研究成果情報・学会等表彰 (研究成果)

英国科学誌「Scientific Reports」掲載 〔平成29年5月〕

Establishment of induced pluripotent stem cells
from normal B cells and inducing AID expression
in their differentiation into hematopoietic progenitor cells.

(造血前駆細胞への分化過程でAIDの発現誘導可能な
  正常Bリンパ球由来iPS細胞の樹立)

医学部 放射線生命科学講座
助手 
川村 文彦 ( かわむら・ふみひこ )
※ 平成28年9月〜東北大学大学院編入
教授 
坂井 晃 ( さかい・あきら )

研究グループ
川村文彦1、稲木 誠2、片渕 淳1、阿部 悠1、津山尚宏1、黒須由美子1、柳 亜希1、樋口光徳3、武藤哲史3、山浦 匠3、鈴木弘行3、野地秀義4、鈴木眞一5、吉田光明6、笹谷めぐみ7、神谷研二7、小野寺雅文2、坂井 晃1


1. 放射線生命科学講座 / 2. 国立成育医療センター 成育遺伝研究部 / 3. 呼吸器外科学講座 / 4. 腫瘍内科学講座 / 5. 甲状腺内分泌学講座 / 6. 弘前大学被ばく医療総合研究所 / 7. 広島大学原爆放射線医科学研究所分子発がん制御

 概要

論文掲載雑誌:「Scientific Reports」 (10th of May 2017)

多発性骨髄腫の腫瘍起源異常Bリンパ球の解明に向けた
正常Bリンパ球由来のiPS細胞の樹立

【研究成果のポイント】

1. 正常リンパ節からCD19陽性細胞を分離し、山中因子をレトロウイルスベクターを用いて移入した。
2. この正常Bリンパ球由来のiPS細胞 (BiPSC) は免疫グロブリンH (IgH) 鎖遺伝子再構成を保持する。
3. BiPSCにtet-offシステムで活性化誘導シチジンデアミナーゼ (AID) を発現誘導可能なBiPSC-AIDを樹立した。
4. BiPSC及びBiPSC-AIDともにフィーダー細胞との共培養でCD34+ / CD38- / CD43- / CD45-に分化する。
5. さらにこれら CD34+細胞は、コロニーアッセイ法でマクロファージ、顆粒球、赤芽球に分化することが確認できた。

悪性リンパ腫 (ML) や多発性骨髄腫 (MM) の発症には、免疫グロブリンH (IgH) 鎖遺伝子のある14番染色体とサイクリンD1やMYC遺伝子の存在する他の染色体との相互転座が原因となることが多い。
骨髄 (BM) の幼若なBリンパ球が腫瘍細胞の起源とされる急性リンパ性白血病や濾胞性リンパ腫、マントルリンパ腫では、IgH鎖遺伝子の可変領域 (VDJ) の再構成に伴い他の染色体(がん遺伝子など)との相互転座が腫瘍化の原因と考えられる。したがって、腫瘍起源の研究は造血前駆細胞になる。
一方でMMは、Mタンパクを産生する機能的な(クラススイッチまで終了した)IgH鎖が存在するため、染色体転座はもう1つのVDJ再構成が完遂されずクラススイッチが起こっていないアレルと他の染色体との相互転座が原因と考えられる。
しかし、成熟Bリンパ球に染色体転座が生じた程度でその細胞が腫瘍化するほどのポテンシャルがあるとは考え難く、抗体を産生できる成熟Bリンパ球(または形質細胞)がリプログラミングされた状態(エピジェネティックな変化)で染色体(遺伝子)変化が起こることが骨髄腫細胞の起源と推測する。
したがって、MMの腫瘍起源となる異常Bリンパ球の存在を証明するためには、IgH鎖遺伝子再構成のある正常Bリンパ球を腫瘍細胞に形質転換可能なポテンシャルの高い細胞にすることが必要と考え、それが正常Bリンパ球のiPS化である。

我々は国立成育医療センター成育遺伝研究部の小野寺先生との共同研究で、リンパ節由来の正常Bリンパ球からiPS細胞 (BiPSC) を樹立し、それに活性化誘導シチジンデアミナーゼ (AID)の発現誘導可能なBiPSC-AIDも作製した。
今後これらのBiPSCをNOGマウスに移植しBリンパ球系腫瘍ができるか実験予定である。

(川村文彦、坂井 晃)

連絡先

公立大学法人福島県立医科大学 医学部 放射線生命科学講座
電話 024-547-1421 / FAX 024-547-1704
講座紹介ページ http://www.fmu.ac.jp/cms/rls/
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