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理事長室からの花だより

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2014.01.31

vol.255  − 労 (ねぎらう) −

この時季、日の出前、東の空が濃い群青に明けの明星、天空に月、日の出とともに変化していく空の濃淡、天空の絵画です。

その後、朝日が執務室に斜めに入っています。
この日差しが、葉をすっかり落とした前庭の木々の枝と、曲がりくねった構内の進入路を黄金色に輝かせて、金箔を貼ったように浮かび上がらせます。「紅白梅図屏風」(尾形光琳)の構図そのものです。

日の出が早くなり、日没も大分遅くなりました。
寒さは未だ続いていますが、花屋の軒先は既に春到来です。

         ・・・・・・・・・・・・
         万物磋跎(ばんぶつ さた)として過半凋(かはん しぼ)めり
                                           醍醐御製(だいご ぎょせい)

四季は過ぎ去り、冬は、万物が衰え切ってしぼんでいます。
冬は、この歌のような気持ちになりがちです。しかし、モノは考えようです。

         ・・・・・・・・・・・・
         数杯(すはい)の温酎(うんちう)は雪の中(うち)の春
                                       白(はく)

灯の下、燗(かん)をした酒を飲むと温まり、雪の中でも、春が訪れたようです。

只、冬、雪が降らず、寒さが厳しくなければ、作物の出来に影響します。
すべて物事には表と裏があります。

御両親にどうしてもと望まれ、若者の診察をしました。久し振りに白衣に袖を通しました。
一瞬で気持ちが切り変わります。
以前のままに、立って挨拶、自己紹介、受診への労い(お待たせしました、遠いところ大変でした、など)の言葉、診察台に上がる際には履物を揃える、患者さんが自分で出来る出来ないに関係なく肩に手を掛ける、「お大事に、何かあったら連絡を」で別れる。最後に、職員に礼を述べて執務室に戻る。
体がプロとしての振る舞いを覚えていました。

話に耳を傾け、診察後に、経験や知見から、見立てを充分に説明しました。両親と若者にご質問の無いことを確かめて、安心して帰ってもらうことが出来ました。
患者さんや関係者の安心した笑顔は、こちらの心まで和ませてくれます。

原発事故後、最大の苦悩は、第一線の現場で頑張っている人々が、様々な批判に晒され、「自分達は正しいことをしているのか」、「自分達の仕事は、国民や県民の役に立っているのか」という疑念や不安を持ってしまう事です。原発事故対応という、未曾有の惨禍を前にして、支援をする側と受ける側の双方に、軋轢(あつれき)があるからです。

支援する側への支援体制の確立していない我が国では、被災者へは勿論ですが、支援している方々への労いや激励も欠かせません。
何故なら、今行っている仕事は、自ら望んでその場に立っているのではないのです。「天命」と受け止めて、責務として頑張っているのですから。
そもそも、第一線で支援業務をしている人々の多くは自らも被災者であり、県民なのです。

原発事故対応の第一線で頑張っている人々への最大の労いは、国の中枢にいる方々からの労い、全幅の信頼の提示、そして激励です。
人間は、目に見えない価値(言葉、態度など)に勇気をもらうのです。

日本人の好む美の一つ、染付、特別展「「図変り」大皿の世界  伊万里染付の美」展に足を運びました。
染付というと蕎麦猪口(そばちょく)が浮かびます。白い磁器肌に藍の色と絵柄、新鮮です。

直径40cm以上はあろうかという大皿、斬新、大胆な文様が、白の地肌に青で鮮やかに描かれています。
現代の作品と言われても頷いてしまいます。江戸時代、大皿にご馳走を盛り付けての人々の宴(うたげ)でのさんざめきが聞こえてくるようで、少し楽しくなります。

今週の花材は、執務室は早春、秘書室は冬の温もりの象徴です。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■木苺   バラ科/半落葉低木/ラズベリー
やブラックベリーなどの総称で木になる苺。春
に苺の花に似た小さな白い花が咲く。ヤツデ
のような切れ込みの深い葉形が特徴。
■アルストロメリア〔サンディー〕   ヒガンバ
ナ科/球根植物/一本の茎から5〜8本の花
茎を伸ばし、それぞれに花を咲かす。一つひと
つの花はユリを小さくしたような花姿。ほとんど
の品種で花弁に斑が入る。
■マトリカリア〔シングルペグモ〕   キク科/
多年草/茎や葉を薬や染料として利用される
ハーブの一種。茎は良く分岐し、小菊に似た
小花を多数咲かせる。16〜17世紀のヨーロ
ッパでは薬草として栽培されていたが、現在
は主に観賞用。「シングルペグモ」は白色の一
重咲き。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2551.jpg

【秘書室】
■黒目柳   ヤナギ科/落葉低木/「猫柳」は猫の尻尾のよ
うな銀白色のふわふわした花穂をつける。黒目柳の花穂は暗紅
色〜黒色で、枝も赤みを帯びる。
■バンダ   ラン科/樹木や岩肌に根を張りつかせて育つ着
生種。洋ランの中でも特異なブルー系の美しい花色。10cm程
の大きな丸弁の花で、網目模様が入るのが特徴。
■ピンポン菊〔ロリポップパープル〕   キク科/多年草/ピン
ポン玉のように真ん丸に咲く。花持ちの良い菊の中でも特に長く
楽しめる。
■ユーカリ〔ポポラス〕   フトモモ科/常緑高木/原産地オー
ストラリアを中心に約600種が分布。コアラが食べる木として有
名。「ポポラス」は丸く大きな葉が特徴。切り花で流通するユーカ
リはコアラの食用種とは別種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2552.jpg

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