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令和2年度 福島県立医科大学入学式 学長式辞 (令和2年4月8日)

本日、入学を許可された医学部130名、看護学部84名、大学院医学研究科48名、看護学研究科8名の皆さん、ご入学誠におめでとうございます。
 昨年末から始まった新型コロナウイルス感染症の流行により、このような形で皆さんをお迎えすることとなりました。例年にない不安と緊張の中で入試を突破してきた皆さんの努力に深く敬意を表します。そして今日からは、仲間となる皆さんが互いに切磋琢磨し、将来、共にその志が成就されるよう、教職員一同、しっかりサポートしていきたいと思います。

祝辞を述べるにあたり、新入生の皆さんに毎年必ずお伝えしていることがあります。それは、本学が担う使命と、福島で医療を学ぶことの意味についてです。
 2011年3月11日、福島は未曾有の災害と原発事故に見舞われました。県内唯一の医師養成教育機関であり、県内唯一の特定機能病院でもある本学は、震災後いち早く自らの新たな使命として「健康と医療の面から福島の復興を支える」ことを宣言。教職員が一丸となり、総力を挙げてこの使命の完遂に当たって参りました。そして、今日に至るまで、本学は片時も休むことなく、県民の方々、被災者の方々の健康を見守り、支え続けています。しかし、その取組みは前例のないことだけに、見倣うことの出来る事例など全くありません。いわば、地図のない荒野、海図のない海原を進むのと同じで、試行錯誤の連続です。その過程では、時に強いお叱りを受け、厳しい批判を受けることもあります。その都度、私たちは悩み、自問自答し、県民の皆さんに対し、世界に対し、そして未来に対し、最適なソリューションモデルを示すべく考え、行動しようと努めています。

このように本学は、他の大学とは違い、不安を抱える県民を支え、この災害と惨禍に対して最前線に立ち続けることを宿命づけられた大学です。あの惨禍から10年が経とうとする今、皆さんにとっては「よく知らない過去のこと」という意識が強いかもしれません。しかし、この大学で医学や看護学を学ぶこととなった者が、震災、原発事故、その被災者の方々の悲しみ、苦しみ、悔しさに対し、無関心でいることは絶対に許されません。自分自身の中に、この惨禍との接点や課題を見出し、真摯に考え、行動することが求められます。福島に刻まれた悲しい歴史に対し、私は知らない、関係ない、という姿勢は許されないこと、福島の復興の在り方に常に問題意識を持ち続けることを肝に銘じ、本学での学びをスタートさせてください。

さて、皆さんが本学で学びを始める2020年、世界は不安定さを増しています。イギリスはついにEUを離脱しました。アメリカなど大国の一国主義が先鋭化し、難民のニュースが絶えず流れています。気候変動は地球上の多くの資源の枯渇を示唆し、今まさに世界で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症は世界中の人々を大きく動揺させています。日本もまた例外ではありません。戦後、先人たちが築き上げてきた世界に誇る安定が、少子高齢化や人口の偏在、経済格差の拡大などによって揺らいでいます。これまで当たり前、常識と思っていたことが、その拠り所となる基盤から変わろうとしているのです。今、この話を聞いて「私には関係ない」と思う人がいれば、すぐに意識を変えてください。医療は誰のためにあるのか、何のためにあるのか、という本質を考えてください。あらゆる人々の幸福な生活を支えるために医療は存在します。つまり、医療の質が向上し、医療を届ける地域が広がることは、社会の安定に大きく貢献する行為なのです。その社会自身の安定が今、揺らいでいます。私たちがそのことに無関心でいるわけにはいかないのです。医療の進化が止まり、あまねく医療を届けることが困難になれば、私たちが存在する意義すら揺らぎかねないのです。

では、このような国内外の変化に対し、私たちはどのように向き合っていけばよいのでしょうか。医療人、つまり科学者となる皆さんにとって、変化への対応法は一つしかありません。
 それは、変化の本質を解明し、新たな仕組みを構築し、進化に変えていくことです。そのためには、多様なチャレンジと深い思考が求められます。変化に対し一つのチャレンジだけでその本質が見えることはありません。短絡的な思考によって導かれた結論が、画期的なイノベーションをもたらすこともありません。科学を学ぶ姿勢も同じです。さまざまな角度から切り口を変えて変化に迫り、熟考することで、次第に変化の中にある本質的な何かが削り出されて、科学の進化をもたらすのです。

そこで今年1月、本学は「変化を進化に」というメッセージを発しました。そこには、私たちひとり一人が、チャレンジを重ね、徹底的に考えることで、変化の波を何らかのプラスに変えていくよう、奮起を促す気持ちを込めました。
 医学や看護学という一つの専門領域だけでもその変化は日進月歩です。皆さんは、基礎を学ぶだけで、最初は体力も知力を使い果たすでしょう。しかし、社会の変化にリンクしていない学問は、いくら追求しても、結局は小さく閉ざされた自己満足でしかありません。自らの進化、科学の進化、社会の進化に貢献するために広く社会全体の変化も合わせて俯瞰する力を養ってください。

そして、このチャレンジと思考の繰り返しには、決して避けて通れない宿命があります。それは「失敗」です。失敗のないチャレンジや思考はありません。
 皆さんは、これからの長い学びの過程で、絶望的になるほどの失敗を繰り返します。しかし、失敗を漫然と繰り返し、失敗に慣れてしまっては、変化の本質を削り出し、進化に変える力にはなりません。大切なことは失敗に対し「反省」ができるかどうかです。反省をするためにもまた、広く自分や社会を俯瞰した視点と謙虚な姿勢が必要です。今日皆さんは、大学受験という大きな壁を乗り越え、誇らしく自信に溢れた気持ちでいるでしょう。しかし、この入学式の後には、その自信も誇りも忘れてください。謙虚な姿勢で、新しい世界と変化へのチャンレジャーとして、限界まで考え抜き、それでもなお失敗を繰り返し、なぜなのかと反省し、新たなチャレンジの原動力とする。皆さんの最大のミッションは、広い視野の下、そのタフな精神力と反省力を身に付けることに尽きます。今、皆さんが心に持っている志を成就するために、決して答えを求めることを急いではなりません。同じ失敗を二度繰り返すことがなくなれば、おのずと志は成就されるのです。

皆さんの周囲を見回してください。このハードな道のりを踏破するための最大かつ最高のパートナーは同期の仲間です。互いに切磋琢磨し、高め合いながら一歩ずつ前に進んでください。皆さんの健闘を祈ります。

令和2年4月8日
公立大学法人福島県立医科大学
理事長兼学長 竹之下 誠一

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