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平成28年度 学位記授与式(卒業式) 学長式辞  (平成29年3月24日)

第53回大学院学位記授与式 ・ 第64回学位記授与式における学長式辞
  

只今、学位記を授与された、大学院修了生、学部卒業生230名の諸君、誠におめでとうございます。

卒業式は、「過去の提示」と、「未来の覚悟」を表明する場です。君達は、今日から、看護や医療のプロとして生きていくことを選びました。そこは、不条理、理不尽、そして矛盾に満ちた世界です。しかし、自分の選んだ道に怯(ひる)むことはありません。その先には希望が待っています。世の中は思いには通りいきません。人間(ヒト)は、皆失敗しながら生きているのです。それでも、みんな自分なりのベストを尽くして生きているのが世の中です。

人生は、出会いに尽きます。出会いは人生を豊かにし、別れは人間(ヒト)を成長させます。
だからこそ、今までの、そしてこれからの出会いを大切にして下さい。
何故なら、「人生の扉は他人が開く」からです。

人生での出会いでは、職業、地位、年齢、肩書きで他人を判断しないことです。これらは所詮、一時的なものです。職業、所属、あるいは地位で評価される人間の哀しみに思い至る人間になって下さい。双方が、相手に敬意を払い、信頼を置くことが、仕事や友情の前提です。
人間というものは、人生が配ってくれたカードでやっていくもので、配られたカードが悪いと愚痴をこぼしたりするものではありません。そんなことをしたら、家族や友を悲しませるだけでなく、自らを卑(いや)しい人間にしてしまいます。
考えてみて下さい。人生こうしよう、ああしようと計画を立てても、仲々その通りにはなりません。人生は断念の積み重ねでもあります。大切なことは、その場その場で己(おのれ)のベストを尽くすことです。他人がどう評価するかではなく、自分がどう評価するかが大事なのです。何故なら、人間(ヒト)は自分に嘘はつけないからです。今日から、君達は、「何になったか」ではなく、「何をしたか」に自らの価値観を置いて下さい。

私の医療人としての経験から、君達に三つの言葉を贈ります。
一つは、「愚直なる継続」です。
愚直なる継続は、誰もができる最大の武器であり、大成する王道です。但し、これを実行するには、鉄のような意志が必要です。運命なんていう言葉で人生を決めて欲しくありません。これからの人生に、約束された未来などないのですから。
但し、「風を待っている軒下の風鈴」のような受け身の態度での研鑽は、自分の運命を他人の手に委ねてしまうようなものです。
只、努力すればそれだけで人や運と出会えるほど、世の中は単純ではありません。他人が自分を認めてくれないことを嘆(なげ)くよりも、己に才が無いことを認め、弛(たゆ)まず努め、膝立ちでも斗(たたか)い続けることです。巌(いわお)に爪を立てるような努力をしていると、人に巡り合い、運も味方してくれます。直向き(ひたむき)に生きている姿が「人生の扉は他人が開く」ことに繋がるのです。

もう一つは、「誇り」です。
頭を下げないことが誇りではなく、頭を下げた後に尚残るものが真の誇りです。“悔しさ”、“無念”、そして“挫折”を、生きていくバネにすることです。劣等感こそが成長の鍵です。逆境は、努力できる原動力になります。
この世に生きている以上、あらゆる者が無傷ではいられません。誰もが心に傷を負い、限界だらけのなかで生きているのです。ですから、これから必ず味わう挫折を、「自らを鍛える良い機会」と捉(とら)えて下さい。悔しさ、無念、挫折を経験すると、他人の悔しさや無念さに思いが至ります。それが分かると、相手の立場になって考えることができます。そうすると、相手の苦労や努力も見えるようになります。人生で味わう悲しさ、寂しさ、そして挫折の数々、その積み重ねが、プロとしての優しさに昇華していくのです。
その結果、自分の言動は自(おの)ずと懼(おそ)れと優しさを持ったものになる筈(はず)です。

最後に、「時間を大切にすること」です。
人間の一生は短く、限りがあります。人生は側に居る人との関係のなかで終わってしまうからです。しかも、過ぎゆく歳月は、人間や境遇を変えます。月日が経(た)てば、人間は変わります。
看護や医学の中に身を置くとき、そのことだけに没頭できる職業人としての青春の時間は、今、君達が認識しているほど長くはありません。ある時から、足し算の人生から、直ぐに引き算の人生に変わってしまいます。だからこそ、修業では多少のことは我慢することを覚えないと、大成しません。何かを得るには何かを諦めなければならないのです。
世の中は元々平等ではありません。「修業とは、矛盾に堪えること」でもあるのです。

看護・医学に携わる人間として、自分はどうなりたいのか、世の人々がどういう有り様を君達に求めているのかを、絶えず意識して下さい。その果てに、勁(つよ)さと優しさを持った看護や医療のプロの境地があります。

君達は今日、本学を巣立って行きますが、君達が本学を出て行くことはあっても、君達の心から本学が出て行くことはありません。
自分の母校に、そして自分の生き方に誇りを持って、これからの人生を歩んでいってくれることを、希望します。健闘を祈ります。

 

 

平成29年 3月 24日
福島県立医科大学 学長  菊地 臣一


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