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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2011.10.07

vol.143  − 秋興 −

夕暮れ時、吾妻の嶺々の稜線が、夕景(せっけい)を背景に切り絵のように西の空を切り取っています。
この時季だけの、一時の天からの贈り物です。
帰宅して門を開けようとすると、どこからともなく金木犀(キンモクセイ)の香りが漂ってきました。
街路樹や構内の樹木も秋の姿を整えつつあります。

夕闇の中、庭ではコウモリが舞い、遠景に塒(ねぐら)に帰る雁ならぬ椋鳥(ムクドリ)が群れをなして飛んでいるのを目にします(福島では公害の元凶ですが)。
この時季の夕暮れの静寂さは、大気の透明感と相俟(あいま)って、深夜の雪降りのそれと双璧です。
通奏低音として聞こえてくる車などの音や光も静寂感を一層際立たせています。

室内には羽毛鶏頭(ウモウケイトウ)や鉢植えのコスモスで秋の到来を感じています。
この時季、切り花ではコスモスは日持ちが悪いようです。

         取りいでし去年(こぞ)の袷(あはせ)の
         なつかしきにほひ身に沁(し)む
         初秋(はつあき)の朝
                          (石川啄木)

お彼岸を迎えた時にも感じましたが、袷(あわせ)を取り出して衣更えをすると、時の早さに思わずたじろいでしまいます。
一日も早く季節の移ろいを受け入れて、その変化を愛でる心境になれればいいのですが…。

先日、再建に関わっている公的病院の幹部の方々と、目標達成を祝って会食をしました。献身的に努力して戴いた看護部スタッフを交えて、語り合い、久し振りに仕事の達成感を得ることができました。
毎月、リーダーとは、組織とは、会議の参加職員に熱く語り、呼応してくれた全職員に感謝です。
この充実感はいつ以来だったか…。

一方、大学のトップとして、今、背水の陣で立ち続けることの大切さを刻んでの日々(vol.133)、私はともかく、教職員達の緊張感の糸が切れて体調を崩さないか心配な毎日です。
   (vol.133 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=166

698年10月4日、薬師寺が完成した日です。
今、手元で愛でている骨董品に薬師寺東塔の瓦当(がとう)があります。随分昔、私の古都巡りを知った知人からの贈り物です。
瓦当の素朴、優美さに惹かれ、眼で形を、手で肌触りを愛でて心の温(ぬく)もりを得ています。

10月6日は近代建築の巨匠、ル・コルビュジエの誕生日です。
当時、装飾を徹底的に排除した壁面と直線的なデザインはさぞ革新的だったのではと思います。我が国では、国立西洋美術館のデザインが唯一彼の関わった建築です。
現代の我々には、LC2(グランコンフォール)やLC4のチェアをあちこちで目にします。狭い日本家屋ではとても釣り合いは取れませんが、憧れの椅子です。

今週の花材は、執務室、秘書室とも“秋”が主題です。花器一つで随分印象が違うものです。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)


今週の花


【理事長室】
■ドウダンツツジ   ツツジ科/落葉低木/
原産:日本/新緑・花期・紅葉と一年を通して
楽しめる樹木。花期は4〜5月で、スズランに
似た白い小さな花が咲く。他に赤花をつける
「ベニバナドウダン」、縞模様の花をつける「更
紗ドウダン」もある。
■秋色アジサイ   ユキノシタ科/落葉低木
/《名前の由来》花の最盛期を過ぎ、花色が
アンティークカラー(秋色)になるから。「秋色ア
ジサイ」という品種名はなく、アンティークカラ
ーに変化した「西洋アジサイ」の流通名/西洋
アジサイは日本のアジサイがヨーロッパに渡り
品種改良されたもの。日本のアジサイに比
べ、大きくて華やか。
■シンフォリカルポス   スイカズラ科/落葉
低木/《名前の由来》ギリシャ語の“symphor
ein”(ともに生ずる)と“karpos”(果実)に由
来。果実が房状になっていることから/7〜9
月頃に花が咲き、その後真珠のような実をつ
ける。今回は白実のものを使用。他にピンクの
実をつけるものもある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1431.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

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【秘書室】
■ホトトギス   ユリ科/原産:日本・東アジア〜インド/《名前
の由来》花弁の斑点模様が鳥のホトトギスに似ていることから/
山野草として人気があり、約20種のうち10種が日本原産。趣が
あり渋い花で茶花でも人気。
■リンドウ(ササリンドウ)   リンドウ科/多年草/原産:南アフ
リカ/日本の秋を代表する花で、世界に約400種。「ササリンド
ウ」は葉が笹のように尖るのが特徴。一般的なリンドウは開花しな
いが、ササリンドウは日中開花し、夜閉じる。
■アンスリュウム(バニラ)   サトイモ科/原産:中南米/ロウ
細工のようなツヤがあり、造花と見間違うような花。花弁のように
見える部分は苞で、中心の棒状が花序。苞を観賞するため、暑さ
にも強く非常に長く楽しめる。
■ユーカリ(グニユーカリ)   フトモモ科/常緑高木/原産:オー
ストラリア/オーストラリアを中心に約600種分布。コアラの食べ
る木として有名。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1432.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

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