HOME > 理事長室からの花だより

理事長室からの花だより

新着 30 件

一覧はこちらから

理事長室からの花だより

2010.06.04

vol.79  − 追憶 −

鉄路からみる風景は、1カ月前のそれとは一変しています。
田植えの終わった田圃は、鏡に緑が点描されているようにみえます。
その水面(みなも)は、天空や月日の風景を映してくれて一幅の絵をみるようです。
ときには光を反射して目を射ります。隣には黄色く色付いた麦が波のように揺れ、風が野の上を吹き渡っているのを教えてくれています。
只、荒れ果てた休耕田が点在しており、今の我が国の農業の疲弊と管理された自然の崩壊を暗示しています。

遠くの山々に眼を転ずれば、野生の藤、桐の紫と栃の木(トチノキ)の白が、緑を背景に粋を演出してくれています。桐は、沿線の敷地内にも植栽されており、先人の次世代への思い遣りが伝わってきます。
この風景は、周囲に温かい空気をもたらしています。

この時季は、車中で仕事をするのがもったいなく感じられ、眼前に流れる車窓からの風景を飽きずにみてしまいます。風景とそれが紡ぎ出す想い、そして追憶が重なり、あっという間に目的地に着いてしまいます。

夢を語るよりも想い出に浸ることが多くなる時、人は「老人」に分類されると言います。
この時季の雨は、充分に人を「想い出人」にしてしまいます。自宅を出るとき、隣のベランダの緑に揚羽蝶が舞っていました。30年以上という自分の人生の半分を過ごした住まいを去るとき、その間に積み重ねてきた時間、そして取り戻すことのできない時の重さが脳裡を過ぎります。

6月は、西脇順三郎(学生時代、ある教授が「ニシワキジュンザブロウ」という名と詩を、授業中頻りと我々に解説してくれていました。今以てその存在の大きさが理解出来ない、出来の悪い学生ですが・・・)、滝廉太郎、クリフォード・ブラウン(モダンジャズの代表的トランペット奏者)が亡くなった月です。このところ、昔購入したクリフォード・ブラウンのCDを2枚程執務室に置いて、時々聴いています。

今週の花材は、執務室はぐっと渋めなまとめ方です。外の陽光の鮮やかさと対照的です。
秘書室では、儚げな美が演出されています。
これに加え、今週は職員から薔薇の差し入れがありました。これが無機質な会議の場を華やかなものにしてくれています。会議での口調も優しく(?)なれます。

(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■トルコギキョウ(貴婦人)   リンドウ科/多年草/原
産:北アメリカ/毎年多くの新種が改良され、色や咲き
方など多岐にわたる。「貴婦人」は八重フリンジ咲き。花
弁が厚く、非常に花持ちの良い品種。
■アンスリュウム(チチャス)   サトイモ科/多年草/
原産:中南米/ツヤツヤで光沢があり、造花のような
花。苞を観賞しているので、非常に長く楽しめる。
■リュウカデンドロン(キャンディ)   ヤマモガシ科/原
産:南アフリカ/非常に花持ちがよく、ドライフラワーにも
なる。赤やグリーン、細かい毛に覆われたものなどもあ
る。
■ギボウシ   ユリ科/多年草/原産:日本・中国/
葉色がとても綺麗で、ガーデニングでも人気。初夏から
秋にかけて花が咲く。花は寿命が短く、1日で萎むため
英名は「ディリリー」。
■ベアグラス)   ユリ科/細い線状のしなやかな葉。
束ねたり丸めたり、カールさせたりと色々な使い方がで
きるグリーン。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/79_1.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■スモークツリー   ウルシ科/落葉高木/原産:中国〜
南ヨーロッパ/花は小さく目立たないが、花後の姿が綿菓
子のようなフワフワした木。葉色が赤いものや、葉を鑑賞す
るための品種もある。紅葉も綺麗で、庭木としても人気のあ
る木。
■トルコギキョウ(ティラミス)   (理事長室の花材コメント
をご参照ください)
「ティラミス」は白色の八重フリンジ咲きの品種。
■デルフィニュウム(ハッピーピンク)   キンポウゲ科/多
年草/原産:ヨーロッパ/ヨーロッパを中心に約250種分
布。花色は青系を中心に白・ピンク・紫など。「ハッピーピン
ク」はスプレー咲き(シネンシス系)のピンク色。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/79_2.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

▲TOPへ