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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2013.07.05

vol.227  − 察 (さっする) −

梅雨(つゆ)の合間の早朝、澄み切った青空の下、遠くの吾妻の嶺々の襞(ひだ)や残雪が、麓(ふもと)に居る我々の身近にまで迫ってきます。
輝く光と新鮮な大気が、ぼんやりとした頭の中を拭(ぬぐ)い去ってくれます。

構内の建物の片隅に、散り際の泰山木(タイサンボク)が寂しそうに並んでいるのに気付きました。
毎日のように側を通っているのに、曇りガラスに隠れていて、見落としていました。

         泰山木白波のごと崩れ去りぬ
                         木下杢太郎

夏鶯(ナツウグイス)、老鶯(ロウオウ)の大分上手くなった鳴き声が、執務室まで聞こえてきます。
苛酷な世情とは裏腹に、自然は、今まで何事もなく今日に至り、これからも何事もなく季節が巡ることを暗示しています。暫(しば)し、万物が織りなす幽(かす)かな調べに聞き耳を立ててしまいました。

出勤時、工事に携わっている人達の車が列をなして大学の構内に入っていきます。
早朝からの仕事、炎天下での作業の大変さを察すると、車の中から頭を下げていました。

今の立場になって直ぐに、公用車を廃しました。“経費節減には寄与しない”との周囲の躊躇(ためら)いに、「コストの問題でなく、覚悟の問題です」と答えました。
車を持っていないので、タクシーの運転手さんとよく話をします。

先日、運転手さんから、「県庁の方は夜遅くまで働いている。真夜中に勤務に入る人も多い」。週末もない毎日、黙々と働いている県や本学の職員の苦労を察して、感謝の念が籠もった言葉を戴きました。
「その一言が、皆を奮い立たせてくれます」と言って、車を降りました。

駅のプラットホームで列車を待っていると、本学に勤め、今は県に戻っている職員と出会いました。
相変わらず汗をかきながら、週末にもかかわらず、東京での打合せに出張とのことでした。

「一人一人が、求められる役割を果たすその先に未来がある」という想いをますます強くしました。

         善(よ)く行(い)く者は轍迹(てっせき)なし
                                 老子

黙々と行っている仕事にこそ価値があるのです。
そういう人は、自分の仕事振りを吹聴(ふいちょう)したりしません。

         騏驥(きき)も一躍に十歩(じゅうほ)すること能(あた)わず
                                           荀子

しかも、愚直に継続することなくして、求められている仕事を成し遂げることは出来ません。
一挙に課題が解決することなどあり得ないのです。原発事故という未曾有の惨禍なら尚更です。
第一線で献身的に、求められている役割を果たしている公的な立場の方々に感謝です。

6月29日(1951)、遠藤新(あらた)が逝去しています。
彼は20世紀を代表する建築家であるF・ライトの弟子です。甲子園ホテルを設計したことで知られています。彼の故郷は、東日本大震災で多大な被害を受けた福島県の太平洋岸に位置する福田村(現新地町)です。

7月2日(1961)、A.ヘミングウェイの命日です。
彼は、ライフスタイルを含め、今尚、多くの人々に影響を与え続けています。

今週の花材は、執務室は包み込むような優しさを、秘書室は涼やかさを感じさせてくれます。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■スモークツリー〔ピンクファー〕   ウルシ科
/落葉高木/原産:中国〜南ヨーロッパ/煙
がモクモクとしているような花姿が特徴の樹。
ふわふわした綿菓子のような部分は花後に花
序が伸びたもの。花自体は目立たず、花後の
姿を鑑賞するものとして流通。
■トルコギキョウ〈2種類〉   リンドウ科/多
年草/原産:北アメリカ/花の大きさや咲き
方、色合いが多岐にわたりとても品種が豊
富。祝事仏事を問わず人気の高い夏の花。
使用品種:「エグゼラベンダー」フリンジ大輪
八重咲、「ブルーフィズ」小輪一重咲
■菊〔バシリオ〕   キク科/多年草/一本
の茎が枝分かれして複数輪の花を咲かせるス
プレー咲品種。「バシリオ」は糸菊のような花
弁でグリーンがかった白色。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2271.jpg

【秘書室】
■クルクマ〔ホワイトカップ〕   ショウガ科/球根植物
/原産:熱帯アジア/《名前の由来》アラビア語で“黄
色”を意味する“kurkum”から。根茎に含まれる黄色の
クルクミン色素を染料に利用していたことより/幾重にも
重なり花弁のように見える部分は苞で、その中に小さな
花が咲く。暑さに強く夏でも花持ちが良い。
■利休草   ビャクブ科/茎の先端が蔓状になるしな
やかで涼しげな葉。江戸時代に薬用として渡来。根にア
ルカロイド系の成分が含まれ、駆除剤などに利用され
る。
■グリーンアナベル   ユキノシタ科/落葉低木/小
さな花が集まって開花し、20cm程の手毬状になる。緑
色の蕾から開花が進むにつれ白に変化。満開に咲き切
ると白からグリーンになり、ドライフラワーでも楽しめる。
■アンスリュウム〔シンシア〕   サトイモ科/常緑多
年草/光沢があり造花と見間違うような花。花弁のよう
に見える部分は苞で、棒状の部分が花。
■トルコギキョウ〔雪ぼたん〕   理事長室と同花材。
「雪ぼたん」は八重咲き白色。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2272.jpg

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