
- 野寺 穣 (のでら・みのる)
- 循環器内科学講座 助教
- 研究グループ
- 野寺 穣、金城 貴士、室田 定洋、山田 慎哉、及川 雅啓、竹石 恭知
概要
論文掲載雑誌:「Heart Rhythm」(2025年5月19日)
通常型心房粗動(atrial flutter: AFL)は、三尖弁輪を反時計方向に旋回するマクロリエントリー機序を有する頻拍であり、三尖弁輪と下大静脈の間に位置する狭部(cavotricuspid isthmus: CTI)に線状焼灼を行い、伝導ブロックを形成するカテーテルアブレーションが根治的な治療となる。近年、従来の高周波アブレーションに加えて、クライオアブレーションがCTIアブレーションの治療選択肢となった。しかし、クライオアブレーションにおいて、CTIの伝導ブロック形成に影響する解剖学的指標は十分に解明されていない。
本研究では、AFLに対してCTIクライオアブレーションを施行した連続100例を対象とし、CT検査で計測した解剖学的指標とアブレーション手技関連指標との関連性を検討した。CT水平断面において、三尖弁輪中点と下大静脈(inferior caval vein: ICV)中点を結んだ線分をCTIとして定義した。さらに三尖弁輪中点を通る垂直線とCTIとのなす角度をCTI rotation(CR)角と定義し、ICVの後方偏位の大きさを示す指標とした。手技関連指標として、CTIアブレーション開始から最終的な伝導ブロック確認までの手技時間、ならびにクライオアブレーション時の冷却パラメータを評価した。
CR角は手技時間と有意な正の相関を示した(B = 0.369, P < 0.001)。CR角の中央値で分けた二群間で比較したところ、CR角が大きい群では小さい群と比較して手技時間が有意に長く(P = 0.005)、CTI三尖弁輪側でのクライオアブレーション時の最低温度到達時間も有意に長いという結果であった(P = 0.031)。
以上より、CR角の増大、すなわちICVの後方偏位が、クライオアブレーション時のCTI伝導ブロック形成を困難にする可能性が示唆された。(野寺 穣)
連絡先
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