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平成30年度 学位記授与式(卒業式) 学長式辞  (平成31年3月22日)

本日ここに学位を授与された、大学院修了生52名、学部卒業生222名の諸君に、福島県立医科大学の教職員を代表して、心からお祝いを申し上げます。併せて、今日の学位記授与式を迎えるまで、ご家族、および関係者の皆様よりいただいた数々のひとかたならぬご支援に対し、厚く御礼申し上げます。

諸君はいま、どのような気持ちでこの場に臨んでいるでしょうか。諸君は、いよいよ今日から、医のプロフェッショナルとして社会にデビューします。
一人一人が、いつの頃か、医師や看護師になりたい、医学を志す、と心に決めて以来、あこがれを抱き、思いを馳せたであろう「医師」「看護師」という肩書を持つことが現実のものになろうとしています。いやがおうにも、晴れがましく、また充実感に満たされていることでしょう。
そして、ここに至るまで様々な困難を乗り越えてきた諸君に、私は大いなる敬意を表したいと思います。しかし、言うまでもないことですが、今日はゴールであると同時に、プロフェッショナルとしての新たなスタートでもあります。プロフェッショナルとしてのスタートには、これまでとは大きな違いがあります。それは、何よりもスタートしたその先に「卒業」といった、他者が定めるゴールはもう存在しないということです。そして、プロフェッショナルとして社会に認められ続けるためには、「勇気ある知の探究者」として考える力を鍛えなければなりません。勇気ある知の探究者とは何か、それを述べたいと思います。

これからも諸君は、多くのカリキュラムやプログラムに取り組んでいくことと思います。しかし、それらはもう学生時代のように義務付けられたものではありませんし、それらをクリアすることがゴールでもありません。それらは、医療者としてのより高いキャリアを積むために、自らの意思によって選択し、チャレンジすることばかりです。しかも、ご存じのように、医療自体が日進月歩で目覚ましく進化し、諸君が苦労して身につけた知識や技術はあっという間に時代遅れとなることが、自明のこととなっています。つまり「医師」や「看護師」という肩書を名乗り、社会の中でその道のプロフェッショナルであり続けるためには、学ぶことを止めることはできないのです。今後、諸君が医療者を続ける限り、まさに今日この時をスタートとし、知識と技術を常にアップデートするという覚悟が求められます。
では、最新の知識と技術を学ぶことでプロフェッショナルとして求められる知の探究は満たされるでしょうか。既知の情報を身に付けるだけでは「探求」とは言えないことは諸君も容易に想像がつくと思います。「探求」という以上、既知の、その一歩先、未知の領域に自ら踏み込むことが必要です。その一歩には想像以上の勇気とエネルギーが必要です。しかし、その場に留まっていては新しいヒントやアイデア、つまり新しい知を創造することはできないのです。リスクを冒してもなお、一歩前に進み、新しい知を切り拓くことが、私たちと科学の成長を支えてきたのです。
さらに言えば、未知の領域に踏み込むためには振り返ることも必要です。敢えて分かりやすい言葉でいえば、より客観的に、より批判的に自らの実践を振り返り、検証する姿勢、いわば「反省力」が求められます。「言うは易し」ですが、高度な専門性を持つプロフェッショナルになればなるほど、それを自らに課すことは難しく、勇気のいる姿勢です。
このように、アップデートした知に対し、客観的、批判的な思考を自ら加え、新たな知を創造し、その知をさらに実践していくという繰り返しこそが、勇気ある知の探究であり、医療者がプロフェショナルとして社会に認められるための条件なのです。

一方、諸君が本学で過ごした数年間に、世の中は大きく変化し、揺れ動きました。東日本大震災以来、国内では災害が話題にならない年はありません。世界では温暖化による海面上昇で国家が消滅すると懸念されています。
気候変動により次第に人類の活動自体を制限せざるを得ない状況が生まれています。民族や宗教の対立が激化し、大量の難民がさまよう光景が毎日のようにテレビから流れています。イギリスのEU離脱や、アメリカの孤立主義化、一国主義化など、これまで世界を支えていた調和が大きく崩れようとしています。諸君の中には、このような問題には関心がなく、一歩引いている人も多いのではないでしょうか。しかし、世界の不安定は結局、最後には自らに跳ね返ってきます。
もちろん、諸君は医のプロフェッショナルとして、医学の発展を促し、より良い医療を提供することが第一の使命です。ところが、その使命を遂行していく前提となる社会が、今、揺らいでいます。学生とは違い、プロフェッショナルとして社会の一員となる以上、その社会の抱える問題も自分事(じぶんごと)として捉えなければなりません。
そしてこのような世界規模の大きなうねりに直面した時、頼ることが出来る唯一の武器は、実は先ほどから述べている「考える力」なのです。持続可能な社会の実現のためには、感情によって行動するのではなく、徹底した論理的思考に基づき対話を促し、行動する人材が必要不可欠となります。そのようないわば「筋肉質の思考力」を持つ人材として挙げられるのが、知の探究者として考える力を鍛えている諸君です。
今置かれている情勢を考えた時、諸君は、医のプロフェッショナルであると同時に、「考える力」を持つスペシャリストとして、これまでの医療者には経験のない、新たな役割と社会的貢献が期待され、求められる時代になるのかもしれません。そのためにも、勇気ある知の探究者として、考える力を追求し続けて欲しいと思います。

最後に、このようなことを言われて暗澹となることはありません。一足先に社会に出た者として、このような姿勢にまい進できる有効な方法をお教えします。それは夢中になることです。
知の追及という人間のみが持ちうる特権を、最大限「楽しみ」に変えてください。どんな努力も夢中には勝てないものです。この春も、諸君を含めて新たに、おおよそ9千人の医師と、5万数千人の看護師が世の中に誕生します。
その中において、いつまでも輝く一人として、真のプロフェッショナルであり続けることを祈念し、はなむけの言葉とします。
本日は誠におめでとうございました。

平成31年 3月 22日
福島県立医科大学 学長
竹之下 誠一

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