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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2014.03.28

vol.263  − 創 (つくる) −

昼の雨、そして深夜の唸(うな)る風、樹木の葉、屋外に置かれている物が飛ばされる音で目が覚めてしまいます。
春の到来です。一雨ごとに春が大地を覆います。

         好雨(こうう)時節(じせつ)を知り
         春に当って乃(すなわ)ち発生す
         風に随(したが)って潜(ひそ)かに夜に入(い)り
         物を潤して細やかにして声無し
         ・・・・・
                                     杜甫

この詩を実感できる季節が巡ってきました。

都心では、いつも最初に咲き出す外務省の前庭にある桜が咲き出しました。
公園の一角、白木蓮(ハクモクレン)、辛夷(コブシ)も花を付け始めました。

早朝、西の山頂、上空に月が輝いています。
日の出前、盆地に入る前の日差しが嶺々を照らし、白銀のような山肌を赤く染めています。
出勤の車中からみるこの風景は、壮大な音楽が鳴っているようです。暫(しば)し、襟を正してみつめていると、心が仕事前の“用意”にセットされていきます。

北米では、夏時間(サマータイム、デイライトセービングタイム)が始まりました。この時期が来ると、忘れられない思い出があります。

カナダで修業を始めて間もなくのことです。
当時は、4月の最終日曜日、午前2時からの開始です。1週間前から勤務を始めていて、月曜日の朝、起きてテレビをつけたら、7時でした。6時の筈なのに、テレビが間違っている!しかし、どのチャンネルでも7時です。人間とは、不思議な、愚かなものです。自分が間違っているとは思わないのです。
その日、体調不良を理由に病院へ行くのを止めました。後日、この日から夏時間が始まることを知りました。

夏時間は、20世紀に入って間もなく、欧米に導入された制度です。春から夏にかけて、日照時間の長くなる緯度の高い地域では、太陽が顔を出している昼の時間を有効に使えます。
我が国でも、戦後の占領期(1948〜1951)に採用されています。この時期、田舎でも進駐軍(今は死語か)の行進がありました。私には夏時間の記憶はありません。占領の終了とともに廃止されています。
我が国では、馴染まない制度であったのではないかと思います。

彼我の考え方の違い、祝日にも見て取れます。
北米や欧州では、祝日が必ずしも固定されてはいません。我が国では、近年こそありますが、子供の頃には、年によって移動する祝日はありませんでした。
現在の週7日制での“休日”という考えも、我が国にはなかった筈です。明治以前は、藪入りと正月の他にどのように休みを取っていたのでしょうか。

こんな事を考えていると、思いは、概念(コンセプト)の大切さ、戦略と戦術の違いに思いが至ります。
推理小説での永遠のスター、シャーロックホームズやコロンボ、人物設定が独創的です。この人物像、時代や国を越えて通用しています。このような形象を最初に提示した人間が、真の創造者です。

“移動しながら音楽を聞く”という思想を具現化したウォークマンという製品、我が国のソニーの創造性が、今の電子端末による新たな次元の世界を生み出したのではないでしょうか…。

小型化したり、多機能化を実現するのは戦術の次元です。創意・工夫の工夫の部分です。
何でも応用できる、しかしその枠組みを保持しておかないと物事が根底から崩れてしまう、そのような独創性の尊重が、今、求められています。

柔軟性と表裏一体の安全性、合意形成による折り合いと安心、今、我が国はその案配をどうするかが問われています。

24日(2008)、米国の個性派俳優リチャード・ウィドマークが 亡くなっています。享年93です。
若い頃、憧れた俳優です。(vol.39  http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=63

今週の花材は、両室とも“春の謳歌”です。秘書室は少し控えめですが…。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■桜〔彼岸桜〕   バラ科/落葉高木/《名
前の由来》春のお彼岸の頃に開花することか
ら/淡紅色の一重咲きで、他の桜に先駆けて
開花する。桜の開花予報などで知られる品種
は「染井吉野」。
■ユリ〔レクサス〕   ユリ科/球根植物/カ
サブランカと同じオリエンタルハイブリッド種。
大きく優雅な花姿と芳香が特徴。「レクサス」
は濃いめのピンク色。
■ベアグラス   ユリ科/細く長い線状でし
なやかな葉。束ねたりカールさせたりと、バリ
エーションが楽しめる。非常に丈夫で、籠を編
む材料に使用される。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2631.jpg

【秘書室】
■カラー〔グリーンゴッデス〕   サトイモ科/《名前の由来》花
型(苞)がYシャツの襟に似ていることから/花弁のように見える
筒状の部分は苞で、中心の棒状が花序。
「グリーンゴッデス」は大輪咲の緑色。
■ダリア〔熱唱〕   キク科/多年草/品種が豊富で世界に約3
万種以上ある。花径が3cm程の小輪から30cm以上にもなる巨
大輪まである。「熱唱」は赤色で、寒期はオレンジがかる。
■カーネーション〔マサイ〕   ナデシコ科/多年草/母の日の
花として古くから親しまれる。バラ・菊に並び世界的に生産量が多
い。「マサイ」はシックなワインレッド色。
■アンスリュウム〔みどり〕   サトイモ科/常緑多年草/光沢
があり造花と見間違うような花主に花後の実を楽しむものとして流
通。花弁のように見える部分は苞で、主に苞を鑑賞する。
■ヒペリカム〔マジカルトリンプ〕   オトギリソウ科/半常緑低木
/花期は初夏で黄色い花が咲く/主に花後の実を楽しむものとし
て流通。実色は赤ピンク系を中心に、緑や白、茶もある。
■レモンリーフ   ツツジ科/常緑低木/《名前の由来》葉形が
レモンの形に似ることから/水揚げが良くブーケやアレンジメント
によく利用される。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2632.jpg

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