
- 鈴木 喜貴 (すずき・よしき)
- 肝胆膵・移植外科学講座 大学院生

- 丸橋 繁(まるばし・しげる)
- 肝胆膵・移植外科学講座 教授

- 錫谷 達夫(すずたに・たつお)
- 微生物学講座 名誉教授
- 研究グループ
- 研究者:鈴木喜貴
研究グループ:鈴木喜貴1)2)3), 石岡賢1), 中村太一3), 宮崎希1), 丸橋繁,2) 錫谷達夫1)4)
(酪王乳業との産学共同研究)
1) 福島県立医科大学 微生物学講座
2) 福島県立医科大学 肝胆膵・移植外科学講座
3) 水戸日赤病院 腎臓内科
4) 大原総合病院 ワクチンセンター
概要
論文掲載雑誌:「Nutrients」(2025年6月4日)
本研究では19名の透析患者を対象にLactococcus lactis 11/19-B1株で発酵させたヨーグルト (11/19-B1ヨーグルト) 50gを8週間摂食して頂き、腎機能低下促進に関わる血中の尿毒症物質(インドキシル硫酸, Trimethylamine-N-oxide (TMAO))やコレステロール値および便の回数と性状(Bristle stool score (BSS))ならびに腸内細菌叢の改善効果を検討しました。
慢性腎臓病の有病率は世界的に増加傾向にあり、進行し末期腎不全に至ると生命維持のために透析または腎移植が必要になります。移植のためのドナー不足という背景もあり、日本では透析患者が約34万人存在し、透析維持のために莫大な医療資源が費やされています。腎機能低下の進行を予防することは健康寿命の延伸や医療経済のためにも非常に重要な課題です。慢性腎臓病の進行には動脈硬化の原因となる高コレステロール血症と尿毒症物質が関係しています。尿毒症物質の中には腸内細菌の一部が食物を代謝して産生するものがあります。本研究では腎機能の消失によって尿毒症物質を尿に排泄できなくなった透析患者さんのご協力を得て、ヨーグルト摂食に腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)を改善し、動脈硬化の原因物質の血中濃度を低下させられるか否かを検討しました。
研究の結果、11/19-B1ヨーグルトの摂食は血清LDLを99.3 から 88.5 (p=0.049)へ、血清インドキシル硫酸値は摂食前に高めの値だった9名中7名で低下させ、平均BSSは正常範囲の3〜5の患者の割合を63.2% から 94.7% へと増加させました。
以上の結果は11/19-B1ヨーグルトの摂食が腸内細菌叢の改善を通じ、動脈硬化の主要な因子である LDL やインドキシル硫酸を低下させ、腎不全患者の動脈硬化因子の上昇による動脈硬化進行の促進とさらなる腎機能の低下という負のスパイラルを予防できる可能性を示唆するものです。
なお本研究は酪王協同乳業株式会社との共同研究です。(鈴木 喜貴)
連絡先
公立大学法人福島県立医科大学 医学部 肝胆膵・移植外科学講座
電話:024-547-1254
FAX:024-547-1981
講座ホームページ:https://fmu-hbpts.jp/ (肝胆膵・移植外科 HP)
メールアドレス: hbpts@fmu.ac.jp 肝胆膵・移植外科学講座(スパムメール防止のため一部全角表記しています)