経カテーテル大動脈弁留置術
 (TAVI; transcatheter aortic valve implantation)

 大動脈弁狭窄症に対する治療として、2018年12月より「カテーテルによる大動脈弁置換術(TAVI)」が始まりました。大動脈弁狭窄症の治療は開胸手術による大動脈弁置換術が第一選択の治療法でしたが、ご高齢の方、特に体力の低下している方は手術リスクが高く、治療が行えない方も数多くおりました。しかし、TAVIは開胸手術をせずに大腿動脈もしくは心尖部からカテーテルを経由して大動脈弁置換を行うため、患者さんの身体的な負担が少なく、開胸手術が高リスクでも治療可能となります。

大動脈弁狭窄症とは?
 大動脈弁は、心臓と大動脈がつながる部分にあり、心臓から拍出された血液を心臓内に逆流させない役割を担っています。大動脈弁狭窄症とは、大動脈弁が年齢とともに固くなり、狭くなってしまったため、心臓から血液が拍出しづらくなった状態です。狭くなってしまった大動脈弁から全身に血液を巡らせるために、心臓の筋肉は過剰な力を出して血液の拍出を行なっています。そのため、大動脈弁狭窄症を放置すると、心筋肥大から胸痛、失神、心不全を来すようになってしまいます。大動脈弁狭窄症の患者さんは高齢化に伴い増加しています。めまい、ふらつき、胸痛、息切れなど、ご高齢の方でよく認められる症状が、実は大動脈弁狭窄症である可能性もあります。大動脈弁狭窄症は軽度から中程度の場合は、他に合併する疾患がなければ基本的には心臓超音波検査などによる経過観察が可能ですが、進行している場合は、大動脈弁の交換(大動脈弁置換術)が必要となります。


Braunwald’s Heart Disease 10th editionより引用


TAVIとは?
 大動脈弁置換術は、開胸手術による人工心肺を用いた方法が第一選択となりますが、ご高齢の方や他の合併疾患がある場合、カテーテルによる大動脈弁置換術(TAVI)が適応となる場合があります。TAVIにより大動脈弁を留置するにはいくつか方法がありますが、第一選択は足の付け根にある大腿動脈からカテーテルを挿入し大動脈弁を留置する経大腿動脈アプローチとなります。しかし、カテーテル挿入部位の血管狭窄や血管蛇行がある場合は、心尖部から挿入する経心尖部アプローチや鎖骨下動脈アプローチが適応となります。いずれの方法も従来の開胸術よりは低侵襲治療となります。どの方法が適切かは術前のCTやカテーテル検査、心機能を見て判断していきます。
  TAVIの前には一週間未満の検査入院が必要です。その結果TAVI可能であれば、再入院して頂きTAVIを行います。術後は1週間程度で退院となります。


経大腿アプローチ

経心尖アプローチ


経大腿アプローチによるTAVI


当院受診の方法は?
 当院は特定機能病院であるため、原則として地域の診療所・病院よりご紹介を頂いてから診察を行なっております。大動脈弁狭窄症の特徴とされる心雑音や息切れ、胸痛、失神は他の心臓疾患や内臓疾患でも認められるため、まずはかかりつけ医、地域の病院で診察を受けてから当院を受診して頂くとスムーズに診療を行なうことができます。
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文責:及川雅啓