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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2013.05.31

vol.222  − 移 (うつろう) −

5月、生命(いのち)の高揚する時です。
田の上を吹き渡る風、早苗(さなえ)が戦(そよ)ぎ、水面(みなも)に波が立っています。
そして空豆の季節です。

         そら豆の熱きみどりや歳月も
                         櫻井博道

巡る季節は人生の鏡です。

帰国、機外に出ると大気の潤い、祖国を感じました。山野の緑に自生している藤の紫、目に涼やかです。

出張からの帰りの夜汽車(今は死語か…)、満月、車窓というカンバスに切り取られて闇の中で輝いていました。列車の進行に従って、月は横に、背後に、そして消えたりと、飽かずに眺めていました。

米国、アリゾナ、痛い程の太陽の下、ジャカランダ(jacaranda)の樹木が華やかに纏っている薄紫、新鮮でした。爽やかさに惹かれて、早朝、敷地を散歩をしました。芝生の上に、落花が散り敷かれています。一枚の絵です。

ブーゲンビリアの赤、パロヴェリデ(paloverde)木の黄色、夾竹桃(キョウチクトウ)の白や紅、砂漠の色との対比が鮮明です。
只、祖国の潤いを感じて、アリゾナを振り返ると、環境維持の困難さに思いが至ってしまいます。

米国西海岸、太平洋に沈む雄大な夕陽をみました。雲が薄く水平線上を覆い、太陽は、蚊帳(かや)を通してみる満月のようでした。
引き続いての出張先、広島でも、より赤々とした夕陽が山に沈むのをみて、我が国の自然に思いを馳せました。

帰国後、目覚めは郭公(カッコウ)でした。この季節の到来を告げる鳥です。

1978年から出席している国際学会、当時は、日本からの出席者は2、3人でした。
日本人の発表には通訳を付けろとも言われました。今、我が国の発表の質と量が学会を支えています。

昔は、数少ない日本人が一つにまとまって支え合っていました。そこには年齢、地位、肩書きは問題になりませんでした。「日本人」、それだけです。
今は、多数のせいか挨拶すらままなりません。ここにも、“何かを手に入れるには何かを捨てなければならない”を見て取ることができます。

学会での立食での朝食、食器やナプキンを、会場隅の片付け場所に持っていくと、ホテルのスタッフから“too kind”と言われ照れてしまいました。
こんな時、“旅の触れ合い”を感じます。そして、自分が日本人であることも…。

通学に使っていた鉄路に目をやった時、林の中から、昔そのままに、気動車が出てきました。
   (vol. 181 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=215
約50年前と違って、車体が色彩を纏っていました。昔の在来線の鉄路は、ゴトンゴトンという規則的な音でした。今、鉄路の継ぎ目からの音はなく、連続した低音が車内に響いています。

5月11日(明治24年、1891)大津事件が起きています。
昔の教科書には必ず載っており、広く知られています。その後、様々な視点から見直されて、「歴史とは現在と過去との対話(E・H・カー)」を実感させられます。
   (vol. 210 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=247

今週の花材は、執務室と秘書室は好対照の構成です。
片や森の中の風、一方は夕暮れの坪庭のようです。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■ドウダンツツジ   ツツジ科/落葉低木/
原産:日本/新緑・花期・紅葉と一年を通して
楽しめる樹木。花期は4〜5月で、スズランに
似た小さな白い花が咲く。他に赤花をつける
「ベニバナドウダン」、縞模様の花をつける「サ
ラサドウダン」もある。
■ギガンジュウム   ユリ科/原産:中央ア
ジア/ネギ坊主のような紫色の球状花。小さ
な花が密集して開花し、咲き進むにつれ球形
が大きくなる。ネギ属の花なので、ハサミをい
れるとネギの匂いがする。
■アルストロメリア〔ダイナスティー〕   ヒガ
ンバナ科/球根植物/原産:南アフリカ/一
本の茎から5〜8本の花茎を伸ばして花が咲
く。一つ一つの花はユリを小さくしたような形
で、花弁に入る斑が特徴。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2221.jpg

【秘書室】
■アスチルベ   ユキノシタ科/多年草/原産:日本・中
央アジア・アメリカ/《名前の由来》ギリシャ語で“輝いてい
ない”という意味。一つ一つの花が小さく目立たないことか
ら/とても小さな花が無数に咲いて穂状になる。非常に丈
夫な植物でガーデニングに適す。
■カラー〔レモン〕   サトイモ科/球根植物/原産:南ア
フリカ/《名前の由来》花姿(苞)がYシャツのカラー(襟)に
似ていることから/メガホン状の花弁に見える部分は苞で、
その中に棒状の花序を持つ。
■千日紅〔ストロベリーフィールド〕   ヒユ科/一年草/
《名前の由来》花期が長く、一つ一つの花の寿命が長いこと
から/細い茎の先に丸く可愛い花をつける。乾燥しても色
褪せず、ドライフラワーとしても楽しめる。
■テマリ草   ナデシコ科/多年草/原産:ヨーロッパ東
南部/マリモや芝を連想させる独特の花姿。ふさふさした
部分は、花・雄しべ・雌しべが変化したもの。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2222.jpg

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