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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2016.03.11

vol.356  − 旅 (たびする) −

啓蟄(けいちつ)です。山河も大気も春めいてきました。そして、旅立ち、別れの月です。

         幾山河越えさり行かば寂しさの
         終(は)てなむ国ぞ今日(けふ)も旅ゆく
                                 若山牧水

余す所無く若者の感傷を詠(うた)いあげた、有名な歌です。そして、人生が旅であることも暗示しています。
旅の節目にあるのが、3月です。

日本人の自然への向き合い方や美に対する見立ては、海外のそれと違います。この感性の違いは、遙か昔から今に続いています。
“和”とは何かに就(つ)いて認(したた)めてきました。
         (vol.308 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=347
         (vol.314 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=353
         (vol.343 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=383
         (vol.352 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=392
“宗教”に名を借りた、出口の無い、悲惨な争いが世界中で起きています。改めて、我が国やそこに住む人々の歴史や文化を考えてしまいます。

明治維新の前後、そして戦前、日本を訪れた人々が、様々に、日本人の姿に就いて書き残しています。
そこに記された日本人には共通点があります。
それは、清潔、貧しいが礼儀正しい、誠実、規律、誇り、他者への思いやり、などです。

日本人の持つこのような特性が、軍事を含む外交の分野では、時に、妨(さまた)げになるようです。
日清戦争の背景に、各国の思惑(おもわく)の交錯(こうさく)が観て取れます。国益を賭けてのしのぎ合い、冷徹に考えなければなりません。(渡辺惣樹(わたなべ・そうき))

美に対する考え方も、余白や欠けている事に美しさを感じること、用の美、非対称を好むなどは、欧州は無論(むろん)、同じ東アジアに位置する朝鮮半島にもみられません。
例えば、李朝の美を最初に見い出したのは、浅川伯教(あさかわ・のりたか)、巧(たくみ)兄弟です。

春夏秋冬、四季のあること、険(けわ)しい地勢、洪水(こうずい)、地震、火災、津波等の天変地異、人の力ではどうにも抗(あらが)えない自然の脅威などが、和の感性の形成に大きく寄与していることは明らかです。
         (vol.226 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=263
         (vol.254 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=291
         (vol.287 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=324
         (vol.289 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=326
         (vol.308 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=347
         (vol.314 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=353
         (vol.328 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=367
         (vol.337 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=376

近年の科学の発達は、日本人という民族の成り立ちやその独自性を明らかにしつつあります。
我々が、従来、知識として持っているのは、元々住んでいた縄文人が朝鮮半島を経由して入ってきた渡来人(とらいじん、我々が学校で習った時は帰化人)によって、北と南に追いやられてしまったという図式です。

近年の研究によれば、日本人は、大陸や東アジアの人々とは違って、縄文人のDNAが土台になっているというのです。
DNAの多様性が高いレベルで維持されていることが、少数者にも優しく、共生という伝統的価値観と関連しているという仮説(崎谷満(さきたに・みつる))は刺激的です。

我が国では誰もが知っている童話「フランダースの犬」、最後は悲しい結末です。この童話、物語の舞台であるベルギーでは様々な理由で人気があるとは言えません。
一方、米国ではその結末は、大方、ハッピーエンドです。
恐らく、受け入れ方の違いの理由の一つに、人生に対する受け止め方があります。我が国には諦念(ていねん)、米国には「努力した人間が成功者」という考え方が背景にあります。

日・韓・漢民族の違いは2分間も会話をしていれば、会話毎の頷き(うなずき)の有無で日本人と分かる、という話。ピクニックに出掛け、うららかさとのどかさに草の上に大の字に寝て、青空をみている日本人、これをみて不思議がるドイツ人の秘話(芳賀綏(はが・やすし))は、読んでいて思わずニヤリとしてしまいます。

多くの科学者や文人達も、自然や宇宙と共鳴している日本人の姿を描いています。
今、初めて、日本人の考え方や感性が、自然と個体としての人間の合体した結果であることが科学的に実証されつつあるのです。

今週の花材は、春を迎えた安堵(あんど)を感じさせます。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■モルセラ   シソ科/一年草/《名前の由来》原産地と間違えられ
たモルッカ諸島の名から/花期は春で、大きな緑色のガクの中に白っ
ぽい花が咲く。爽やかなライトグリーンと独特な茎のラインが魅力の葉
物として流通。ミントに似た芳香がある。
■エリンジュウム   セリ科/多年草/長く鋭い苞と、松かさのような
花が特徴。成長とともに青みを帯びる。非常に花持ちが良く、ドライフラ
ワーにも適す。
■アンスリュウム〔みどり〕   サトイモ科/常緑多年草/花弁のよう
に見える部分は苞で、中心の棒状の部分が花序。主に苞を鑑賞する
ため、非常に長く楽しめる。
■カーネーション〔ノビオバーガンディ〕    ナデシコ科/多年草/
母の日の花として古くから親しまれる。パステル系からビビッド、複色
や絞り模様など品種が豊富。「ノビオ」シリーズはボルドーや紫を基調
とした覆輪が綺麗な品種。
■ピンポン菊〔アブロン〕  キク科/多年草/真ん丸に咲く可愛い菊。
日持ちする菊の中でも特に長く楽しめる。「アブロン」は赤茶色のシック
な品種。
■ドラセナ〔コーディラインカプチーノ〕   リュウゼツラン科/常緑低
木/「コーディライン」シリーズは正式にはドラセナでなくコルジリネ。
以前ドラセナ属に分類されていたため、現在も“ドラセナ”の名で流通。
「カプチーノ」は赤黒の葉の縁に白が入る。
■フィロデンドロン〔カーブウィング〕   サトイモ科/世界の熱帯亜熱
帯に約650種が自生。葉の大きさや形も様々で、育てやすい品種はイ
ンテリアグリーンとして人気。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3561.jpg


【秘書室】
■ラナンキュラス   キンポウゲ科/球根植
物/《名前の由来》ラテン語の“蛙”に由来。蛙
の生息するような湿地を好んで咲くことから/
薄く柔らかい花弁が幾重にも重なり、バラのよ
うな花姿。オレンジ「アマンディオレンジ」、クリ
ーム「ベズレー」
■ドラセナ〔サンデリアーナホワイト〕   
リュウゼツラン科/日本で流通する観葉植物
の代表種。 「サンデリアーナホワイト」は笹の
ような細長い葉とストライプの斑が特徴。他に
黄味の強い「ゴールド」や緑が濃い「バリケー
ド」もある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3562.jpg

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