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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2010.08.27

vol.90  − 静謐 −

月遅れのお盆は、多くの日本人が郷里に帰り、墓地は一時、花畑のようになります。
死者を花で弔うという行為は、ネアンデルタール人の埋葬にもみられるというのですから、死を悼むというのは人間の根源的な気質なのでしょう。
この時季の墓地にみられる華やかさの中に潜む寂しさ、日本の原風景の一つです。

先日、車中から道傍の畑に葱坊主(ネギボウズ)をみつけました。
この時季にみられるというのは、世話をする人がいなくなって放置されているのでしょうか。あるいは、この時季でもあるのか、農業に全く知識のない私には分かりません。
ただ、これをみると「し残したるを、さてうち置きたるは面白く…」(徒然草、第82段)に一派通じる情景かと感じてしまいます。もっとも、これも「他人の破れ傘」的な発想ですが…。

夏の盛り、昼下がりの一時、しんと静まり返る時があります。こういう時に想い出すのが植田正治の写真とその美術館です。(植田正治写真美術館 http://www.japro.com/ueda
ルネ・マグリットやポール・デルヴォーを連想させるシュールレアリズム、あるいはモダンな、鳥取砂丘を背景にした一連の作品が人の心を一瞬にして捉えます。
私は、着物姿の母親の手を両方から子供が引っ張って、三角形の構図をみせている一枚が好きです。彼の写真からは、カラっとした明るさと透明感が伝わってきます。
現代の写真の一つの大きな潮流を作ったのではないかと勝手に評価しています。
仕事で鳥取に行った時には、必ずここに寄って一時を過ごします。

高松伸の設計した建物は、神殿を思わせる清浄さと気品を感じさせます。
伯耆富士(ほうきふじ)(大山)を見霽(みはる)かす場所は、何時間座っていても室内の静寂さと相俟って、一時、邪(よこしま)な気持ちをすっかり洗い流してくれる空間です。
ここには、現代の仕事人が失った、あるいは置き忘れている何かがあります。

今週の花材は、以前の深山幽谷を思わせるデザイン(vol.87)と同じ軌道にあり、猛暑の夏、ここだけは“静謐”です。秘書室も同じコンセプトです。
(vol.87 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=113

(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■紅葉でまり(クレハデマリ)   バラ科/落
葉低木/原産:北アメリカ/別名「アメリカデマ
リ ディアボロ」/コデマリの一種で、美しい銅
葉が特徴。コデマリに似た淡いピンクの花が
咲く。
■ミレット(パ−プルマジェスティ)   イネ科
/一年草/原産:西アメリカ/別名「唐人稗」
(トウジンビエ)/耐暑性と乾燥に強く改良され
たキビの仲間。「パ−プルマジェスティ」はアメ
リカで作出された園芸品種。
■ケイトウ(久留米ケイトウ)   ヒユ科/一
年草/原産:熱帯アジア/《名前の由来》花
序が鶏の鶏冠に似ていることから「鶏頭」/花
序が球状になる品種が「久留米ケイトウ」。他
に、トサカケイトウやウモウケイトウ、紐ケイトウ
などあり。
■ピンクッション(サクセション)   ヤマモガ
シ科/常緑低木/原産:南アフリカ/《名前の
由来》マチ針を刺した針山のような花姿から/
マチ針のように見える一つ一つが雌しべ。独
特な花姿と南国らしい原色が特徴の個性的な
花。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/901.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■千日紅(ピンク)   ヒユ科/一年草/原産:熱
帯アメリカ/《名前の由来》花期が長く、一つ一つの
花の寿命が長いことから/細い茎の先にボンボンの
ような丸く可愛い花をつける。乾燥しても色あせず、
ドライフラワ−として楽しめる。
■西洋フジバカマ   キク科/一年草/原産:北ア
メリカ/別名「ユ−パトリュ−ム」/北米大陸を中心
に約400種分布。7〜9月頃にアゲラタムに似た花
が咲く。群生し開花した様が、霧がかかったようで、
欧米では「ミストフラワ−」とも呼ばれる。
■アンスリュウム(プレビア)   サトイモ科/常緑
多年草/原産:熱帯アメリカ/《名前の由来》ギリシ
ャ語のanthos=花oura=尾に由来。とんがった肉穂
花序が尾のように見えることから/造花のような
艶々した葉と大きな花(苞)が特徴。「プレビア」は紫
色のシックな色合いで小ぶりなチュ−リップ型の品
種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/90_2.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

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