経カテーテル的僧帽弁形成術(クリップ術)
 (TMVr: transcatheter mitral valve repair)

 僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対する治療としてカテーテルによる僧帽弁形成術(TMVr)が当院でも始まりました。従来、僧帽弁閉鎖不全症の根治治療は外科手術(弁形成術・弁置換術)が主体でしたが、高齢の方や、併存疾患がある方、心機能の低下などから外科手術が難しい方も数多くおられます。しかしTMVrは開胸手術をせずに大腿静脈からカテーテルに付属したクリップ(マイトラクリップ: MitraClip®)を用いて僧帽弁の逆流を制御することが可能で、患者さんの身体的負担は少なく手術リスクが高い患者さんにも行うことが可能な治療です。

僧帽弁疾患の有病率は大動脈弁疾患の3-5倍程度とされており、さらに心不全患者さんの5人に1人は中等度以上の僧帽弁閉鎖不全症を有するとされています。 僧帽弁閉鎖不全には弁自体に異常がある器質性(一次性)MRと弁自体には異常がなく、左室拡大・乳頭筋不全・弁輪拡大に伴って逆流を生じる機能性(二次性)MRがあります。

マイトラクリップを用いた僧帽弁形成術は器質性・機能性ともに適応となり、左室駆出率が20%以上・症候性高度僧帽弁閉鎖不全(3+〜4+)の患者さんで外科手術が困難な方を対象とします。

TMVrの適用について

 特に機能性僧帽弁閉鎖不全は血行動態や水分バランスによって逆流の程度が大きく変動します。具体的に下記のような方は適応となる可能性がありますので、ぜひご紹介ください。

こんな患者さんいらっしゃいませんか?

  1. 1.筋梗塞後で心不全増悪による入院歴があり、
    心不全増悪時は中等~重症MRを認める患者さん
  2. 2.拡張型心筋症で、標準的薬物療法を行っても心不全をきたし、
    中等~重症MRとなる患者さん
  3. 3.逸脱による器質性中等~重症MRがあるものの、
    年齢などを理由に外科手術ができず、薬物治療で経過をみられているが、
    時々心不全入院を認める患者さん

マイトラクリップを用いた僧帽弁形成術は、大動脈弁に対して介入するTAVIに近い治療と思われがちですが、僧帽弁の治療というよりは、心不全の治療選択肢の一つというイメージをお持ちいただき、心不全患者さんで困っている方を広くご紹介いただければと思います。 紹介の際、経胸壁心エコーだけ行っていただければ他検査は不要です。ご紹介いただいた症例は当院ハートチームで症例検討を行い、MitraClipの適応かどうか判断し治療を行っていきます。

当科へのご紹介について

 当院は特定機能病院であるため、原則として地域の診療所・病院からのご紹介による「事前予約制」となっております。

受診予約 患者サポートセンター (TEL 024-547-1074)

外来 火曜日(AM):小林 淳、及川 雅啓
   金曜日(AM):佐藤 彰彦

もしご不明な点があれば直接ご連絡ください。

 

文責:佐藤彰彦

ページの先頭へ戻る