HOME > 理事長室からの花だより

理事長室からの花だより

新着 30 件

一覧はこちらから

理事長室からの花だより

2013.02.22

vol.210  − 伝 (つたえる) −

雪降りの翌朝、黙々と歩道の除雪をしている人々の後ろ姿に、車の中から黙礼をしながらの出勤です。

本学も、遅ればせながら震災の記録集が英語版を含め出来上がりました。
本学に課せられた歴史的使命の一つは、原発事故の時どう立ち向かったのかを次の世代に残すことです。記録集の刊行は、その歴史的使命に対する答えです。職員や関係者の努力により、次代に伝えていくという役目の一部分は充分果たせる記録集になりました。

この記録集の刊行にあたっては、解釈はなるべく排除して事実の提示をとお願いしておきました。
何故なら、「歴史とは現在と過去との対話(E・H・カー)」だからです。
時代が変わると、一つの事実をどうみるかは変わります。例えになるかどうか分かりませんが、竜安寺に代表される白い砂利を敷き詰めた庭や、秀吉の黄金茶室、当時の室内の灯(あかり)がどういうものであったかを考えて鑑賞しないと、この発想の卓越さを認識出来ません。
戦国時代の世情を現代の常識で評価すると当時の皮膚感覚から遠ざかってしまうのと同じです。

この記録集には載っていませんが、先日、“いい話”を聞きました。
附属病院の売店(ローソン)は、本社の努力によって震災後、程なく物資の供給が開始されました。その時のことです。ローソンの店員の方が、「職員の方々は立派だった。誰1人として買いだめをしなかった。自分の分しか買っていかなかった」と、病院の幹部に教えてくれたそうです。

この話をもう少し早く聞いていれば、詳細を店員さんに聞き、掲載したかったのにと思いました。
「ドラマは外でなく人の心の中にある」
  (vol.52 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=78
  (vol.124【番外編】 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=157
  (vol.183 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=218
を改めて感じました。

医療人としての経験から、「先が見えれば耐えられる」、「希望のある斗(たたか)いは続けられる」ことを知っています。
今の仕事も、「期待して待ってくれている人がいる」のであればどんなに非難されても頑張れます。
何故なら、古人が、「人の小言や非難を受けずに済むような仕事をみつけるのは容易ではない。間違いは起きるし、間違いのないようにしたところで不当な批判を避けることは難しい」と喝破(かっぱ)しているのですから。

人生のたそがれ時に与えられた“自らを鍛える機会”は、同時に、自らを省(かえり)みる時間も与えてくれました。“時は流れる”ではなくて“時は積み重なる”こと、そして“時代が変わる”のではなく“人が変わる”のだと。
こんな当たり前の事でさえ、この歳まで深く考えていなかったのですから、“人生は短いのではなく、実はその多くを浪費しているのだ“という古人の箴言(しんげん)が胸に突き刺さってきます。

今週の花材は、執務室、秘書室とも春を象徴しています。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■花桃(ハナモモ)   バラ科/落葉小高木/原産:中国
/フルーツの桃が実る実桃とは異なり、花を鑑賞するための
園芸品種。花桃でも小さい実がなるが、食べられない。ひな
祭りに飾る花として古くから親しまれる。中国では桃の木に
体の中の悪いものを取り除く力があると考えられ、それが日
本に伝わり、ひな祭りに飾るようになったといわれる。
■ダリア〔マタドール〕   キク科/多年草/原産:メキシコ
/花径が3cm程の小輪咲のものから30cm以上にもなる
巨大輪まである。大きさ、花色ともに豊富で、世界に3万種
以上分布。「マタドール」は綺麗な紫色。
■アルストロメリア   ヒガンバナ科/球根植物/原産:南
アメリカ/一本の茎から花茎を伸ばし5〜8輪の花が咲く。
ユリを小さくしたような花姿で、花弁に入る独特の斑が特
徴。
■ユーカリ〔グニー〕   フトモモ科/常緑高木/原産:オー
ストラリア/原産地を中心に約600種分布。コアラの食べる
木として有名。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2101.jpg

【秘書室】
■ムギ   イネ科/一年草/原産:西南アジア/コムギ・オオムギ・
ライムギ・カラスムギの4種。切花として流通するのは主にオオムギ。
ドライフラワーにも適す。
■スカシユリ〔セラダ〕   ユリ科/球根植物/別名「アジアンティッ
クハイブリッド」/《名前の由来》花びらの先端が広く付け根部分が細
くなり、透けることから/大輪ユリ(オリエンタルハイブリッド)に比べ、
花が小さく香りもない。「セラダ」は濃い黄色の代表種。
■ピンポン菊   キク科/多年草/原産:オランダ/ピンポン玉のよ
うに真ん丸に開花。とても可愛らしく、非常に長く鑑賞できる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2102.jpg

▲TOPへ