HOME > 理事長室からの花だより

理事長室からの花だより

新着 30 件

一覧はこちらから

理事長室からの花だより

2016.10.14

vol.386  − 合 (あわせる) −

二十四節気で、草木の露が冷たく感じられるという寒露(かんろ)です。

庭先や道端に紅(あか)い実が目立ちます。万両(マンリョウ)、一位(イチイ)、梅擬(ウメモドキ)、花水木(ハナミズキ)、鈴蘭(スズラン)が、今の季節であることを教えてくれます。

桜紅葉(サクラモミジ)の替わりに、これからは柿紅葉(カキモミジ)が鮮やかな紅葉を演出してくれます。
柿の葉は、一枚の緑の葉の中に、黄、橙、紅と多彩です。

繊細、華麗な我が国の紅葉、それに対してカナダ南東部のローレンシアン高原のそれは、圧倒的なスケールです。鮮やかに色づく広葉樹にマツなどの針葉樹林の組み合わせの豪華さ、その広大さは息を呑む景観です。
         (vol.98 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=126

秋は食の季節でもあります。新蕎麦(しんそば)が味わえます。
銀杏(ギンナン)の実も季節の味です。
道路で踏(ふ)み拉(しだ)かれた実は悪臭(あくしゅう)を放っていますが、翡翠色(ひすいいろ)の実は、茶碗蒸しや煎(い)っての酒の肴(さかな)として御馳走で、秋の楽しみの一つです。

交通や情報手段の発達によって、異なる文化の交流が、容易(たやす)く、短時間に進んでいます。
思い掛けない和の食材が西洋料理に取り入れられています。最近、感じ入(い)ったのは和三盆(わさんぼん)です。

和三盆を知ったのは、若い時、徳島の老舗(しにせ)を紹介されて、買い求めたのが最初です。
はらりと口の中で溶ける淡白な甘さ、魅了されました。

ヘミングウェイが愛し、今、若い人々に人気があるという酒にモフィートがあります。材料は、ラム酒、ライム、ソーダ水、ミントの葉に砂糖やシロップで甘みを加えます。
この甘味を和三盆に替えると、うまさが一変します。酒のプロの技です。

煎り酒や山葵(わさび)もフランス料理に取り入れられている時代です。
洋食、元とは違った料理に変わっています。

中国から入って来た地方料理の中華麺は、麺が変わり、今や、ラーメンという国民食です。

カレーライス、元々はインドの食べ物です。戦後、母親達は、小麦粉、カレー粉、片栗粉で作っていました。最高の御馳走でした。簡単に作れ、様々な工夫がされるようになったのは、そんなに昔のことではありません。
カレー南蛮、カレーパンは、我が国発祥の傑作です。
海外留学で、インド料理店でカレーを注文して、我が国のそれと余りの違いに唖然(あぜん)としたことを憶(おぼ)えています。

コロッケも元々はフランス料理だそうです。
馬鈴薯(ばれいしょ・ジャガイモ)を基材にした我が国のコロッケ、今や、日本が起源と、誰も疑わない程、人々に馴染んでいます。

酒の肴(さかな)やつまみの関係にも、先人の知恵と異文化の出会いを見て取れます。

幼かった時、酒屋の店先で仕事帰りの男達が日本酒を飲んでいました。その時のつまみは塩です。
貧しさゆえのつまみとしての塩です。恐らく、コメ由来の甘味を引き立たせるための、反対の味としての塩っぱさ(しょっぱさ)も一つの理由だった筈です。
今も、日本酒で好まれているつまみが、塩辛(しおから)やスルメであることが、その推し当て(おしあて)が全くの的外れではないことを裏付けています。

ワインやコニャックとチョコレート、ウイスキーとドライフルーツ、シャンパンとフルーツ、映画で人気になったイチゴはその代表です。
         (vol.364 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=405
これらの肴は、酒がその奥に持っている酸の引き立て役です。

そこには、菓子がない茶のもてなしがあり得ないことと同じ理(ことわり)があります。
菓子の甘味が茶の苦みと渾然一体(こんぜんいったい)となって別な美味しさが生まれているのです。

文化の異なる料理や酒の出会いが新たな味を作り出しています。

今週の花材は、色、佇まいに心癒されます。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■ローゼル   アオイ科/一年草/花期は9〜11月頃で、花
姿はオクラの花に似る。 花は1日でしぼみ、花後の実を鑑賞す
るものとして切り花で流通。実はハイビスカスティーの原料で、ジ
ャムやソース等にも利用される。
■ワックスフラワー〔レベレーション〕   フトモモ科/常緑低木
/ 《名前の由来》ろう細工のような花をつけることから/梅に似
た花を房状に咲かせ、花弁は分厚く鈍い光沢を放つ。「レベレー
ション」は1本に白とピンクが混ざった品種。
■アナベル   ユキノシタ科/落葉低木/小さな花が集まって
手毬状に咲き、20cm程の大きさになる。 緑色の蕾から開花に
つれ白色に変化し、咲ききるとグリーンになる。 今回使用してい
るものは咲ききってグリーンになったもの。
■雪柳〔塗雪柳(ヌリユキヤナギ)〕   バラ科/落葉低木/《名
前の由来》雪が降ったかのような花を散らした様子と、柳のように
枝がしなやかに垂れることから/春に小さな白い花を枝いっぱい
に咲かせる。「塗雪柳」は紅葉したかのように赤く染めたもの。
■オンシジュウム〔ハニーエンジェル〕    ラン科/無数の蝶が
舞い飛ぶような花姿で「バタフライオーキッド」とも呼ばれる。 約
400種が熱帯亜熱帯地域に分布。「ハニーエンジェル」は花弁に
斑点の入らない綺麗な花色。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3861.jpg

【秘書室】
■コニカル   ナス科/観賞用のトウガラシの一種。艶やかな
丸い実をたくさんつける。今回使用しているオレンジ・黄色の他、
赤や黒などもある。
■ユーカリ〔銀世界〕    フトモモ科/常緑高木/オーストラリ
アを中心に600種ほどあり、コアラの食用樹として有名。「銀世
界」はシルバーリーフの品種。
■ハートカズラ   ガガイモ科/常緑多年草/ハート型の肉厚
の葉をつける蔓性植物。葉の形から「ハートバイン」や「ラブチェ
ーン」等の愛称でも親しまれる。観葉植物として流通するが、夏
には棒状の花も咲く。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3862.jpg

▲TOPへ