心臓リハビリテーションの効果
 近年の様々な研究結果から、冠動脈疾患とそれに伴う心大血管疾患においてリハビリテーションの重要性はClass I、エビデンスレベルAと確固としたものとなっており、その他様々な効果が確認されております。
 特に心不全の予後を改善させるだけではなく、日常生活における諸症状の改善をもたらし、Quality of Life(QOL) を向上させることは非常に重要な事です。
運動療法の身体的効果
心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドラインより
A:証拠が十分であるもの,B:報告の質は高いが報告数が十分でないもの,CAD:冠動脈疾患
日本循環器学会 ガイドラインより出典


運動療法
 運動療法は強い強度で行えば、大きな効果を得られる反面、心臓に対して過負荷となることもあります。そのため心臓に対して過負荷とならない適度な強度での運動が推奨されますが、適度な強度とは患者様の全身状態や心機能により各々異なります。
 様々な研究から、嫌気性代謝閾値(AT)を超えない強度の運動では、運動中の心事故や他の有害事象の発生を増さず、安全性が確立されているため、当院では心肺運動負荷試験(CPX)によって嫌気性代謝閾値(AT)を計測し、個人の運動耐容能に応じた運動処方を行っております。また、退院後に推奨される日常生活動作や運動強度も説明しております。
心肺運動負荷試験の様子


包括的な介入
 心臓リハビリテーションとは、理学療法士による運動療法のみならず、看護師による生活指導、栄養士による栄養指導、薬剤師による服薬指導、社会福祉士による生活支援というように、多職種にて行われる包括的なものです。
心不全、動脈硬化性疾患は治療により改善を認めても、退院後の管理が不十分だと再発を来しやすくなります。心不全の再発の誘引として主なものには、以下に示すように塩分制限の不徹底、治療薬の服用不徹底などが挙げられ、これらを防止することが重要です。
 そのため、当科では多職種によるカンファランスを定期的に行い、その時の身体状況、患者様やご家族の疾患に対する理解状況、退院後の生活環境に応じて、個別に治療方針を立てております。


文責:山内宏之