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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2012.09.07

vol.187  − 不屈 −

気付いてみれば、暦は早や9月、日捲(ひめく)りカレンダーも随分薄くなってきました。
起床すると、外は薄暗く、“夏去りし”を実感します。空も風も秋の到来を告げています。暑さが和らいでくれると思うと少しほっとしますが、惜しむ気もあります。

残暑はなお厳しく、川の流れは床を晒しています。日照りです。
徒(ただ)でさえ原発事故で手酷い被害を被っている福島の農家の方々の心痛が聞こえてくるようです。

         秋立たば立たばと待ちし秋来ても
         夏のままなる暑さなりけり
                                井上文雄

伊豆からの帰り、道路沿いの険しい崖に山百合が群生していました。
厳しい条件のなか、凜とした姿は、みる者の襟を正してくれます。

         山百合の雨に倒れて咲き闌(た)くる
         崖より少し秋の風吹く
                                馬場あき子

福島の今は、未来がみえないことの不安があります。
と同時に、過去が失われてしまうことに、人々は耐え難い思いでいます。今まで身近にあって、気にも留めていなかった自然や人の繋がり、喪(うしな)って初めて、掛け替えのない、大切な存在であったことに否応無く気付かされました。
今というこの時、喪ったものに対する愛惜(切)の念が募ります。

福島の人々には、もはや取り戻すことのできない過去、不安な今、そして歩き出さなければならない覚悟の未来、人生とは切ないものです。

先日、久し振りに恩師からお手紙を戴きました。
社会的なしがらみから離れてほっとされると同時に、一抹の寂しさが綴られていました。不肖の弟子である私を時々夢にみること、その場面はいつも仕事の合間での学会準備であることが認(したた)められていました。
外来や病棟を忙しく動き回っていた頃、仲間や患者さんの姿が、尽きることのない残響となって脳裡に浮かびました。弟子をいつまでも優しく見つめていて下さる師の眼差し、自分の生きる価値をここに見出しました。

9月3日、奥州藤原氏が滅亡した日です。
この戦いは、東北のいわゆる「五戦五敗」の一つとして、坂上田村麻呂の奥州征伐(蝦夷戦争)以来、前九年・後三年の役、豊臣秀吉の奥州遠征、そして戊辰戦争とともに、東北の人々の不撓不屈(ふとうふくつ)の営みを今に伝えています。

学生時代、東北を旅した時、毛越寺(もうつうじ)のお堂の軒先に泊めてもらいました。当時は、そんなことが許されるような、穏やかな時間の流れや人々の営みがありました。
境内の浄土式庭園(当時は、少し荒れ果てていて、貴重な遺構だとは知りませんでした)、空と繋がっている広い空間が醸しだしている透明な寂寥感の漂う庭に、一瞬で魅了されてしまいました。翌朝、庭を散策したのを今でも覚えています。
今の視点でも、あの庭の佇まいはCool Japanと称される一連の和風デザインの原型だと言えます。

今週の花材は、二つとも「初秋」を感じさせてくれます。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■りんどう〔みやこ〕   リンドウ科/多年草
/原産:南アフリカ/日本の秋を代表する花
で、世界に約400種。「みやこ」はピンク色品
種。近年は母の日のカーネーション同様、敬
老の日の花として定着。
■ハイビスカスローゼル〔カクテルレッド〕   
アオイ科/非耐寒性常緑低木/原産:西アフ
リカ/一般的なハイビスカスとは異なり、ガク
が肥大する食用種。ハイビスカスティー原料
で、ジャムやソース、サラダなどに利用。花期
は秋で、花後に赤黒の実をつける。
■雪柳〔塗雪柳(ヌリユキヤナギ)〕   バラ科
/落葉低木/原産:日本・中国/《名前の由
来》柳のように茎がしなやかに垂れ、花を散ら
した様子が雪が降ったかのようにみえることか
ら/春に小さな花を枝いっぱいに咲かせる。
「塗雪柳」は紅葉したかのように赤く染めたも
の。
■ミレット〔パープルマジェスティ〕   イネ科
/一年草/原産:西アメリカ/耐暑性と乾燥
に強く改良されたキビの仲間。「パープルマジ
ェスティ」はアメリカで改良された園芸品種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1871.jpg

【秘書室】
■クルクマ〔ポニチャー〕   ショウガ科/球根植物/原産:タイ/蝋
細工のような花で、一か月近く鑑賞できる。幾重にも重なり花弁のよ
うにみえる部分は苞で、その中に小さな花が咲く。使用したオレンジ
の他、ピンクや白もある。
■アンスリュウム〔モーメント〕   サトイモ科/常緑多年草/蝋細工
で出来ている造花のような南国の花。花弁のように見える部分は苞
で、中心の棒状が花。主に苞を鑑賞するため、非常に長く楽しめる。
■サンダーソニア   ユリ科/球根植物/原産:南アフリカ/細い茎
にベル型の小さな花が連なって咲く。ランプを灯したようなオレンジ色
の可愛い花姿。原産地ではクリスマスの頃に咲くことから「クリスマス
ベル」の別名をもつ。
■モンステラ   サトイモ科/蔓性植物/《名前の由来》ラテン語の
“モンストラム”(異常・怪物)から/成長するにつれ、葉の縁から葉脈
にかけて深い切れ込みや穴ができる。独特の葉型が面白く、モチーフ
としても人気の熱帯植物。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1872.jpg

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