睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?
 当科では心臓病の原因や増悪因子となる睡眠時無呼吸症候群(SAS)に関して、国内標準ないし高度な診療、研究を行っております。各心臓病(心不全、虚血性心疾患、不整脈など)の発症及び進展の予防にSAS加療が有用です。受診のご希望やご紹介などございましたら、ご相談・ご連絡ください。

循環器内科 睡眠時無呼吸外来
月曜日(新患);三阪 智史(みさか ともふみ)
火曜日(再診);三阪 智史(みさか ともふみ)
木曜日(新患、再診);義久 精臣(よしひさ あきおみ)
・診療予約(受診及びご紹介);福島県立医科大学 患者サポートセンター
               TEL 024-547-1074


SASとは?
     
 SASは近年注目されてきた疾患であり、世界的な有病率は30-60歳の男性の4%、女性の2%と報告されており、ほぼ喘息と同程度の頻度と考えられています。一方、各種の心臓病患者さんの多くにSASを合併することが知られています。山陽新幹線運転手の問題や交通事故との関連でも多く報道されています。一般にいびき、呼吸の停止等を主訴と考えられている事が多いのですが、朝の頭重感、日中の倦怠感、呼吸困難感、頻尿、インポテンツ、抑鬱気分等といった症状もあり、また本人は無自覚の場合も多く見受けられます。症状もさることながら、SASの患者さんは高血圧が2倍、冠動脈疾患が2-3倍、脳血管障害が3-5倍のリスクとなることが報告されています。また、心不全、発作性心房細動、心室頻拍動などの不整脈に合併するとその増悪も来し、SASの治療にて心機能や不整脈が改善する場合があることが知られています。しかし、その診断治療を受けている方は有病者の約1割以下と類推されており、特に日本ではその診療体制はまだ遅れています。
 日本循環器学会から、『循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン』も公表されています。本ガイドラインでは、心不全におけるSAS合併率は76%に及び、すべての心不全患者さんにおけるSASのスクリーニングを推奨しています。その他、狭心症、心筋梗塞、不整脈など多くの心臓病におけるSAS加療が推奨されています。
(JCS2010循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン) (JACC 2007)


睡眠時無呼吸の分類(閉塞性または中枢性)、心不全進行との関連
 睡眠時無呼吸には、上気道の閉塞などを主因とする閉塞型と心不全に伴う呼吸中枢の不安定性を主因とする中枢型に大別されます。心不全の進行とともに閉塞性メインから中枢性メインといったように変容します。


終夜睡眠ポリグラフ検査 (精密検査)
・簡易検査 (スクリーニング検査);外来でも実施可能です。
・終夜睡眠ポリグラフ検査 (精密検査);入院での実施が必要です。
夜間19時-21時頃より、検査装置を装着します(脳波,心電図,鼻流計,顎筋電図等)。
終夜睡眠ポリグラフ検査装置のセットに約30分程度を要します。
当日夜間は普通に就寝して頂き、寝返りやポータブルトイレの利用も可能ですが、検査のケーブルの範囲の行動制限があります。
終夜睡眠ポリグラフ検査 (精密検査)


治療について
@ CPAP療法;持続陽圧療法
効果 睡眠中、鼻または顔を覆うマスクを装着し、陽圧を加える事で、咽頭の弛緩、閉塞を抑え、無呼吸を改善します。この方法が現在最も広く行われており、有効性も高いと考えられています。
副作用 鼻閉、咽頭鼻腔乾燥、マスク装着による違和感、不眠。
費用 自己負担率3割の方で、1ヶ月約5000円程度です。月一回の通院が必要です。
マスク 本体
(マスク+ホース+本体)
気道閉塞(左図)
CPAPによる気道開存(右図)
A ASV療法、BIPAP療法;非侵襲的陽圧換気療法
心不全に合併するチェーンストークス呼吸の患者さん、CPAPで無効な無呼吸症候群の患者さん。
費用:人工呼吸器に準じており、高価です。月一回の通院が必要です。
B 在宅酸素療法
慢性心不全患者において、重症のチェーンストークス呼吸を合併した患者さんに適応となります。月一回の通院が必要です。
C 口腔内装置(歯科)
軽症の閉塞性無呼吸患者さんの治療に有効であり、歯科にてマウスピースを作成頂きます。
D 手術療法(耳鼻咽頭科)
扁桃腺摘出や軟口蓋形成術など。
E 睡眠時の体位
SASは仰臥位で悪化するため、側臥位睡眠である程度軽減します。
F 減量
閉塞性無呼吸はある程度改善しますが、効果には個人差があります。また、合併する生活習慣病管理の為にも重要です。
G 薬物療法
未だ効果の明確なものはありません。


臨床研究
人を対象とする医学系研究に関する情報公開(SASと高血圧)


文責:義久精臣