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令和5年度 福島県立医科大学入学式 学長式辞 (令和5年4月5日)

入学式の様子1 入学式の様子2 入学式の様子3

本日ここに、令和5年度福島県立医科大学入学式を挙行できますことは、本学にとってこのうえない慶びであります。医学部130名、看護学部84名、保健科学部145名、別科20名、大学院47名の、本日入学を許可された皆さん、ご入学、誠におめでとうございます。こうして希望にあふれた皆さんを前にし、教職員一同、皆さんの志を実現するため、これから全力を挙げてサポートしてまいります。

さて、私にはこれまで入学式で必ずお話していることがあります。必ず話すということは、それだけ大切なこ とであるということです。そのことを、今年も最初に皆さんにお伝えします。

それは、福島県立医科大学で医療を学ぶことの意義です。本学は他大学にない歴史的使命を担う大学です。2011年3月11日、本学は、東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故により、地震、津波、原子力災害という世界に類のない複合災害を経験した、世界で唯一の医科大学となりました。当時、教職員自身の誰もが被災者でしたが、福島県の医療の最後の砦として、医療崩壊を防ぐために全力を尽くして病院機能の維持に努めました。そしてこの災害は、被災した多くの人にとっては現在進行形であり、本学は現在も被災した県民の健康を見守り、医療と健康の面から福島県の復興を支え続けています。本学は不安を抱える県民を支え、この災害と惨禍に対して常に最前線に立ち続けることを宿命づけられているのです。

皆さんは、そのような使命を担う大学でこれから医学、医療を学ぶのです。本学の一員となることで皆さんは必然的にその使命を担う一員となります。ですから、皆さんが、震災、原発事故、その被災者の方々の悲しみ、苦しみ、悔しさや不安に対し無関心でいることは絶対に許されません。自ら、この災害との関係性や課題を見出し、真摯に考え、行動することが求められます。本学の学生である限り、福島の地と人々の心に刻まれた惨禍の歴史に対し、私は知らない、関係ない、という姿勢は断じて許されないことをしっかり理解してください。

さらに、いずれ皆さんが志を実現し、医療人として社会に出たとき「福島県立医科大学出身」という経歴は、皆さんの想像以上に強い反応で迎えられます。国内外の多くの人が、震災や原発事故のこと、復興のこと、そこから得られた多くの教訓などを、皆さんにたずねてきます。その時、この大学で医のプロフェッショナルになる皆さんが何も答えられないというわけにはいきません。そのような場面で、自らが何を問われ、語れるのか、何を身に付けておくべきなのかを、今から考えながら、本学での学びをスタートさせてください。

さて、もう一つ、皆さんには意識して欲しいことがあります。それは「世界」です。本学は震災と原発事故後、従来にまして「世界」を意識せざるを得ませんでした。なぜなら、福島の地にある唯一の医科大学として、好むと好まざるとにかかわらず、世界中から注目を浴びたからです。その中には好奇の眼もありましたし、中傷もありました。しかし、本学はそれをチャンスと捉えようとしました。当時、多くの傷つき、苦しむ被災者がいる中では、このような姿勢に対し、批判がなかったわけではありません。県民の医療を支える県立大学として意識すべきは地域医療ではないのか、という指摘があったのは事実です。しかし、地域に根差す大学だからこそ、福島県の復興と活性化のためには「世界」を意識し、「世界」をフィールドにして活動することが求められたのです。例えば、震災後、海外では、福島を壊滅した死の町として報じられることが往々にしてありました。海外メディアが福島に取材に来て「なんだ、人がいるじゃないか」と言ったことさえあります。福島は死滅しておらず、不屈の精神で復興に邁進していることを世界に知らしめることが大学の使命になりました。例えば、際立つ研究成果を生み出し、発信していくこと。さらに、福島で得られた知見を世界と共有するため、福島で学んだ人材を広く社会に送り出すことなどです。それらの努力はアルファ線核種を使った放射線内用療法や、タンパク質マイクロアレイ技術の確立など、世界でも唯一の実績を備えた大学となり、復興の進捗をアピールすることができました。これらの成果が先日オープンした福島国際研究教育機構における「放射線科学・創薬医療」分野や、「原子力災害に関するデータや知見の集積・発信」分野での中核的な役割を期待されるまでになっているのです。このように地域に根差した大学として、地域により良い医療を提供するためには常に「世界」を視野に入れなくてはならないのです。新型コロナウイルス感染症の例を出すまでもなく、世界中の様々な動きを意識せずして、地域における充実した医療の提供が出来るはずもありません。今や、世界中のどこかで生じたことは、すぐに日本にも影響を及ぼす時代です。そのような時代に、「世界」の動向に敏感にならずして、医学、医療のトレンドを把握することなどできません。医学も医療ニーズも常に世界中のどこかで何かが変わっています。それらをいち早く把握し、地域に還元する。すなわち「ローカルとローカルの関係性」だけでなく「ローカルとグローバルの関係性」をも考えることが、地域に根差した本学での学びに必要不可欠な姿勢であると意識してください。

本学は震災以来、「ピンチをチャンスに」をモットーとしてきました。これから本学を母校とする皆さんもまた、これからの学びの中で必ず挫折や困難を経験することになります。しかし、そのピンチこそが一歩前に進むチャンスです。たゆまぬ挑戦の繰り返しによって、今日ここにいらっしゃる全ての皆さんがその志を実現することを祈っています。

令和5年4月5日
福島県立医科大学
学長 竹之下 誠一

事務担当 : 教育研修支援課

学生総務係 : 電話 024-547-1972
FAX 024-547-1984
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