

大学紹介
令和4年度 福島県立医科大学入学式 学長式辞 (令和4年4月6日)



本日ここに、令和4年度福島県立医科大学入学式を挙行できますことは、本学にとってこのうえない慶びであります。本日、入学を許可された皆さん、ご入学、誠におめでとうございます。
長く続く新型コロナウイルス感染症の影響を受け、この式典も規模を縮小して実施せざるを得ませんでしたが、しかし、こうして、医学部130名、看護学部84名、保健科学部145名、大学院生医学研究科31名、看護学研究科6名の高い志を胸に抱いた皆さんと対面で出来ることは非常に喜ばしいことです。こうして皆さんの顔を見、教職員一同、皆さんの志を実現するため、しっかりサポートしていくことを改めて強く心に命じております。
私は平成29年、2017年に本学の学長に就任しました。以来全ての年の入学式に必ずお話していることがあります。必ずお話するということは、それだけ大切なことであるということです。そのことを、まず皆さんにお伝えします。
それは、福島県立医科大学で医療を学ぶことの意義です。本学は他大学にない歴史的使命を担う大学です。2011年3月11日、本学は、東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故により、地震、津波、原子力災害というこれまでに例のない複合災害を経験した、世界で唯一の医科大学となりました。当時、教職員の誰もが被災者でしたが、福島県の医療の最後の砦として、医療崩壊を防ぐために死力を尽くして病院機能の維持に努めました。そして、現在も継続して被災した県民の健康を見守り、医療と健康の面から福島県の復興を支え続けています。
皆さんは、そのような使命を担う大学でこれから医療を学びます。福島県立医科大学の一員となることで皆さんは必然的にその使命を担う当事者となるのです。11年前といえば、皆さんは小学校低学年の頃だったでしょうか。その頃のことを自分ごととして捉えることは難しいことだと思います。しかし、社会では皆さんを、福島県立医科大学の学生であれば震災や原発事故に対して科学的、医学的理解をしているはず、被災者の気持ちを理解しているはず、と期待を込めて見ています。なぜなら多くの人にとって震災と原発事故はまだまだ現在進行形の災害だからです。本学は、他の大学とは違い、不安を抱える県民を支え、この災害と惨禍に対して常に最前線に立ち続けることを宿命づけられた大学です。ですから、この大学で医療を学ぶ皆さんが、震災、原発事故、その被災者の方々の悲しみ、苦しみ、悔しさや不安、恐れに対し無関心でいることは絶対に許されません。自ら、この災害との関係性や課題を見出し、真摯に考え、行動することが求められます。本学の学生である限り、福島の地に刻まれた災害の歴史に対し、私は知らない、関係ない、という姿勢は断じて許されないことをしっかり理解してください。
さらに、いずれ皆さんが志を実現し、医療人として社会に出たとき「福島県立医科大学出身」という経歴は、皆さんの想像以上に強い反応で迎えられると思います。国内外の多くの人が、震災や原発事故のこと、復興のこと、そこから得られた教訓などを、皆さんに質問します。その時、皆さんは、被災地福島県の医療者を代表してコメントする立場に置かれるのです。この大学で医療のプロフェッショナルになる皆さんが何も答えられないというわけにはいきません。そのような場面で、自らが何を問われ、語れるのか、何を身に付けておくべきなのかを、今から考えながら、本学での学びをスタートさせてください。
さて、新型コロナウイルス感染症の拡大により、皆さんの高校生活も大きく制限されたものと思います。本学も断続的とはいえ2年間にわたる感染拡大防止策により、多くの行事が中止や規模縮小を余儀なくされました。この状況は今後も程度の差こそあれ、文字通り波のように繰り返し長く続くものと思います。本学でも新型コロナ治療薬の開発が行われ、他にない独創的な研究が進行しており、一定の成果を挙げております。しかし、ウイルスもまた、生き残りをかけて常に変化していることは皆さんもご存じの通りです。人間とウイルスの知恵比べは、必然的にいたちごっこにならざるを得ないのです。このような状況は、科学においては自然な流れです。ですから、皆さんは、学生時代に経験すべきことができないと嘆いてばかりいても、環境がコロナ以前の状態に戻る可能性は低く、むしろ時間を無為に過ごすことになりかねません。
そもそも皆さんが思い浮かべる学生生活とは、自分より先に大学生活を送った大人や先輩の世代の学生生活だと思います。それは単に過去の真似事、前例の踏襲として学生生活をイメージしているにすぎません。先ほども触れたように、これまでと同じ事が出来る環境は簡単には戻ってこないでしょう。だからこそ、皆さんには新たなチャレンジを求めます。コロナの時代、アフターコロナの時代の学生生活とはかくなるものだ、という新たな形を作り出してください。誰もが思い描くステレオタイプの学生生活を、自分達が塗り替えるという意気込みを持って学生生活をスタートさせて欲しいと願います。そして、いつかこの時代を振り返った時、自分達が新しい時代のパイオニアだったのだ、と胸を張って後輩たちに話して欲しいと思います。このコロナ禍の環境をマイナスと捉えるのは、あくまでもこれまでの価値観や物差しにおいての話です。これをプラスに転じ、前向きの未来を享受できるのは、新しい価値観や物差しを確立しようとチャレンジした者だけです。時代の区切りを作ることが出来る環境は、常にあるものではありません、是非このチャンスをいかしてください。
最後に、皆さんの周囲を見回してください。医療の道は決して楽な道ではありません。これからのハードな道のりを踏破するためのライバルであり、同時に最大かつ最高のパートナーは同期の仲間です。互いに切磋琢磨し、高め合いながら一歩ずつ前に進んでください。皆さんの健闘を祈ります。
令和4年4月6日
公立大学法人福島県立医科大学
理事長兼学長 竹之下 誠一
事務担当 : 教育研修支援課
医学部教務係 : 電話024-547-1095
看護学部教務係: 電話024-547-1806
FAX(共通) 024-547−1989
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