医療研究推進戦略・研究成果情報・学会等表彰

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主要研究成果

国際学術雑誌等に掲載された、本学研究者による研究論文の概要を紹介しています。
(所属・職名は発表当時の表記です)

平成 29 年度 (2017年度)

薬理学講座 准教授 前島裕子(まえじま・ゆうこ)、
主任教授 下村健寿(しもむら・けんじゅ)ら研究グループ
性別、脂肪分布、体重に対するオキシトシンの体重制御効果の有効性についての検討
英国科学誌「Scientific Reports」(2017.08.17掲載)

 

薬理学講座 大学院生 大野雄康 ( おおの・ゆうこう )ら研究グループ
LipopolysaccharideはToll-like receptor 4-nuclear factor-κBおよびautocrine / paracrine tumor necrosis factor-α経路を介してマウス筋芽細胞の筋形成を抑制する
米国科学誌「PLOS ONE」 (2017.07.24掲載)

 

泌尿器科学講座 准教授 石橋 啓(いしばし・けい)ら研究グループ
腎癌におけるIL-6受容体シグナル制御によるTKI耐性の克服
米国科学誌「Oncotarget」 掲載(2017.07.21掲載)

 

循環器内科学講座 准教授 義久精臣(よしひさ・あきおみ)ら研究グループ
心不全患者における胃酸分泌抑制療法と生命予後の関係に関する研究
米国科学誌「Journal of the American Heart Association」(2017.06.01掲載)

 

放射線生命科学講座
助手 川村 文彦(かわむら・ふみひこ)、教授 坂井 晃(さかい・あきら)ら研究グループ
造血前駆細胞への分化過程でAIDの発現誘導可能な正常Bリンパ球由来iPS細胞の樹立
英国科学誌「Scientific Reports」(2017.05.10 掲載)

 

事務担当: 医療研究推進課 研究推進係

電話 (024) 547−1825
/ FAX (024) 581−5163
Eメール
※スパムメール防止のため一部全角表記しています

 

 

平成 28 年度 (2016年度)

神経精神医学講座
助教 松本 純弥 ( まつもと・じゅんや ) ら研究グループ
統合失調症では前頭葉(前頭前野)で 16:0/20:4脂肪酸残基を含む
フォスファチジルイノシトールが減少している
−高齢の統合失調症罹患者の死後脳を用いた検討−

英国科学誌「Scientific Reports」(2017.03.27 掲載)

 

薬理学講座 大学院生 曹 美婉(つぁお・めいわん) ら研究グループ
骨髄異形成症候群におけるmicroRNAを介した好中球遊走能低下のメカニズム
米国科学誌「The Journal of Immunology」(2017.01.27 掲載)

 

(寄附講座)肺高血圧先進医療学講座 
准教授 杉本 浩一(すぎもと・こういち)ら研究グループ
左心由来肺高血圧症患者の予後予測における肺動脈キャパシタンスの重要性に関する研究
米国科学誌「PLOS ONE」(2016.11.22 掲載)

 

総合周産期母子医療センター 助教 郷 勇人(ごう・はやと) ら研究グループ
新生仔マウス肺において、miR-196aはBach1を抑制し、ヘムオキシゲナーゼ−1を調節している
米国科学誌「American Journal of Physiology Lung Cellular and Molecular Physiology」
(2016.08.09 掲載)

 

神経精神医学講座 特別研究員 日野瑞城(ひの・みずき) ら研究グループ
統合失調症患者の前頭前皮質においてVEGFR2発現量が低下しリン酸化Akt1が上昇している
オランダ科学誌「Journal of Psychiatric Research」(2016.08 掲載)

 

循環器内科学講座 助教 鈴木 聡(すずき・さとし) ら研究グループ 
血管新生抑制作用を有するVEGF - Aアイソフォームと肺高血圧症との関連
米国科学誌 「International Journal of Cardiology」 (2016.08.01 掲載 )

 

泌尿器科学講座 学内講師 羽賀宣博 (はが・のぶひろ) ら研究グループ
ロボット支援前立腺全摘術後の下部尿路症状に対する膀胱の利尿適応の影響
米国科学誌 「Plos ONE」 (2016.07.22 掲載 )

 

附属生体情報伝達研究所 細胞科学研究部門 准教授 井上 直和(いのうえ・なおかず) ら研究グループ
「受精に関わる精子融合因子IZUMO1と卵子受容体JUNOの認識機構を解明 」
英国科学誌 「Nature」 (2016.06.16 掲載 (DOI番号:10.1038/nature18596) )

 

器官制御外科学講座 博士研究員 千田 峻(ちだ・しゅん) ら研究グループ
癌間質におけるVCAN発現はステージ2-3大腸癌術後再発リスク判定のための予後バイオマーカーとなる
英国科学誌 「Carcinogenesis」 (2016.06.09 掲載 [Epub ahead of print](電子版) )

 

神経精神医学講座 講師 三浦 至(みうら・いたる) ら研究グループ
ドパミンD2受容体における遺伝的変異と抗精神病薬によるプロラクチン上昇との関連についてのメタ解析
英国科学誌「Psychoneuroendocrinology」(2016.06 掲載)

 

循環器内科学講座 准教授 義久 精臣(よしひさ・あきおみ) ら研究グループ 
心不全患者における周期性四肢運動障害の影響に関する研究
米国科学誌「International Journal of Cardiology」」 (2016.06.01 掲載 )

 

循環器内科学講座 大学院生  菅野 優紀(かんの・ゆき) ら研究グループ 
心不全患者における不眠症の予後への影響に関する研究
日本循環器学会誌「Circulation Journal」 (2016.05.19 掲載 )

 

循環器内科学講座 大学院生 渡邊 俊介(わたなべ・しゅんすけ) ら研究グループ 
心不全患者におけるエイコサペンタエン酸とアラキドン酸の比と予後との関連性に対する研究
米国科学誌「Journal of Cardiac Failure」 (2016.04.29 掲載 )

 

衛生学・予防医学講座 助手 日高 友郎(ひだか・ともお) ら研究グループ 
「ビッグデータに基づいた、業態別のメタボリックシンドロームの健康予測を可能とする研究 」
米国科学誌 「Plos ONE」 電子版 (2016.04.16 掲載)

 

 

 

 

 

平成 27 年度 (2015年度)

臓器再生外科学講座 博士研究員 武藤 哲史(むとう・さとし) ら研究グループ
非小細胞肺癌患者における、 Foxp3+ Helios- 制御性T細胞の増加と、その臨床的意義
ギリシャ科学誌「International Journal of Oncology」(2015.10.12 掲載)

 

神経精神医学講座 講師 志賀 哲也 ( しが・てつや ) ら研究グループ
FFR、MLR、MMNを用いた聴覚情報ヒエラルキーにおける逸脱反応に関する研究
米国科学誌 「Plos ONE」 (2015.09.08 掲載 )

 

循環器・血液内科学講座 
大学院生 山内 宏之(やまうち・ひろゆき)、三浦 俊輔(みうら・しゅんすけ)ら研究グループ
「SMP30欠損により虚血後の血管新生は障害される 」
米国科学誌 「Free Radical Biology and Medicine」 (2015.08.28 掲載、2016.02 ePub)

 

附属生体情報伝達研究所 生体物質研究部門
助教 小椋 正人(おぐら・まさと)、本間 好(ほんま・よしみ)ら研究チーム
「プレニルキノリンカルボン酸誘導体はPAK2キナーゼの阻害を通して免疫応答を抑制する。 」
米国科学誌 「Biochemical Pharmacology」 電子版 (2016.01.28 掲載)

 

循環器・血液内科学講座 助手 佐藤 彰彦(さとう・あきひこ)ら研究グループ
「血管新生抑制作用を持つVEGFアイソフォームの血中濃度と閉塞性下肢動脈硬化症患者の臨床像との関連性に対する研究 」
米国科学誌 「International Journal of Cardiology」 (2016.01.13 掲載)

 

循環器・血液内科学講座 助手 益田 淳朗(ますだ・あつろう)ら研究グループ 
18F-FDG PET/MRIを用いた腸骨動脈の不安定プラークの検出 」
ヨーロッパ科学誌 「European Journal of Nuclear Medicine and Molecular Imaging」電子版
(2015.01.12 掲載)

 

医療エレクトロニクス研究講座 
准教授 前島 裕子(まえじま・ゆうこ)、教授 下村 健寿(しもむら・けんじゅ) 
「脳室傍核の単一ネスファチン含有神経細胞は複数の摂食関連脳神経核に投射する 」
ドイツ科学誌 「Brain Structure & Function」 (2015.12.02 掲載)

 

附属生体情報伝達研究所 細胞科学研究部門 准教授 井上 直和(いのうえ・なおかず)、
主任教授 和田 郁夫(わだ・いくお)、助手 Danelle Wright(ダニエル・ライト) ら研究グループ 
「卵子により惹起された精子IZUMO1の2量体化は、 マウスにおける精子と卵子の融合を促進する 」
英国科学誌 「Nature Communications」 (2015.11.16 掲載)

 

循環器・血液内科学講座 助手 清水竹史(しみず・たけし)、主任教授 竹石恭知(たけいし・やすちか)
「骨髄由来細胞からのpentraxin 3産生は心筋虚血再灌流傷害において保護的役割を果たす」
米国科学誌「Journal of Molecular and Cellular Cardiology」電子版 (2015.10.31 掲載)

 

放射線生命科学講座  教授 坂井 晃(さかい・あきら)、助手 阿部 悠(あべ・ゆう) 
「成人の1回CTスキャンにおける二動原体染色体の誘発」
英国科学誌「Scientific Reports」 (2015.09.09 掲載)

 

循環器・血液内科学講座 助手  清水竹史(しみず・たけし) 
「拡張性心不全患者の予後に対する高尿酸血症の影響」
米国科学誌「American Journal of Physiology - Heart and Circulatory Physiology」 (2015.08.21 掲載)

 

生体機能研究部門 
教授 小林和人(こばやし・かずと)、助教 西澤佳代(にしざわ・かよ)、研究員 小林とも子(こばやし・ともこ)
「空間および物体認知記憶における前脳基底部コリン作動性神経の異なる役割」
英国科学誌「Scientific Reports」  (2015.08.06 掲載)

 

 

平成 26 年度 (2014年度)

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神経解剖・発生学講座 講師 渡邉 裕二(わたなべ・ゆうじ)
「セマフォリン3Aはニューロピリン1を介して発生中のニワトリ視蓋の層形成を調整する」
英国雑誌「Development」  (2014.09.25)

 

呼吸器内科学講座 講師 斎藤 純平(さいとう・じゅんぺい)
「COPD(慢性閉塞性肺疾患)における喀痰/血清硫化水素濃度比の有用性」
英国雑誌「Thorax」  (2014.07.17)

 

生体機能研究部門 教授 小林 和人(こばやし・かずと)、助教 西澤 佳代(にしざわ・かよ)
「線条体コリン性介在神経細胞の除去による場所識別学習柔軟性の亢進」
英国科学誌「Nature Communications」  (2014.05.06)

 

循環器・血液内科学講座 学内講師 池田 和彦(いけだ・かずひこ)
「e19a2 BCR-ABL1を有する慢性骨髄性白血病は、 ダサチニブにより分子寛解に導入しうる」
米国雑誌「Journal of Clinical Oncology」  (2014.04.21)

 

解剖・組織学講座 教授  和栗 聡(わぐり・さとし)
「オートファジ―隔離膜は小胞体から細管集合体を介して形成される」
米国雑誌「Molecular and Cellular Biology.」  (2014.04.05)

 

 

 

【医療研究推進本部 選定】 4件 (2016.06公表)

本学の主任教授から構成される医療研究推進本部では、学内教職員が国内外の専門誌等で発表したすべての研究論文の中から、特に優れたものを年度ごとに4〜5件程度選定し、公表しています。

 

 

 e19a2 BCR-ABL1融合遺伝子を有する慢性骨髄性白血病のダサチニブによる分子寛解
論文題名 Molecular response of e19a2 BCR-ABL1 chronic myeloid leukemia with double Philadelphia chromosome by dasatinib.
e19a2 BCR-ABL1融合遺伝子を有する慢性骨髄性白血病のダサチニブによる分子寛解
著  者 池田 和彦、原田 佳代、松本 勇人、野地 秀義、小川 一英、竹石 恭知
雑誌名 Journal of Clinical Oncology
発行日 2014年4月21日 (Published ahead of print)
巻(号)、ページ 34(14): e130-133
要   旨
慢性骨髄性白血病(CML)は9番と22番の染色体がそれぞれ切断され融合して生じるフィラデルフィア(Ph)染色体による造血器腫瘍である。CMLの慢性期には分化能の保たれた顆粒球系細胞が増殖し無症状で経過する。しかしこれを放置すると3-5年程度で腫瘍細胞は分化能を失う急性転化の状態となり、やがて死に至る。Ph染色体においては、切断された22番染色体上のBCR 遺伝子と9番染色体上のABL1 遺伝子とが互いに融合したBCR-ABL1 遺伝子が認められる。BCR-ABL1 遺伝子から作り出されるBCR-ABL1蛋白は酵素活性をもつチロシンキナーゼとして作用し、細胞の増殖を促す。2000年代に入りBCR-ABL1チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)のイマチニブが開発されると、CMLの生存率は著明に改善した。その後BCR-ABL1の阻害作用を高めた第2世代TKIのダサチニブやニロチニブが開発された。

イマチニブ抵抗性のCML症例も存在する。その要因として、ABL1 遺伝子の点突然変異、Ph染色体以外の付加的な染色体異常などが報告されてきた。今回我々の研究では、Ph染色体におけるBCR 遺伝子の切断点が通常と異なる、e19a2 BCR-ABL1 (別名μ-BCR-ABL1 )を有するCMLにおいては付加的な染色体異常、特に2本のPh染色体が生じるダブルPh染色体が高頻度に認められること、ABL1 遺伝子の点突然変異を起こしやすいこと、それらの点ともおそらく関連して、イマチニブではほとんど寛解が得られないことが示唆された。一方我々はダブルPh染色体を有するe19a2 BCR-ABL1 陽性CMLに対してダサチニブを用い、速やかにμ-BCR-ABL mRNAが減少し、やがてほとんど検出されなくなる分子寛解が得られた。以上から、CMLにおいてはBCR-ABL1 の切断点を解析し、結果によってはダサチニブなど第2世代TKIの使用を第一選択とすべきである。

 

 

 線条体コリン作動性神経伝達による行動柔軟性の制御
論文題名 Enhanced flexibility of place discrimination learning by targeting striatal cholinergic interneurons.
線条体コリン作動性神経伝達による行動柔軟性の制御
著  者 岡田 佳奈、西澤 佳代、深堀 良二、甲斐 信行、塩田 明、上田 正次、坂田 省吾、小林 和人
雑誌名 Nature Communications
発行日 2014年5月6日
巻(号)、ページ 5:3778. doi: 10.1038/ncomms4778.
要   旨
動物は環境の変化に応じて、行動を柔軟に切り替えることが要求される。このような行動の切り替え機能には、高次元の認知機能を司る中枢とされる前頭前野皮質と大脳基底核の中心的な構造である線条体の背内側部(背内側線条体)を結ぶ神経回路が重要である。この機能の重度な障害は、統合失調症などの精神・神経疾患の病態として認められるが、脳内における制御機構の詳細について十分な研究が進んでいない。背内側線条体は複数種の神経細胞からなる特徴的な内部回路を備えており、この局所回路に含まれるコリン作動性介在神経細胞は、動物が報酬によって条件づけられた感覚刺激に対して学習性応答を示すという神経生理学的性質を持つとみなされていることから、動物の学習行動の形成や変更に深く関与しているものと予想されている。
本研究ではイムノトキシン細胞標的法を用いて、線条体コリン作動性介在細胞を選択的に除去して逆転学習課題と消去学習課題を実施し、これらの細胞が行動の柔軟性において果たす役割を検討した。
その結果、背内側線条体コリン作動性介在神経細胞の除去は原学習である空間課題には影響がなく、逆転学習と消去学習を亢進させた。背外側線条体コリン作動性介在神経細胞の除去では、原学習、逆転学習、消去学習共に影響を及ぼさなかった。背内側線条体コリン作動性介在神経細胞を除去した動物の背内側線条体にムスカリン作動性アゴニストであるオキソトレモリンMを投与すると、逆転学習と消去学習の亢進が抑制された。更に、コリン作動性介在神経細胞による逆転学習の調節にどのムスカリン作動性受容体が関与を検討するため、shRNAを用いた遺伝子サイレシングによって、ムスカリン性M1受容体とM4受容体をそれぞれノックダウンし、逆転学習への影響を解析した。M1受容体をノックダウンしたラットの逆転学習には影響がなかったが、M4受容体をノックダウンしたラットの逆転学習が亢進した。
以上の結果から、背内側線条体コリン作動性介在神経細胞による行動柔軟性の抑制は、ムスカリン性M4受容体を介していることが明らかとなった。

 

 

 セマフォリン3Aはニューロピリン1を介して発生中のニワトリ視蓋の層形成を調整する
論文題名 NRP1-mediated Sema3A signals coordinate laminar formation in the developing chick optic tectum.
セマフォリン3Aはニューロピリン1を介して発生中のニワトリ視蓋の層形成を調整する
著  者 渡邉 裕二、佐久間 千恵、八木沼 洋行
雑誌名 Development
発行日 2014年 9月
巻(号)、ページ 141(18), 3572-3582. doi: 10.1242/dev.110205
要   旨
脳は様々な神経細胞が地層のように幾重にも積み重なった構造を持っているが、その構造は発生の過程で、たて(放射状方向)よこ(接線方向)2方向への細胞移動により形成される。
我々はニワトリの視蓋をモデルにして、接線方向への細胞移動の動態を可視化することに成功した。その結果、移動細胞は綱渡りのように別の神経軸索をつたって移動していくことを見いだした。また移動細胞が神経細胞に分化する際には、受容体ニューロピリン1を発現するようになり、軸索誘導因子セマフォリン3Aにより反発されて特定の層に局在するようになることが示唆された。
これらの知見は脳の層構築における細胞移動のしくみの一端を明らかにしたものであり、脳形成過程にはたらく分子機構の解明に役立つものである。なお細胞移動の様子を示す動画が、Development 電子版のFeatured Movie に紹介された。

 

 

 オートファジ―隔離膜は小胞体から細管集合体を経て形成される
論文題名 A Cluster of Thin Tubular Structures Mediates Transformation of the Endoplasmic Reticulum to Autophagic Isolation Membrane
オートファジ―隔離膜は小胞体から細管集合体を経て形成される
著  者 植村 武文、山本 雅哉、亀高 愛、曽 友深、矢橋 あつ子、山田 茜、安納 弘道、亀高 諭、小松 雅明、和栗 聡
雑誌名 Molecular and Cellular Biology
発行日 2014年5月
巻(号)、ページ 34(9)、1695-1706
要   旨
私たちの体を構成する細胞では常にその成分の入れ替えが行われています。すなわち、細胞では様々な機能物質が作られるだけでなく、不必要となったものは分解されます。この分解の一翼を担う現象としてオートファジー(自食作用)が知られています。この現象は特に飢餓環境下のアミノ酸供給機構として知られると共に、最近は神経変性疾患やがんなどの疾患にも密接に関係することが分かってきました。

オートファジーが発動すると隔離膜という新たな膜が作られ、細胞の一部を取り囲みます。この構造をオートファゴソームと呼びます。その後オートファゴソームがリソソームという細胞内小器官と融合することで、中身が分解されます。この隔離膜の由来は数10年以上謎でしたが、最近は粗面小胞体という細胞内小器官から生成されるらしいこと、オメガソームという構造が前身構造であることが分かってきました。

今回私たちは、先端的電子顕微鏡解析を駆使して、粗面小胞体から極めて細い小管が多数現れて隔離膜に移行すること、そしてこの構造が光学顕微鏡で見つかったオメガソームに相当することを明らかにしました。また、この微細構造は過去に報告がなかったためIMAT (isolation membrane associated tubule) と命名しました。IMATに局在する分子やIMAT形成に関わる分子などを探索することが、オートファジー隔離膜の形成機構、そして関連する病態の解明につながります。

 

 

平成 25 (2013)年度

神経精神医学講座 学内講師  三浦 至 
「脳由来神経栄養因子BDNF Val66Met遺伝子多型と抗精神病薬による遅発性ジスキネジアの発症および重症度との関連:メタアナリシス」
オランダ科学誌「Schizophrenia Research」  (2014.02.)

 

循環器・血液内科学講座 博士研究員  三阪智史 
「加齢指標タンパク質SMP30の欠損は、アンジオテンシンII誘導性の心臓リモデリングを増悪する」
英国雑誌「Cardiovascular Research.」  (2013.08.30)

 

群馬大学、東北大学、本学 生体物質研究部門 本間好(ほんま・よしみ)教授ら研究グループ
細胞性粘菌由来の抗がん剤候補物質がミトコンドリアの正常機能を妨害することを発見
米国オンライン科学誌「PLOS ONE」  (2013.08.19)

 

 

【研究推進戦略室 選定】4件 (※平成26年度分〜「医療研究推進本部」選定)

 

 加齢に伴うthiol酸化とsenescence marker protein‐30は冠攣縮発生に関与する
論文題名 Coronary Artery Spasm Related to Thiol Oxidation and Senescence Marker Protein-30 in Aging.
加齢に伴うthiol酸化とsenescence marker protein‐30は冠攣縮発生に関与する
著  者 山田 慎哉、斎藤 修一、待井 宏文、水上 浩行、星野 寧人、三阪 智史、石神 昭人、竹石 恭知
雑誌名 Antioxidants & Redox Signaling
発行日 2013年10月1日
巻(号)、ページ 19(10):1063‐1073.
要   旨
近年本邦では、高齢化が急速に進行し、心血管疾患の罹患率と死亡率は今後ますます増加することが予想される。とくに虚血性心疾患は、そのなかでも代表的な疾患として考えられ、その発症予防と治療法の確立が現在強く望まれている。本邦に多くみられる冠攣縮性狭心症においても同様に加齢に伴いその発症頻度は増加するといわれている。その要因として以前より加齢に伴う酸化ストレスの増大が冠血管攣縮に関与していると考えられているが、その機序および治療法に関しては不明な点が多い。そこで、活性酸素種産生系に影響を及ぼす抗老化蛋白Senescence Marker Protein‐30 (SMP‐30)に注目し、SMP‐30ノックアウトマウスを用いて加齢に伴う酸化ストレスの亢進と冠血管攣縮発生との関連について研究を行った。その結果、酸化ストレスの亢進にともない、冠血管内皮細胞において生体内の主要な酸化反応であるS‐グルタチオニル化が促進され、血管拡張作用を有する一酸化窒素産生の低下および冠血管攣縮に関与している可能性が示唆された。

 

 

 健常人において緑茶飲用はナドロール血漿中濃度を大きく低下させる
論文題名 Green tea ingestion greatly reduces plasma concentrations of nadolol in healthy subjects
健常人において緑茶飲用はナドロール血漿中濃度を大きく低下させる
著  者 三坂 眞元、谷田部淳一、Fabian Müller、高野梢、川邉圭佑、Hartmut Glaeser、谷田部緑、尾上誠良、José P.Werba、渡邉裕司、山田靜雄、Martin F.Fromm、木村純子
雑誌名 Clinical Pharmacology and Therapeutics
発行日 2013年12月
巻(号)、ページ 95(4):432-438;2014
要   旨
緑茶に豊富に含まれるカテキン類は薬物トランスポーターの活性に影響を与えることが報告されている。非選択的βアドレナリン受容体遮断薬のナドロールは薬物トランスポーターの有機アニオン輸送ペプチド(OATP)やP‐糖タンパク質の基質となることがin vitroで示唆されている。本研究では、健常人において緑茶の飲用がナドロールの体内動態および降圧作用に及ぼす影響を検討した。被験者は緑茶または対照として水を2週間飲用し、その後緑茶または水とともにナドロールを服用した。ナドロール投与後48時間まで経時的に採血、脈拍数・血圧測定および蓄尿を行った。ナドロールの血漿中濃度はHPLCを用いて定量し、薬物動態パラメ‐タを算出した。さらにOATP1A2およびOATP2B1を安定発現させたヒト胎児腎由来HEK293細胞においてナドロールの細胞内取り込みを緑茶または主要なカテキンであるエピガロカテキンガレート(EGCG)の存在下で検討した。その結果、緑茶の飲用は水に比べてナドロールの血漿中濃度‐時間曲線下面積を85%低下させた。また、収縮期血圧に対するナドロールの降圧作用は緑茶の飲用によって有意に減弱した。細胞を用いた実験からはナドロールがOATP1A2の基質であることが明らかとなった。加えて、緑茶およびEGCGはOATP1A2によるナドロールの細胞内取り込み輸送を有意に阻害した。以上より、緑茶の飲用はナドロールの血中濃度および降圧作用を減少させること、またこの相互作用の機序の一つとして、OATP1A2を介したナドロールの小腸への取り込みの阻害が一部関与することが示唆された。

 

 

 加齢指標タンパク質SMP30の欠損は、アンジオテンシンⅡ誘導性の心臓リモデリングを増悪する
論文題名 Deficiency of senescence marker protein 30 exacerbates angiotensinⅡ‐induced cardiac remodelling.
加齢指標タンパク質SMP30の欠損は、アンジオテンシンⅡ誘導性の心臓リモデリングを増悪する
著  者 三阪智史、鈴木聡、宮田真希子、小林淳、宍戸哲郎、石神昭人、斎藤修一、弘瀬雅教、久保田功、竹石恭知
雑誌名 Cardiovascular Research
発行日 2013年8月1日
巻(号)、ページ 99(3):461-470,2013
要   旨
加齢は、心不全をはじめとする心血管疾患の重要なリスク因子のひとつである。Senescence marker protein 30 (SMP30)は加齢に伴い減少する分子量34kDaのタンパク質として発見され、SMP30は抗酸化作用、抗アポトーシス作用を有し、抗老化蛋白として機能していることが示唆されている。酸化ストレスやアポトーシスは、心臓リモデリングや心不全の病態に重要な役割を果たしているが、SMP30の心臓における機能についてはこれまで検討されていなかった。 本論文では、SMP30の心臓での機能を検討し、SMP30の心臓リモデリングにおける役割を明らかにした。SMP30 ノックアウトマウスを用いて、アンジオテンシンUを持続投与した。アンジオテンシンⅡ投与後、SMP30ノックアウトマウスでは、野生型マウスと比べて心肥大の増悪と心筋組織の線維化の進行を認め、また左室収縮能および拡張能の低下と左室拡張末期径の増大を認めた。SMP30 ノックアウトマウスは野生型マウスより有意にアンジオテンシンⅡによる活性酸素種の増加を認め、その活性酸素種の増加は、NADPHオキシダーゼ活性の上昇を伴っていた。TUNEL染色による検討では、TUNEL陽性心筋細胞数はSMP30 ノックアウトマウスでは野生型マウスよりも著明に多かった。さらに心筋細胞老化について検討したが、老化の生化学マーカーであるsenescence associated-β-gal染色において、陽性心筋細胞数は野生型マウスと比べてSMP30ノックアウトマウスで有意な増加を認めた。SMP30の欠損により、アンジオテンシン Ⅱ誘導性の心肥大、心機能障害、心臓リモデリングが増悪することが示され、SMP30は抗酸化作用および抗アポトーシス作用を介して心保護的に機能し、心不全の発症・進展を抑制することを示唆している。

 

 

 単相性4連発磁気刺激法(QPS)による刺激運動皮質内の脳内ヘモグロビン濃度変化
論文題名 Quadri‐pulse stimulation induces stimulation frequency dependent cortical hemoglobin concentration changes within the ipsilateral motor cortical network
単相性4連発磁気刺激法(QPS)による刺激運動皮質内の脳内ヘモグロビン濃度変化
著  者 グロイス純、望月仁志、古林俊晃、小林俊輔、榎本雪、中村耕一郎、宇川義一
雑誌名 Brain Stimulation
発行日 2012年3月
巻(号)、ページ 6(1)40‐48
要   旨
単相性4連発磁気刺激法(QPS)は、大脳皮質に対して、刺激周波数依存性に興奮性/抑圧性の双方向性の長期可塑性(long term potentiation, LTP/long term depression,LTD)を誘導する。特に、4つの単相性刺激の刺激間隔(inter‐pulse interval,IPI)を5mm/50mmとした際のLTP/LTD効果が最も大きい。本研究では、近赤外線分光法(ºnear‐infrared spectroscopy,NIRS)を用いて、ヒトの1次運動野(M1)をQPSで刺激した際に、刺激直下の脳血流に与える効果を検討した。その結果、刺激周波数依存性に誘導される双方向性の長期可塑性とは異なり、M1内の酸素化ヘモグロビン(oxy‐Hb)は低下したのみであり(単方向性変化)、高周波数刺激において有意に低下していた。また、高頻度QPSによるM1刺激はM1のみならず前運動野のoxy‐Hbも低下させたことから、QPSによるM1刺激は大脳皮質ネットワ‐クを介して広範に作用すると考えられた。

脱酸素化ヘモグロビン(deoxy‐Hb)の変化を伴わないoxy‐Hbの減少は、皮質の活動性低下を示唆している。高頻度QPSでoxy‐Hbが減少したという研究結果は、QPSにより生じる大脳皮質の長期可塑性変化と脳血流変化とで、両者の発生機序が異なることを示唆する。錐体路ニュ‐ロンの抑制性シナプス後電位(inhibitory postsynaptic potentials,IPSPs)の回復は、興奮性シナプス後電位(excitatory postsynaptic potential,EPSPs)に比して遅いことから、高頻度QPSでIPSPsの重合による抑圧効果が累積するために、低頻度QPSに比して脳血流低下が生じたのではないかと推察される。

 

 

平成24年度 (2012年度)

【研究推進戦略室 選定】4件

 

 ヒト脳脊髄液中のユニークな糖鎖を持つトランスフェリン
 :特発性正常圧水頭症のバイオマーカー
                     
論文題名 A unique N-glycan on human transferrin in CSF: a possible biomarker for iNPH
ヒト脳脊髄液中のユニークな糖鎖を持つトランスフェリン:特発性正常圧水頭症のバイオマーカー
著  者 二川了次、奈良清光、宮嶋雅一、久野敦、伊藤浩美、梶裕之、城谷圭朗、本多たかし、遠山ゆり子、星京香、半沢雄助、北爪しのぶ、今牧理恵、古川勝敏、田ア和洋、荒井啓行、湯浅龍彦、阿部正文、新井一、成松久、橋本康弘
雑誌名 Neurobiology of Aging
発行日 2012年8月
巻(号)、ページ 33(8):1807-1815, 2012
要   旨
高齢社会に伴い認知症患者が著しく増加している。とりわけ、アルツハイマー病は認知症の6割以上を占め、他の認知症疾患との鑑別が重要である。特発性正常圧水頭症(Idiopathic normal pressure hydrocephalus: iNPH)は認知症を示し、MRI等の画像では脳室拡大を示す。脳室拡大と認知症は、アルツハイマー病と共通した症状であり、両者の鑑別は容易ではない。一方、アルツハイマー病の根治療法は未開発であるのに対し、iNPHは小手術で完治することから、両者の鑑別診断法が求められていた。
我々は、髄液中に存在するユニークな糖鎖を持つトランスフェリンが両者の鑑別診断マーカーになることを見出した。これによって“治る”認知症であるiNPHの治療の加速が期待される。

 

 

 ミトコンドリア内c-Srcは呼吸鎖複合体のリン酸化を通して細胞生存を調節する
論文題名 Mitochondrial c-Src regulates cell survival through phosphorylation of respiratory chain components.
ミトコンドリア内c-Srcは呼吸鎖複合体のリン酸化を通して細胞生存を調節する
著  者 小椋正人、八巻淳子、本間美和子、本間好
雑誌名 Biochemical Journal
発行日 2012年10月15日
巻(号)、ページ 447(2):281-289
要   旨
ミトコンドリアは、エネルギーや活性酸素種(ROS)産生、さらには、細胞死制御に関わる細胞内小器官として知られている。
このミトコンドリアの機能制御には、呼吸鎖複合体をはじめとするタンパク質の翻訳後修飾が深く関与する。特にリン酸化が細胞のエネルギー産生を制御すると示唆されているが、分子メカニズムに関しては未解明な点が多く残されている。近年、c-Srcを含めた非受容体型チロシンキナーゼがミトコンドリア内において見出されている。本研究では、ミトコンドリア内c-Srcに注目した解析を行い、新規基質として呼吸鎖複合体IであるNADH脱水素酵素フラボタンパク質2 (NDUFV2)および複合体IIであるコハク酸脱水素酵素タンパク質A (SDHA)を同定し、リン酸化部位としてそれぞれY193、Y215を決定した。リン酸化部位変異体およびミトコンドリア移行シグナルを融合したキナーゼ機能欠損c-SrcK298M変異体発現細胞の解析から、NDUFV2Y193のリン酸化は、NADH脱水素酵素活性、酸素消費能およびATP産生に必要であり、一方、SDHAY215のリン酸化は、ROS産生の抑制に必要であった。さらに、これらのリン酸化が細胞生存と密接に連関することが明らかになった。
以上の結果より、ミトコンドリア内c-Srcは呼吸鎖複合体のリン酸化による効率的なエネルギー産生およびROS産生の抑制を通して細胞生存に必須の役割を果たすことが示唆された。

 

 

 SNAP-23はファゴソームの形成・成熟に機能する
論文題名 SNAP-23 regulates phagosome formation and maturation in macrophages
SNAP-23はファゴソームの形成・成熟に機能する
著  者 櫻井千恵、橋本仁志、中西秀樹、荒井斉祐、和田洋、和田戈虹、 和田郁夫、初沢清隆
雑誌名 Mol Biol Cell
発行日 2012年12月15日
巻(号)、ページ 23(24):4849-63
要   旨
マクロファージなどの食細胞に見られるファゴサイトーシス(貪食)は、病原微生物などをファゴソーム(食胞)に取り込み、殺菌・分解する生体防御反応の一つである。ファゴソームはエンドソームやライソゾームなどの細胞内小器官(オルガネラ)と融合を繰り返し成熟する。ファゴソームの形成や成熟は複雑な膜融合によって進行するが、その分子機構はよくわかっていない。そこsで、膜融合に機能するSNAREタンパク質で、マクロファージ細胞膜に局在するSNAP-23の機能解析を行い、ファゴソームの形成や成熟の分子機構を明らかにすることを目的に研究を行った。
その結果、①SNAP-23の過剰発現はファゴソームの形成と成熟を亢進した。また、②SNAP-23の発現抑制細胞では、ファゴソームの形成・成熟の両過程が阻害された。①と②から、SNAP-23はファゴサイトーシスにおけるファゴソームの形成および成熟に機能すると考えられた。次に、③実際にファゴソーム膜上でSNAP-23が機能しているかを調べるためFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)解析を行ったところ、SNAREタンパク質であるVAMP7を過剰発現した場合にFRETシグナルの増加が見られた。このことから、SNAP-23はファゴソーム膜上で膜融合に伴う構造変化を起こしていること、つまり、実際に機能していることが示唆された。
以上より、SNAP-23は膜融合装置としてファゴサイトーシスに機能することが明らかとなった。

 

 

 レクチン経路の認識分子・フィコリンを欠損したマウスは肺炎球菌感染にかかり易い
論文題名 Mice deficient in ficolin, a lectin complement pathway recognition molecule, are susceptible to Streptococcus pneumoniae infection.
レクチン経路の認識分子・フィコリンを欠損したマウスは肺炎球菌感染にかかり易い
著  者 遠藤雄一、高橋実、岩城大輔、石田由美、中澤なおみ、兒玉利尚、松坂友裕、菅野和子、Yu Liu、土屋晃介、河村伊久雄、伊川正人、和栗聡、和田郁夫、松下操、Wilhelm J.Schwaeble、藤田禎三
雑誌名 J Immunol
発行日 2012年12月15日
巻(号)、ページ 189巻(12号)、5860-5866頁
要   旨
マンノース結合レクチン (MBL)とフィコリン (ficolin) は、MBL結合セリンプロテアーゼ (MASPs) と複合体を形成し、自然免疫系のなかで可溶性パターン認識分子として働いている。MBLが感染防御に働くことを示す報告は多いが、フィコリンの働きについては依然明らかでない。本研究ではフィコリンの生理的役割を明らかにすることを目的として、フィコリン欠損マウスを作製しその表現型を解析した。三種類の欠損マウス(フィコリンA欠損マウスfcna-/-、フィコリンB欠損マウスfcnb-/-、およびフィコリンA/Bダブル欠損マウスfcna-/-b-/- )のうち、fcna-/-fcna-/-b-/-では、血清中にフィコリンA-MASPs複合体が存在しないためフィコリン依存性レクチン経路の補体活性化能は低値であった。フィコリンによって認識されMBLによって認識されない肺炎球菌を一株選び、これをマウスに径鼻感染させて生体防御能力を評価した。その結果、野生型マウスと比較して三種類のフィコリン欠損マウスすべてにおいて生存率の低下が認められた。フィコリンA cDNAを組み込んだプラスミドを尾静脈より投与してマウス体内でフィコリンAを発現させ、血液中のフィコリンA依存性レクチン経路を一過性に再構築した。このマウスを用いて同様の感染実験を行なった結果、fcna-/-では生存率の改善がみられた。しかし、fcna-/-b-/-では改善がみられなかった。これらの結果は、フィコリンAとフィコリンBの両者が、肺炎球菌に対して補体レクチン経路を介して感染防御に働くことを示唆している。

 

 

平成23年度 (2011年度)

【研究推進戦略室 選定】5件

 

 補体第二経路の活性化におけるMASP-3の役割                     
論文題名 The role of mannose-binding lectin-associated serine protease-3 in activation of the alternative complement pathway.
補体第二経路の活性化におけるMASP-3の役割
著  者 岩城大輔、菅野和子、高橋実、遠藤雄一、松下操、藤田禎三
雑誌名 J Immunol
発行日 2011年8月24日(電子版)
巻(号)、ページ 187(7):3751-8
要   旨
MASPは補体レクチン経路の活性化に関与している酵素である。3種類のMASPがMBLとフィコリンと複合体を形成しており、MASP-1 とMASP-2の役割は知られているが、MASP-3の役割については不明のままである。本研究は、リコンビナントMASP-3とMASP-3欠損マウスを使用して、MASP-3の活性化機構とその基質を検索した。
リコンビナントMASP-3は、MBL-Aとブドウ球菌をインキュベートすると活性化が認められた。MASP-1/3と全MASP欠損マウスでは、ブドウ球菌の貪食率は、野生型と比較して明らかに低下していた。これらは、第二経路の活性化の低下によることが推定された。さらにリコンビナントMASP-3は、第二経路のB因子とD因子の活性化に関与していることが判明した。
これらの結果から、MASP-3は、MBLと複合体を形成し、微生物の侵入で活性化され、この活性化されたMASP-3が、補体第二経路の初期の活性化に関与していることが明らかになった。

 

 

 Angiotensin Ⅲ はangiotensin Ⅱtype 1 受容体ではなく
 type 2受容体を介してアルドステロン産生を刺激し、血圧調節に関与する
論文題名 Angiotensin Ⅲ stimulates aldosterone secretion from adrenal gland partially via angiotensin Ⅱ type 2 receptor but not angiotensin Ⅱ type 1 receptor.
Angiotensin Ⅲ はangiotensin Ⅱtype 1 受容体ではなくtype 2受容体を介してアルドステロン産生を刺激し、血圧調節に関与する
著  者 谷田部淳一、米田実、谷田部緑、渡辺毅、Robin A Felder、Pedro A Jose、眞田寛啓
雑誌名 Endocrinology.
発行日 2011年4月(Epub: 2011年2月8日)
巻(号)、ページ 152(4):1582-8.
要   旨
Angiotensin Ⅲ (AngⅢ)は、Angiotensin Ⅱ (AngⅡ)とともに血圧調節、アルドステロン(Ald)の産生および分泌調節に深くかかわっている。今日まで、AngⅡによる情報伝達機構について多くの報告があるものの、AngⅢの働きについては不明な点が多い。本報告では、AngⅡ、AngⅢ、AngIV、Ang(1-7)がAld分泌と血圧調節に果たす役割についてin vivo、in vitroで検討した。
5週令の雄SDラットから単離した副腎をRPMI 1640にて培養し、10-6から10-8 MのAngiotensin関連ペプチドをそれぞれ添加した。一定時間経過後に培養上清を採取し、RIA法にてAld濃度を測定した。AngⅡ、AngⅢ刺激によりAld分泌は、300〜500 %上昇した(n=6)。AngⅡ刺激によるAld分泌の増加はAT1、AT2受容体拮抗薬(それぞれCandesartan、PD123319)の共添加によりほぼ完全に抑制された。しかし、AⅢ刺激の場合に対する抑制効果は部分的であった。AngIV、Ang(1-7)刺激によっても弱いAld分泌増加が認められたが、AT1、AT2受容体拮抗薬による抑制は認められなかった。
次に、これらのAngiotensin関連ペプチドをラットに投与する実験を行った。10週令の雄SDラットをPentobarbitalで麻酔後、外頸静脈内にカテーテルを留置した。覚醒後、試薬をカテーテルより注入し、血圧の変化をTail Cuff法にて測定した。また最大の昇圧反応が得られた時点において血液試料を採取し、血漿Ald濃度を測定した。血圧は6 pmol/kg/minのAngⅡにて有意に上昇したが、AngⅢでは変化しなかった。一方、60 pmol/kg/minのAngⅢ投与で血圧は上昇した。AngIV、Ang(1-7)の投与では、血圧は変化しなかった。
血漿Ald濃度はAngⅡ投与後有意に上昇し、また低濃度、高濃度のAngⅢ投与でもそれぞれで有意な上昇が認められた。
AngⅢは、AT1、AT2受容体のみならず、他の何らかの経路を経由してAld分泌を刺激し、血圧調節に関わると考えられた。AngⅢは、AT1受容体拮抗薬を用いた際に見られるアルドステロンブレイクスルーの成因の一つであることが示唆された。

 

 

 末梢肺小型病変に対する気管支内腔超音波法を併用した
 仮想気管支鏡ナビゲーション:無作為化比較試験
論文題名 Virtual bronchoscopic navigation combined with endobronchial ultrasound to diagnose small peripheral pulmonary lesions: a randomised trial.
末梢肺小型病変に対する気管支内腔超音波法を併用した仮想気管支鏡ナビゲーション:無作為化比較試験
著  者 石田 卓、浅野文祐、山崎浩一、品川尚文、大泉聡史、森谷浩史、棟方 充、西村正治、日本仮想内視鏡臨床試験グループ(V-NINJA)
雑誌名 Thorax.
発行日 2011年7月11日
巻(号)、ページ 66 (12) :1072-1077、2011
要   旨
仮想内視鏡を用いた気管支ナビゲーションシステムの有用性を世界ではじめて証明した論文。このシステムは福島医大呼吸器内科が他施設およびオリンパス社と共同で開発し、その後商品化もされた。
右図のように掲載号の表紙、および掲載誌のeditorialにも取り上げられている。

 

 

 肺腺癌におけるエルロチニブの抗腫瘍効果に対応しない胸腹水増加
論文題名 Increase of ascites and pleural effusion misleading assessment of antitumor response to erlotinib in adenocarcinoma of the lung.
肺腺癌におけるエルロチニブの抗腫瘍効果に対応しない胸腹水増加
著  者 立原素子、美佐健一、植松 学、峯村浩之、勝浦 豊、石田 卓、棟方 充
雑誌名 Journal of Clinical Oncology
発行日 2011年8月10日
巻(号)、ページ 29 (23):e675-677, 2011
要   旨
肺腺癌に対しキードラックとして用いられるエルロチニブの腫瘍縮小効果と腹水および胸水の関係について述べた症例報告。通常は腫瘍が縮小すると胸水や腹水は減少するが、それと反対の反応をみせた貴重な症例の報告である。

 

 

 早期非小細胞性肺癌におけるマイクロRNAの発現と予後・進展との関連について:
 独立した3群における後ろ向き研究
論文題名 The association of microRNA expression with prognosis and progression in early-stage, non-small cell lung adenocarcinoma: a retrospective analysis of three cohorts.
早期非小細胞性肺癌におけるマイクロRNAの発現と予後・進展との関連について:独立した3群における後ろ向き研究
著  者 齋藤元伸
雑誌名 Clinical Cancer Research
発行日 2011年4月1日
巻(号)、ページ 17(7):1875-82
要   旨
マイクロRNAは細胞内に存在するわずか約20塩基ほどの長さしかないノンコーディングRNAの一種であり、その配列の相補性により特定のmRNAに作用してその翻訳を抑制する働きが知られている。そのためマイクロRNAはがん、感染症などといった様々な病態との関連性が報告されてきている。特に、がんにおいては転移や予後の予測因子としての働きのみならず、治療標的にも成りうる可能性が示唆されている。
今回我々は、マイクロアレイの結果をもとにして3つのマイクロRNA(miR-17・miR-21・miR-155)を選別し、その発現をqRT-PCR法を用いて肺癌の腫瘍部分と非腫瘍部分にて解析した。対象は、地理的にも人種的にも独立した米国・ノルウェー・日本という3つの非小細胞性肺癌群で、計317症例である。
まず、Cox回帰分析にてマイクロRNAと癌特異的死亡率・無再発生存率との相関を調べたところ、miR-17、miR-21とmiR-155が米国群にて統計学的に有意な相関を示した。一方、ノルウェーと日本群においてはmiR-21のみが予後との相関を示した。次に、Kaplan-Meier法を用いてさらにマイクロRNAと予後との相関を調べたところ、miR-21のみが3つのすべての群で腫瘍のTNM分類とは独立して予後との相関を示した。また、miR-21の発現は非腫瘍部分と比べて腫瘍部分で高く、さらに腫瘍のステージの進行と共にその発現は増加していた。これらの結果からmiR-21は発癌性マイクロRNAとして矛盾ないことが明らかとなった。TNMステージIの肺癌群に限った場合でも、miR-21の高発現と予後の低下は有意に相関していた。
3つの独立した群において再現性のある結果が得られたことより、miR-21は非小細胞性肺癌、主に早期肺腺癌患者にとって有用な予後・診断のバイオマーカーとなる可能性が示唆された。

 

 

 選択的神経路ターゲティング技術は
 視床線条体路が視覚弁別学習の制御に必須の役割を担うことを示す
論文題名 Selective neural pathway targeting reveals key roles of thalamostriatal projection in the control of visual discrimination.
選択的神経路ターゲティング技術は視床線条体路が視覚弁別学習の制御に必須の役割を担うことを示す
著  者 加藤成樹、倉持真人、小林憲太、深堀良二、内ヶ島基政、渡辺雅彦、筒井雄二、小林和人
雑誌名 J Neurosci.
発行日 2011年11月23日
巻(号)、ページ 31(47):17169-79
要   旨
線条体は学習行動の獲得や実行を媒介する脳領域で、そこには大脳皮質や視床の多くの領域から情報が入力する。しかし、それぞれの領域からの入力が学習のプロセスにどのような役割を担っているかについては不明であった。我々は、脳内の特定の神経路を除去する新規の分子遺伝学的技術を開発し、視床束傍核から線条体に入力する神経路の持つ行動生理学的な役割の研究に応用した。
イムノトキシン受容体遺伝子をコードする高頻度逆行性遺伝子導入ベクター(神経終末より導入され、軸索を逆行性に輸送された後、細胞体において目的の遺伝子の発現を誘導する)をマウスの線条体に注入することによって、この領域へ入力する神経路に導入遺伝子の発現を誘導した。
次に、視床束傍核にイムノトキシンを注入することによって、視床線条体路の選択的な除去を誘導した。視床線条体路の除去は、視覚刺激に依存してレバーを押し分ける弁別学習課題の獲得と実行の障害を引き起こした。また、獲得時においてレバーを押す反応時間の遅延も伴った。一方、この経路除去は、自発運動、アンフェタミン誘導性の運動亢進作用、運動学習などの線条体を必要とする別の行動においては顕著な障害を示さなかった。これらの結果は、束傍核に由来する視床線条体路は、刺激に応答して正しい行動を弁別する学習行動の獲得と実行に重要な役割を持つことが明らかとなった。
本研究で開発した選択的な神経路ターゲティング法は、脳内の他の神経路の除去にも活用でき、特に、遺伝子改変動物の作製が困難な実験動物種おいても適用できるため、今後、脳機能を媒介する神経回路の機構を解明するために重要なアプローチを提供する。

 

 

 NIRFは細胞周期ネットワークの中心に位置し,癌抑制遺伝子の候補である
論文題名 NIRF constitutes a nodal point in the cell cycle network and is a candidate tumor suppressor.
NIRFは細胞周期ネットワークの中心に位置し,癌抑制遺伝子の候補である。
著  者 森 努、池田大祐、福島俊彦、竹之下誠一、高地英夫
雑誌名 Cell Cycle
発行日 2011年10月1日
巻(号)、ページ 10(19):3284-99
要   旨
生体の分子間ネットワークには,多数の相互作用因子を持つHubタンパクが少数存在し,ネットワークの完全性と機能を保つ重要な役目を果たしている。細胞周期の制御ネットワークは,多数の機能モジュール間の相互作用により広範な細胞機能を調節している。逆にその異常は,細胞機能の多岐にわたる障害から細胞癌化をひき起こす。しかし,モジュール相互の機能調整が,いかなるネットワーク構築と分子的基盤で支えられているのかは不明である。
森らが発見したNIRFは細胞周期停止を起こすユビキチンリガーゼであり,本研究において複数のcyclin,pRB,p53と相互作用すること,cyclin D1とE1を共にユビキチン化することを示した。NIRFが形成するネットワークの特性を,システムバイオロジーの手法を用いて解析したところ,NIRFは細胞周期ネットワークのみならず細胞内情報ネットワーク全体において中心的位置を占める分子であること,多数の機能モジュール間の機能調整に関与する分子群(Intermodular Hub)であることが判明した。
Intermodular Hubは,発癌に関わる頻度の高いことが知られているが、実際にNIRF遺伝子は多種類の癌で欠失していた。特に重要なのは,肺の非小細胞癌でNIRFを標的とする微小欠失が発見されたことである。この欠失部位に大腸癌と関連するSNPが存在することは,NIRFが癌と関係する可能性を強く示唆する。
以上の知見は,NIRFが細胞周期ネットワークの中で際だった位置を占めるタンパクであることと,新規の癌抑制遺伝子であることを強く示唆している。

〔詳細紹介ページ〕
生命科学部門 森努准教授「NIRFプロジェクト」共同研究グループ
細胞内情報ネットワークの中心因子 「NIRF」 を発見 ― 癌などのヒト疾患に関連する遺伝子 ―
米国 科学雑誌 「Cell Cycle」 2011年10月号 オンライン版 (10月1日付 〔日本時間10月2日〕)
(2011.10.05)

 

 

 

これより以前の掲載情報は こちら  (平成19年度からの情報を掲載しています)

連絡先 : 医療研究推進課 研究推進係

電話 (024) 547−1825
/FAX (024) 581-5163
Eメール rs@fmu.ac.jp

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