HOME > 理事長室からの花だより

理事長室からの花だより

新着 30 件

一覧はこちらから

理事長室からの花だより

2010.07.09

vol.84  − 天空 −

道端のあちこちで、栗の花がその存在を誇示するかのように高木を背景に屹立しています。
季節は、夏至を過ぎ、少しずつ足早になってきています。

夜中、激しい雨が上がり、雲間に月の光が空を染めているのを車中から眺めていました。
月は雲に隠れており、全くみえませんでした。「月も雲間のなきは嫌にて候(村田珠光)」とはこんな情景をも指しているのかと、ぼんやり自問自答していました。
その時です。
雲間に、神々しさを感じるほどの空の青の透明感に気付きました。一瞬のうちに心を奪われてしまいました。群青(ぐんじょう)に近い空色(そらいろ)とでも表現すればいいのか…。
短い時の流れでの一コマでした。多分、一生心の裡に残る情景でした。

我が国には、青といっても色々な呼び方があります。私が知っているのだけでも、浅葱色(あさぎいろ)、瑠璃色(るりいろ)、縹色(はなだいろ)、そして紺色(こんいろ)などです。
先人達の自然に対する観察眼の鋭さに驚きます。電気のない時代、早朝から夜半まで、時や光の移ろいを軒先からみていて、洞察力とともに観察眼も研ぎ澄まされていったのでしょうか。

組織運営の難しさを痛感させられている今だからこそ、このような機会を得たのでしょうか。
こんな時、我が国の伝統である、人と人、あるいは人と世間の、契約でない、信頼による繋がりを信じることが大切なのだと自らに言い聞かせています。そして、「何か不幸があれば、それがもっと悪いことから救ってくれる」というチャーチルの警句を思い出しています。

Every cloud has a silver lining!

人生は、幾つになっても「人は色々な厄介事のなかを生き抜いていくもの」(「死刑判決」スコット・トゥロー)を実感します。60歳を過ぎても右往左往しながら生きているのは無様です。しかし、「この世は舞台、人はみな役者」を心に刻み、歩みを続けるしかありません。
起きてしまったことは、ありのままを受け入れる。これは、自らを磨く場であると捉え、自分を、そして組織を変えてゆくことが、今の自分に求められていることなのですから。

このところのBGMは、グレッキの「悲歌のシンフォニー(交響曲第3番)」であり、リチャード・ストルツマンの「ラメント」です。
気力が萎えているとき、自分にないスタイル(粋、都会的、やや不良っぽい)を感じさせるので時々流している、ブライアン・フェリーのCD「時の過ぎゆくままに」を聴く気にはなれません。
只、そんな自分を上からみているもう一人がいるうちは、もう少し頑張れるような気がします。

今週の花材は、執務室は待望の鉄線です。
夏の涼しげな川岸を連想させます。紫陽花もこのような形で演出されると涼やかです。
秘書室は、湿度の高いこの時季、一陣の涼風を感じさせます。

(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■鉄線   キンポウゲ科/蔓性多年草/原
産:中国/《名前の由来》蔓が細く丈夫で針金
のようであることから/フェンスや支柱に蔓を
からませて育つ。クレマチスの一種。クレマチ
スはギリシャ語のClema(巻き上げ・つる)が
語源。
■ガマ   ガマ科/多年草/日本全土の川
辺や沼、池などの湿地に群生。草丈は1.5〜
2mになり、菖蒲の葉を大型にしたような線
形。花序は2段にわかれ、下方が雌化序、上
方が雄花序。花粉を乾燥させたものが生薬で
蒲黄(ほおう)。他にコガマ、ヒメガマがある。
■ハイドランジア   アジサイ科/落葉低木
/原産:日本/日本のアジサイがヨーロッパ
に渡り品種改良されたもの。梅雨の季節にぴ
ったりの花木。花色が豊富で、球状に開花す
るので、在来種よりも華やかな印象。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/84_1.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■カラー(ピカソ)   サトイモ科/球根植物/
原産:南アフリカ/《名前の由来》メガホン状の
苞がYシャツの襟に似ていることから/苞の中心
にある棒の部分が花序。「ピカソ」はクリーム地
に紫が入ったシックな色。
■エリンジューム   セリ科/多年草/原産:
ヨーロッパ/長く鋭い苞と松かさのような花が特
徴で、成長とともに青みを帯びる。非常に花持ち
が良く、ドライフラワーにしても楽しめる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/84_2.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

▲TOPへ