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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2010.02.05

vol.64  − 哀歓 −

節分が巡ってきました。子供の頃、父と一緒に鰯(いわし)の頭を木の枝に刺して戸口に掲げたことを想い出します。今でもこういう風習は残っているのでしょうか。

「東京都内に積雪」のニュースを聞きながら、大学へ向かいました。
都内の雪と聞くと、春近し、そして大勢の骨折患者の搬入が脳裡を過ぎります。救急の医師達の苦労に思いが至ります。

今朝、タクシーの運転手さんに、拙宅前で待機中に車の下で暖を取っている狸(たぬき)が居たという事を聞き、一時この話題で話が弾みました。久し振りに心から笑うことが出来ました。
と同時に、市街地に狸が出るというのは、山里より過ごし易いのかとも思い、狸が健気(けなげ)に、そして勁く生きている姿に勇気をもらいました。

先日、斎藤真一展(武蔵野市立吉祥寺美術館)に行ってきました。
まとめて彼の作品をみるのは初めてです。赫(あか)で描く瞽女(ごぜ)の絵が語りかけてくる、静謐な哀しみと勁さに言葉を失います。越後は出雲崎の雪原を背景にした絵に初めて接し、哀しみが昇華された冷涼感に暫く立ち尽くしてしまいました。
(企画展「瞽女と哀愁の旅路」斎藤真一展http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/64_ssaitou.jpg

vol.62(http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=88)に紹介した、伊藤謙介氏の書評に触発され、斎藤真一画伯と同じ視点を持って、戦後の見せ物小屋に集う女性達を描いた画集(「旅芸人の手帖」宮崎進)を購入しました。ここで描かれている風景は、私も同時代を生きたので、生きることの哀しみと喜びが追体験できました。

構内や庭の木蓮の芽が膨らみ始めています。
都内での黄色い西日は、道行く人を黒のシルエットに変え、その影を路に長く描いています。
冬の西日をみると、浄土寺(兵庫県小野市)の阿弥陀三尊像を思い浮かべます。残念ながら、実際にみたことはないのですが、多くの写真をみました。背後の蔀戸(しとみど)を開け放ち、堂内全体が朱赤に輝く様は、今、最も体験したい情景の一つです。

早朝の寒気の中での子(?)狸、そして斎藤真一や宮崎進の絵画は、自分がまだまだ精神的に未熟で、小さいことを思い知らされました。
勇気をもらいました。

今週の花材は、執務室は赤い花が土佐水木を取り囲み、清烈で、対称の美をみせてくれています。
秘書室は、花器の透明感と相俟って清楚な佇まいです。ヒヤシンスの香りが部屋に漂っています。訪問者に安らぎを与えてくれている筈です。

(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■土佐水木
マンサク科/落葉低木/原産:日本・アジア/《名前の由来》土佐(高知)に自生し、ミズキの葉に似ていることから/高知県の蛇紋岩地帯石灰岩地帯に自生。観賞用として広く栽培される。薄黄色の花が7〜8輪まとまって、垂れ下がるように咲く。良く似ている「日向水木」は一房に咲く花数が3〜4輪と少ない。
■エピデンドラム
ラン科/原産:中南米/《名前の由来》ギリシャ語のepi(上に)とdendron(木)から。本属が一般的に着生ランであることから/細く伸びた茎の先に小さな花が密集し、半円形の一つの花のように見える。次々と花が咲くので、非常に観賞期間が長い。
※拡大写真http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/64_zoom1.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■ヒヤシンス
ユリ科/球根植物/原産:ギリシア・トルコなどの地中海沿岸/香水のようなやや強い甘い匂いを放つ。穂状に小花が密集して咲く。理科の授業で水耕栽培にも利用される球根。花色も豊富で八重咲き種もある。青「デルフトブルー」、白「アイオロス」
■ブルニア・アルビフローラ
ブルニア科/原産:南アフリカ/アルビフローラは白い花を意味するが、実際は花でなく実。色はグリーン地にグレーの濃淡で、小さな卵が密集しているような個性的な形。
※拡大写真http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/64_zoom2.jpg
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