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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2010.02.26

vol.67  − 冬の贈り物 −

今まで一度しか見たことのなかった光景を見ました。ダイヤモンドダストです。
薄暗い早朝、運転手さんが「粉のようなものが舞っている」と、前照灯で照らされている光の中を指差しました。福島に住んで20年になりますが、最初は信じられませんでした。濃霧注意報、前日の雨、早朝の急激な冷え込みが重なって発生したのでしょう。
この素晴らしい贈り物は約5分間で終わって、幻だったかのように消えていました。

「早く起きて仕事をしている人達だけが見られたのですね」という言葉に、新聞配達など早朝から働いている人々への共感の思いが込もっており、久し振りにほのぼのとした気持ちを持てました。
この時の雰囲気は、子供の頃に、早朝の寒稽古や登校の際に通りを掃除しているおばさん達に「気をつけてね」と言われてお辞儀をして行き交った時のそれと似ていました。

この奇跡のような贈り物には続きがありました。山の端から顔を出した太陽が、霧のせいでしょうか、ルビーのような赤い宝石のような色をして大地に光を放っていました。
この赤い朝焼けも、一仕事して目を窓の外に戻すと、既に普通の黄金色の太陽になっていました。

だるま市や初午の記事を読んで、また子供の頃を想い出しました。
だるま市では、毎年1サイズずつ大きいのを買っていました。確か12年で1周りでした。初午では、色紙を貼り合わせて小さな幟(のぼり)を作り、これを篠竹に結わえて「奉納  正一位  稲荷大明神」と書き、お参りに行きました。そこでは敷地の家の人が飴を渡していました。3ヵ所から5ヵ所位、登校前に廻ったものです。
先頃、法事で実家のあった町に行ってみると、それらの祠(ほこら)のあったいくつかの家は廃屋となって、敷地も荒れ果てていました。

前日は、出張の途中で野焼きの匂い(香り)が車中に流れ込んできました。
期せずして、運転手さんと同じ感慨を抱きました。「懐かしい」、「長閑(のどか)」です。我々の年代の人間が共通に持っている昔の記憶がそう思わせたのでしょう。

冬の贈り物といえば、鮮烈な光と闇の対比で画壇に革命を起こしたと評価されているカラヴァッジョの映画が封切られています。昔、ローマでの国際学会で彼の存在の大きさを知り、それ以来、時々画集を繙いています。今年は死去後400年ということで、様々な企画展があるようです。過去、2001年に「芸術新潮」に特集として取り上げられ、企画展も開催されました。
素人だから良く分かりませんが、あの光と闇の鮮烈な対比がレンブラント、ルーベンス、そしてラ・トゥールなどを生み出したのではないでしょうか。最近では、彼の生涯を辿った本(「カラヴァッジョへの旅−天才画家の光と闇−」宮下規久朗)も刊行されています。

今週の花材は、執務室は北国に春の到来を告げる辛夷(コブシ)です。高々と天を向いている佇まいは雄雄しくみえます。秘書室は、キンポウゲとコデマリという白と薄紫の組み合わせです。可憐、気品という表現がピッタリの組み合わせです。

(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■コブシ   モクレン科/落葉高木/原産:日本/《名前の由来》蕾または果実の姿が子供の拳に似ていることから/別名「田打桜(タウチザクラ)」開花時期を目安に農作業をしていたことから/桜より一足早く咲いて春の訪れを告げる花。3〜4月に新葉よりも早く、枝先いっぱいに白い花を咲かせる。花は香気があり10cm程の大輪で、満開の姿は見事。
※拡大写真http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/67_zoom1.jpg
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【秘書室】
■デルフィニュウム   多年草/キンポウゲ科/原産:ヨーロッパ/別名「オオヒエンソウ」/《名前の由来》蕾の形がイルカに似ていることから Dolphin→Delpinum/ヨーロッパを中心に250種が分布。デルフィニュウムの中でもシネンシス系、ベラドンナ系など品種が豊富。今回は草丈が一番高く、穂状に八重咲きの花をつけるジャイアント系を使用。草丈、花穂ともに大きく華やかで、ディスプレイなどに最適。夏の暑さに弱いので、日本では主に一年草扱いとなる。
■コデマリ   バラ科/落葉低木/原産:中国/白い小花が半円球状に密集して、枝いっぱいに手毬のような花がいくつも連なる。花の重みで枝垂れる姿が優雅で庭木としても人気。大株に育ち開花した様子は見応えがある。花期は4〜5月。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/67_zoom2.jpg
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