡をかすめ、その日の言動を省みてしまいます。
  (vol.16 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=32

山茶花は、“白い花”の代表の一つとして私は大好きです。その切っ掛けは、学生時代、京都の詩仙堂の庭にある山茶花の大木が、花弁を白砂の庭に散らしているのをみて以来です。
風の便りに、この大木は枯れたと聞いたのですが、本当だとしたら、詩仙堂の魅力は半減してしまったように思います。当時は、地理的な理由からか、詩仙堂一帯は訪れる人もあまりなく、静かな雰囲気でした。

今週の花材は、執務室は黄色の色彩が部屋に彩りを添えています。
秘書室の花をみて、中村正也の写真集「日本の心・粋」を思い出しました。


(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■ミカン   ミカン科/常緑低木/冬の代表
的な果物。もっともポピュラーなものは鹿児島
原産の温州蜜柑(ウンシュウミカン)。中国か
ら渡来した柑橘類から偶発的に作られた品
種。花期は5〜6月頃で白花、10〜11月頃
に果実が橙色に熟す。
■オンシジュウム(ハニードロップ)   ラン科
/原産:中南米/蝶が舞い飛んでいるような
花姿。400種ほどが熱帯・亜熱帯地域に分布
する蘭。通常のオンシジュウムは花弁に斑が
入るが、「ハニードロップ」は斑のない品種。
■ハラン(旭ハラン)   ユリ科/多年草/江
戸時代から生け花に利用されている青々とし
た大きな葉。旭ハランは葉の先端に白い斑が
入る。他に縦縞の斑が入るものや点々の斑が
入る品種がある
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1031.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■カトレア   ラン科/原産:中南米/洋ランの女王と呼ばれる蘭。
一つの花が大きく、色鮮やかで華やかな花姿。樹木などの高いとこ
ろに着生する。
■ハマユウ〔葉〕   ヒガンバナ科/多年草/紀伊半島南部、四国
九州などの西日本の沿岸に自生。花期は夏で、細長い花弁の白い
花が咲く。宮崎県の県花。
※拡大写真http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1032.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

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