心筋シンチグラフィ

 心筋シンチグラフィは、放射性同位元素(ラジオアイソトープ)という薬剤を血管内へ注射することで、心臓の機能を評価することができます。薬剤の種類により、心臓の血流 (99mTc-tetrofosmin、99mTc-MIBI)、心臓の脂肪の代謝 (123I-BMIPP)、心臓の交感神経の分布 (123I-MIBG)など、通常の検査では評価が難しいものを可視化して画像にすることが可能です。
 最も多く行われているのは負荷心筋血流シンチグラフィで、狭心症などの虚血性心疾患の診断に活用されています。当院でも毎年300例を超える患者さんが検査を行っています。負荷の方法はエルゴメーターによる運動負荷、薬剤負荷の両方を行うことができます。極めて安全性の高い検査で、足腰の弱い高齢者の方や、腎臓の機能が悪い方でも検査を行うことができます。
 心筋血流シンチグラフィでは将来の心臓の病気の発生を推定することもできます。検査で異常が認められなかった場合の年間心事故率は約0.6%といわれており、検査結果から将来の予測が可能とされています。


狭心症(左前下行枝)の例
運動負荷後 安静時 冠動脈造影

運動負荷の後、ラジオアイソトープの取り込み低下がみられ()、安静時に正常に回復しています()。 入院して心臓カテーテル検査を行うと、冠動脈(心臓の栄養血管)が閉塞または狭窄していることがわかりました()。


心筋梗塞(左前下行枝)の例

心筋梗塞では狭心症と異なり、負荷、安静時ともラジオアイソトープの取り込みがほとんどありません()。
運動負荷後 安静時



心機能解析
左心室の動きを動画で見たり、解析することもできます。


18F-Fluorodeoxyglucose PET/CT、PET/MRI

 18F-Fluorodeoxyglucose (FDG)は、陽電子放出断層撮影 (PET)で使用されるラジオアイソトープです。FDGはブドウ糖によく似た薬剤で、一般的には悪性腫瘍の診断や評価に広く使用されていますが、心臓の評価にも活用されています。
 心筋梗塞になった心筋がどのくらい生きているのか (心筋生存性)の評価、心臓サルコイドーシスなどの心臓の炎症性疾患の評価に大変優れています。
 その他にも、本邦に数台しかないPET/MRIを心臓疾患の診断や、血管の動脈硬化 (不安定プラーク)の研究に応用しています。

FDG PET投影画像
ステロイド治療前 ステロイド治療後
 心臓サルコイドーシス患者のFDG PETの投影画像です。ステロイド治療前に心臓 (黒矢印)にFDGの集積を認め、心臓に炎症があることがわかります。ステロイド治療後に心臓へのFDGの集積は低下しており、治療の効果と考えられます。また、両肺のリンパ節 (赤矢印)にも治療前は多数の集積があり、心臓と同様に炎症があることがわかります。ステロイド治療後にはFDGの集積は低下しており、炎症が改善していると考えられます。

FDG PET/MRI融合画像
ステロイド治療前 ステロイド治療後
 心臓サルコイドーシス患者のFDG PETとMRIの融合画像です。心臓MRIにより得られた画像とFDG PETの画像を融合することで、サルコイドーシス病変の正確な評価が可能となります。ステロイド治療前には心臓にFDGの高度の集積を認め、強い炎症があることがわかります (黄矢印)。治療後にはFDGの集積は低下しており、炎症が改善しているようすがわかります。

文責:益田淳朗