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令和3年度 福島県立医科大学入学式 学長式辞 (令和3年4月7日)

入学式の様子1 入学式の様子2 入学式の様子3

本日ここに、令和3年度福島県立医科大学入学式を挙行できますことは、本学にとってこの上ない慶びであります。本日、入学を許可された皆さん、ご入学誠におめでとうございます。

本学は今年、あの震災から10年となる節目の年に、3つ目の学部となる保健科学部を開設しました。その第1期生となる143名の皆さんに加え、医学部130名、看護学部84名、大学院医学研究科47名、看護学研究科8名の志を共にする仲間を迎え、文字通り医療の総合大学として新たな出発をいたします。皆さんが最高の学生生活を送り、抱いている志を実現できるよう、教職員一同、しっかりサポートしていきたいと思います。

本日より本学で学ぶことになった皆さんには今日は二つのことをお伝えします。
まず、1つめは本学の使命と本学で医療を学ぶ意味についてです。このことは、毎年必ず新入生に伝えていることです。それだけ本学で医療を学ぶ者にとって忘れてはならない非常に重要なことであると受け取ってください。
 今年は、東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故から10年となります。多くの皆さんは発災当時、小学校低学年だったため、実感がなく、大きな災害だったことは知っていても、詳しくは知らないか、あるいは過去のこととしてあまり強い関心がないかもしれません。しかし、福島を襲ったあの災害は、巨大地震と津波に加えて原子力災害まで加わった世界でも例がない複合災害として、世界史に刻まれる惨禍だったのです。本学は災害後いち早く、健康と医療の面から福島県の復興を支えることを宣言し、片時も休むことなく、教職員が一丸となり、総力を挙げて医療の質の向上、地域医療の充実、原子力災害を含む災害への対応強化とモデルづくり、県民の健康維持、増進にまい進してきたのです。

そして、その使命の完遂は、日本と世界の大きな期待を集めています。本学には県内はもとより全国、世界から多大な支援が寄せられ、最先端の診療や研究、教育が行える環境が整えられたのです。
皆さんは、本日からそういう大学で医療を学ぶのです。その学びの過程で、皆さんは、今も多くの県民の皆さんが心の中に深い苦しみと悲しみを負っていることを知るはずです。10年前に起きた震災は、多くの人々の中で今も現在進行形であることに気づくはずです。
本学は、他の大学とは違い、不安を抱える県民を支え、この災害と惨禍に対して最前線に立ち続けることを宿命づけられた大学なのです。ですから、この大学で医療を学ぶ皆さんが、震災、原発事故、その被災者の方々の悲しみ、苦しみ、悔しさに対し、無関心でいることは絶対に許されません。自分自身の中で、この災害との接点や課題を見出し、真摯に考え、行動することが求められます。福島の地に刻まれた、壮絶で悲しい歴史に対し、私は知らない、関係ない、という姿勢は決して許されないこと、福島の復興の行く末に常に問題意識を持ち続けることを肝に銘じてください。
 さらに、いずれ皆さんが志を実現し、医療人として社会に出たとき「福島県立医科大学出身」という経歴は、想像以上に強いインパクトをもって迎えられます。誰もが震災や原発事故のこと、復興のこと、そこから得られた教訓などを、ほぼ間違いなく皆さんに質問します。その時、皆さんは、福島の医療者を代表してコメントする立場に置かれるのです。多大な支援と期待によって支えられた大学で医療のプロフェッショナルになる皆さんが何も答えられないでは許されません。その時、自らが何を語れるのか、絶えず考えながら、本学での学びをスタートさせてください。

続いて、2つめは人間中心の世界観をもって医療に携わることについてです。
この数年、世界では「分断」や「格差」といった言葉で表現される変化が顕著になっています。戦後、世界が築いてきた安定が、多様な価値観の登場により、揺らぎ、不安定となっています。そのような中、新型コロナウイルス感染症が拡大し、ソーシャルディスタンスが推奨され、私たちは対面することも、会話をすることもままならず、孤立を感じる人が増えています。そのような社会的閉塞感を打破するためにイノベーションが叫ばれているのが今の時代です。
 本学も、復興活動を通してイノベーションを起こすべく「ふくしま国際医療科学センター」を新設しました。このセンターに属する「放射線医学県民健康管理センター」では震災の3か月後から県民健康調査をスタートし、今に至るまで、被災者の皆さんの健康を見守りが続けています。「健康増進センター」では、県民の皆さんの生活習慣に起因する病気を防ぐべく、科学的エビデンスに基づいた健康指標の分析や評価、それらを推進する人材の育成に取り組んでいます。また、「医療-産業トランスレーショナルリサーチセンター」では、例えば、この10年間にわたり地道に続けてきたタンパク質マイクロアレイの研究が基となり、新型コロナウイルス感染症の治療薬として中和抗体治療薬の研究が世界の注目を浴びています。さらに、本学は日本で唯一、医療研究専用の中型サイクロトロンを備えており、「先端臨床研究センター」では、このサイクロトロンを利用し、アルファ線核種を使ったRI内用療法の研究が国家プロジェクトの一翼を担っており、その成果を世界と競っています。

このように、震災から10年を経て、多くの復興プロジェクトが次第に成果を上げてきていることは、とても嬉しく、本学の持つポテンシャルの高さを国内外に示しています。しかし、私たちは時間の経過とともに記憶が風化し、そのプロジェクトの背景にある県民や患者さんへの思いよりも、技術革新に関心が行ってしまいがちです。そして、歴史が示すように、技術の進歩、時代の変化が加速するとき、私たちは意識の中心から人を見失いがちなのです。
だからこそ敢えて、医療は人のためにあること、人の幸せを実現するために存在するということを、喚起しなければなりません。医療の中心にいるのは必ず人間です。皆さんが医療に対して抱くイメージの中心に、必ず人間がいるでしょうか。その問いは、これから医療人として生きていく以上、一生問い続けなければなりません。
 人間中心の世界観なしに医療に携わることはできません。皆さんは、これまでに経験したことのない大きな困難や多様な価値観に触れてばかりでしょうが、心にしなやかさを持ち、何よりも人を愛し、敬ってこその医療であることを、しっかり自覚し、医療の世界へ足を踏み入れてください。

最後に、皆さんの周囲を見回してください。これからのハードな道のりを踏破するための最大かつ最高のパートナーは同期の仲間です。互いに切磋琢磨し、高め合いながら一歩ずつ前に進んでください。皆さんの健闘を祈ります。

令和3年4月7日
公立大学法人福島県立医科大学
理事長兼学長 竹之下 誠一

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