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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2014.02.14

vol.257  − 救 (すくう) −

例年にない寒気、日の出前後、息を呑むような天地の神々しさです。
茜色に染まっている東の空の下、大地では、山影と一緒になって、木々の幹や枝が影絵のように黒く浮き出されます。

太陽が顔を出すと、月が、空高く、日の光を浴びて白い形をみせています。
青い空を背景に、東の太陽、西に月、春が来る前の自然と大気、鎮(しず)かな情景です。

         おもむろに寒さきびしき日々なれど
         立春頃は木々余情あり
                             佐藤佐太郎

我が国を訪れた外国人が、四季に応じて生活様式を変えていくことを、驚きをもって述べています。
変化が多彩な我が国の四季は、日本人の文化の基底であることを実感します。

間もなく、3年目の3月11日が訪れます。
地震、津波に加えて原発事故に見舞われた本県は、暫(しばら)くの間、被災地域では勿論、前線で支援する側も極限の混乱状態に陥りました。他県からの人の入り、モノの輸送が県境で止まり、孤立した修羅の場とはこんなものかと慄然(りつぜん)としました。

この時期の風評被害、今考えても酷(むご)いものでした。

振り返れば、本学は、水道の再開がなければ病院が撤退という瀬戸際まで追い詰められました。残り1時間のところで給水が間に合いました。よくぞ踏み留まったと思います。
当事者の覚悟、関係者の支援、そして僥倖(ぎょうこう)に感謝です。

原発事故への対応の中、災害と文芸との関係を考えていました。
文学や芸術は、災厄(さいやく)に遭った人々を救えるのかという問いです。

関東大震災の後、「自然は人類のために出来るだけの助力を與(あた)へようとするほどのもの」(若山牧水)との記述があります。
彼は、自然と人間(ヒト)との関わりを、自然を人間に対する恵みと捉える日本人独特の自然観を述べています。

懸命の原発事故対応のなか、「危機的な現実を生きる場合のほうが、花鳥はその切実な美を人間の美として掲げる構造がある」(前 登志夫)との文章を見つけました。

今回の未曾有の災厄、「喪失を埋めるかのように新たな文学の潮流が生まれてくる」(福嶋亮大)という指摘は新鮮です。
文芸は、人々の哀しさ、怒り、虚しさ、遣る瀬(やるせ)無さを契機として、新たな美を生み出すのでしょうか。

楽茶碗の企画展、黒楽茶碗 銘「俊寛」(長次郎)が出品されていました。
同じ作者の黒楽も展示されていました。前者に多くの人がより惹かれるのは、手で包み込みたくなるような優しげな丸みのせいなのでは…。

隈 研吾(くま・けんご)、今や引っ張りだこです。
新しい歌舞伎座、サントリー美術館、根津美術館、ザ・キャピトルホテルの設計など…。“和のモダン”です。彼の作品に日本人のアイデンティティ(存在証明)を感じます。

最近の美術館、自分もそうですが、高齢者が目につきます。
管理・運営する側に今までとは違った工夫が必要で、より難しくなってきていることを痛感します。

2月8日(1587、天正15年)、スコットランドの女王メアリー・スチュアートが処刑されました。
彼女の数奇な生涯は、様々な作品に取り上げられています。「メアリー−スコットランドの女王」、ヒットしませんでしたが、良い曲です。
   (vol.94  http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=120

2月9日〔ユリウス暦1月28日〕(1881、明治14年)、我々の世代では、学生時代の通過儀礼のように、彼の作品を一度は手に取ったことのある小説家、ドストエフスキーが亡くなっています。享年59の生涯です。

今週の花材は、白が主役です。執務室は緑と赤が、秘書室では緑が白を際立たせています。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■バラ〔ラナンキュラ〕   バラ科/落葉低木
/古くから親しまれ、現代でも人気の高い花。
花色・花形など多岐にわたり、約2万種を超す。
「ラナンキュラ」は赤地にクリームの絞り模様が
入る。花弁が丸く多弁でラナンキュラスに似た
花姿。
■カーネーション〔プラチナグリーン〕   ナデ
シコ科/多年草/母の日の花として古くから
親しまれる。バラ・菊に並び世界的に生産量
が多い。「プラチナグリーン」は淡緑色で、茎が
分岐し1本に数輪花が咲くスプレー咲。
■ピンポン菊〔ボンボン〕   キク科/多年草
/ピンポン玉のように真ん丸に咲く菊。菊の中
でも特に花持ちが良く鑑賞期間が長い。「ボン
ボン」は濃いめのピンク色。
■麦   イネ科/一年草/コムギ・オオムギ
・ライムギ・カラスムギの4種。切り花として流
通するのは主にオオムギ。ドライフラワーにも
適す。
■コデマリ   バラ科/落葉低木/白い小花
が半円球状に密集し、ひとつの花のように咲
く。枝いっぱいに連なって開花し、大株に育っ
たものは見応えがある。花の重みで枝垂れる
姿が優雅で、庭木としても人気。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2571.jpg

【秘書室】
■カラー〔ウェディングマーチ〕   サトイモ科/球根植物
/江戸時代にオランダから渡来し、「阿蘭陀海芋」(オラ
ンダカイウ)の別名をもつ。メガホン状の苞をもち、その中
に棒状の花序がある。「ウェディングマーチ」は名前の通
り、結婚式でもよく利用される人気種。
■ダリア〔カマクラ〕   キク科/多年草/品種がとても
豊富で世界に3万種以上ある。花径が3cm程の小輪か
ら30cm以上にもある巨大輪まである。「カマクラ」は純白
種。
■アジサイ〔斑入りガクアジサイ〕   ユキノシタ科/落
葉低木/花期は5〜7月で、梅雨時期に綺麗な花を咲か
せる。白斑が入った爽やかな葉色が綺麗で、枝ものとし
て流通。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2572.jpg

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