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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2010.08.13

vol.89  − 追慕 −

早や、蜩(ヒグラシ)が鳴いています。
百日紅(サルスベリ)の紅い花が隣にある五葉松の上に降り注ぎ、この紅と薄緑という配色は一幅の絵をみるようです。この時季の楽しみの一つです。
暑い時は、若い頃に鎌倉の骨董店で手に入れた銅器“泪”(勝手に自分が命名しました)に、一輪、夏椿や鉄線でも生けて涼を得たい思いがします。

この時季、突然の病で父が亡くなって34年が積み重なってしまいました。父の年齢を5年近く越えてしまった今の自分に戸惑っています。
子供の頃、母は長期に入院していました。戦後、父は骨接ぎを家業として家族を養ってくれました。そんな父と一緒に動いていた時の体験が、その後の生き方を決定づけました。
「どんな人間も、それまでの人生によって形作られた自分を変えるのは難しい」のです。

雨が降れば池になる借家から新築した家へ引越をしたのは、小学生の時です。
父は山の樹木全てを買って材木を調達しました。その時は、その意味が分かりませんでした。
後年、「木を買わず山を買え」という先人の教えがあることを知りました。
また、土壁を作るのに木舞(こまい)を組むこと、あるいは柱にひびが入らないように中心まで縦に切れ目を入れておくこと(背割り)などについて、職人さん達に直接教えて戴きました。

この家も、先年、トタンで作った鬼瓦を除いては全て取り壊されました。
鬼瓦を作った職人が、自裁(じさい)する前に「もう作れる人はいなくなるから大事に」と亡き母に言い残した為です。
家屋は、取り壊すまで天井板や水廻り(当時は鉄管で、ビニール管は導入期でした)を除いては、全くがたがきませんでした。当時の職人達の腕の確かさを思い知らされました。

夕方、仕事が終わって父が胴(ず)を川に沈め、ウナギを捕っていました。勿論、自分でうなぎを捌(さば)いていました。
こんにゃく玉を摺り下ろしてのこんにゃく作りを手伝わされて、手が痒くなったのも覚えています。

出来の悪い息子は、それらの技の伝承を受け止めることに失敗してしまいました。これらは、取り壊された家とともに、今は想い出の中にあるだけです。
このような情景は、約50年前には全国各地に確かに存在していました。ここでも「人生はすべてこの絶えざる嘆惜のうちに過ぎる」(vol.45、70「北京の風物」雲郷著)が、真実であることを思い知らされます。
  (vol.45 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=70
   vol.70 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=96

今週の花材は、執務室は穏やかな黄色とガラスの花器が静謐(せいひつ)な気品を漂わせて、お盆に相応しい雰囲気を醸しだしています。
秘書室は、一転、慎ましやかな気品で、対照的です。

(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)


※お盆休みのため、来週の「花だより」は休載させていただきます。

今週の花


【理事長室】
■オンシジュウム(ハニーエンジェル)   ラン科/原
産:中南米/《名前の由来》ギリシャ語で“コブ”を意
味する語「オンコス」から。花弁にコブのような隆起が
あることから/別名「バタフライオーキッド」/「ハニー
エンジェル」は従来品種に見られる斑が入らず、鮮や
かで綺麗な花色。
■アナベル   ユキノシタ科/落葉低木/原産:アフ
リカ/緑色の蕾から開花につれて白色に変化。小さ
な花が集まって手毬状になり、20cm位の大きさにな
る。今回使用しているアナベルは蕾のグリーンではな
く、満開に咲ききった白色からグリーンに変化したも
の。そのままドライフラワーとしても楽しめる。
■アンスリュウム(バニラ)   サトイモ科/多年草/
原産:中南米/ツヤツヤで光沢のあり、造花のような
花。花弁に見える部分は苞で、棒状の部分が花。花
ではなく苞を観賞しているので、長期間楽しめる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/89_1.jpg
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【秘書室】
■ピンクリンドウ(花巻ピンク)   リンドウ科/多年草/原産:南
アフリカ/《名前の由来》根が薬になり、竜の胆のように苦いこと
から“竜胆“→りんどう/日本の秋を代表する花で世界に400種。
ピンクリンドウはササリンドウ系品種なので、明るいと開花し暗い
と閉じる。
■クルクマ(ホワイトカップ)   ショウガ科/球根植物/原産:熱
帯アジア/《名前の由来》根茎に含まれる黄色のクルクミン色素
を染料として利用したことから。アラビア語で“黄色”を意味するK
urkumから/幾重にも重なり花弁のように見える部分は苞で、苞
の中に小さな花が咲く。暑さに強く花持ちがよく、水中花としても
楽しめる。
■ドラセナ(コーディラインレッド)   リュウゼツラン科/常緑低
木/原産:熱帯アジア・熱帯アフリカ/丈夫で日持ちのするグリー
ン。「コーディラインレッド」は赤色葉。
※拡大写真http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/89_2.jpg
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