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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2010.09.17

vol.92  − 追懐 −

海外出張の後、時差惚けのお蔭で、朝焼けから始まり太陽の出現で終わる荘重な日の出のドラマをみました。
水平線や地平線の代わりに、引き立て役はビルですが、ビルの黒いシルエットとガラス壁に反射する赤光は現代を象徴する背景です。

海外での講演の合間に、美術館に行ってきました。ヨーテボリ美術館です(スウェーデン)。
丁度、レンブラントの肖像画が米国での修復作業から戻ってきたばかりで、修復前後の差をみることができたのはいい経験でした。
また、ルーベンスの2枚(欧米での彼の評価は、我が国より遙かに高いと感じるのは私の認識不足でしょうか)とムンクの「病める子供」がみられたのは収穫でした。

帰国してみれば、起床時には枕元の電気を灯す必要がある程、夜明けが遅くなっていました。
この時季、虫の音が、朝は目覚ましとなり、夜は闇を一層深く感じさせてくれます。
この時季は、夜明け前の雨の音を聴いたり視たりすることも、出勤前の気負いを抑えてくれます。

鉄路から見渡す田圃では、刈り取った田には烏(カラス)が群れ、“落ち穂拾い”をしています。
欧州で目にしたコスモスが、帰国後、月1度の太平洋岸への出張の際、道傍に数多く咲き乱れているのをみました。急激な季節の移ろいを実感しました。

時、場所、移り行く風景を目にしていると、受験用に暗記していた「方丈記」の「ユクカワノナガレハタエズシテ、シカモモトノミズニアラズ」が、「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」と、無常感を我が身のこととして受け止められます。

知人から、大分の臭橙(カボス)が送られてきました。
季節の便りでもあり、これを味の引き立て役として食すると、料理の味に出逢いへの思いが加わり、人の繋がりへの感謝の気持ちが湧きます。

深夜、独り、仕事の手を停め、書斎で物思いに耽(ふけ)っている時、人生観を変えた一コマが脳裡に浮かぶことがあります。
それは、東京で働いていた時、テレビ番組の中で出演者が“馬鹿ふざけ”や“駄洒落”で仲間内でふざけ合い、自分が勝手に笑っているのをみて、侮蔑の言葉を私が口にした時のことです。
年下の同僚から、「先生には出来ないことをしているのです。それは、その人の才能です」と窘(たしな)められてしまいました。
この言葉で自分の人生観の一部が変わりました。
「自分に出来ないこと、それは“才能”であり、尊敬すべき」という教訓です。

今週の花材は、執務室は夏と秋の境を表現しています。秘書室も同じです。


(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■アマランサス(ハンギングレッド)   ヒユ科
/原産:熱帯アメリカ/別名:紐鶏頭/モコモ
コした小さな毛糸玉がつながったような花姿。
紐状に垂れ下がって咲く。花穂がグリーンの
「ハンギンググリーン」もある。
■風船唐綿   ガガイモ科/夏に小さな白い
花が咲く。トゲトゲした紙風船のような実をつけ
る。晩秋に実が熟すと、パカッと割れて綿毛と
種があらわれる。
■トルコギキョウ(ラフォリア)   リンドウ科/
多年草/原産:北アメリカ/毎年多くの新種
が改良され、色や咲き方など多岐にわたる。
「ラフォリア」は2009年の新品種。これまでに
ない鮮明な赤色の中小輪八重咲き。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/921.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■アナベル   ユキノシタ科/落葉低木/原産:アフリカ/小さな花が集
まって手毬状になり、20cmほどの大きさになる。緑色の蕾から開花につれ
白色になり、満開に咲ききるとグリーンに変化する。ドライフラワーとしても楽
しめる。今回使用しているものは満開後の状態。
■アンスリューム(トリニダ)   サトイモ科/多年草/原産:中南米/艶々
で光沢があり、造花と見間違うような花(苞)。苞を観賞しているので長期間
楽しめる。「トリニダ」は鮮やかな赤色にグリーンが入った品種。
■紫稲   イネ科/観賞用に栽培されている紫色の穂の稲。ドライにして
も綺麗に色が残り、生花・ドライともに人気がある
※拡大写真http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/922.jpg
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