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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2010.11.05

vol.99  − 勁さ (つよさ) −

寂しい初冬の訪れ、庭は桜、山法師(ヤマボウシ)、そして夏椿の赤が、常緑樹を背景に彩りを添えています。山査子(サンザシ)の実も赤の彩色に参加してくれています。

朝、蒲団の暖かさから抜け出すのが辛い、と感じたのはいつ以来か記憶がありません。週末のない生活を、年齢を考えずに長期間、体力だけでやってきた付けを、ついに払わされる羽目になってしまいました。
こんな時は、脳裡に昔の情景が浮かぶだけです。私の育った土地では、昔は、寒風の中、和紙の原料となるコウゾの木の皮剥ぎが行われていました。皮を剥ぎ取られた木は、鮮やかな黄色です。これを刀にした「チャンバラ遊び」を鮮明に憶えています。

人は自分の背中は見えません。それだけに、他人の背中を見て、初めて気付かされることがあります。
あまりの体調の悪さに、早朝会議の後、畏友(いゆう)の教授に相談してしまいました。彼は、会議後さり気なく検査器具を持参し、笑顔を絶やさず、患者(私)に語りかけ、話し続けているうちに診察を終えました。その間、それは流れるようで、そして患者に安心感を与える所作でした。改めてプロの仕事人の優しさと勁さ(つよさ)を患者の身になって味わいました。
果たして、今の自分はどうか、笑顔は保てているのか、患者さんに、そして部下に余計な緊張感を強いていないかを考えると、内心忸怩(じくじ)たるものがあります。

プロの仕事と言えば、「便器の掃除の際には視点をバスタブに置く」は、今でも新鮮です(竹谷年子「帝国ホテルが教えてくれたこと」)。
モダンジャズの世界で、真の天才と今尚尊敬されているチャーリー・パーカーが、取材記者からその素晴らしさを賞賛されると、「何年間か1日15時間、練習していました」という答え(マイケル・ディルダ「本から引き出された本」)は、「愚直なる継続」を自分の信条としている私のような凡人にとっては、まだまだ努力の足りないことを思い知らされます。
真に、「星の王子様」(サン=テグジュペリ)の「肝心なことは、目に見えない」は、一面の真実です。

只、当節の修業は、当事者が余りに受け身になっているのではという危惧があります。
差別、劣等感、貧困、矛盾、そして不条理の中で鍛えられることも多いのではないかと自分の経験から考えています。こんなことを言うと、老人の繰り言と言われそうですが…。

今週の花材は、執務室は錦秋の華やぎを、秘書室は落ち着いた晩秋を表現しています。


(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■クリスマスブッシュ(アルバリーレッド)   
クノニア科/常緑中高木/原産:オーストラリ
ア/現地では10mにもなる木。花期は初夏で
1cm位の白い星型の花が咲く。開花後にガク
が肥大して赤く色付く。切花は花期ではなく、
秋〜クリスマスに赤く色付いたものが流通。
■オンシジュウム(ハニードロップ)   ラン科
/原産:中南米/別名「バタフライオーキッド」
蝶が舞い飛んでいるような花姿から/およそ4
00種が熱帯・亜熱帯地域に分布する蘭。「ハ
ニードロップ」は斑の入らない綺麗な黄色。他
に茶色や白、ピンクなどの花色もある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/991.jpg
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【秘書室】
■チョコレートコスモス   キク科/多年草/
原産:メキシコ/名前の通りチョコレート色のコ
スモス。色だけでなくカカオの甘い香りもする。
赤みの強い「ストロベリーチョコ」や濃い色の
「カカオチョコ」などもある。今回使用しているの
は、長崎県オリジナルの「長崎ショコラ」。
■ソラナム(カボチャのなる木)   ナス科/
《名前の由来》麻酔性があることからラテン語
で“鎮痛”を意味する“Solamen”から。または
日当たりの良い場所で育つことから“太陽”を
意味する“Solanus”から/ソラナムはナス科
の総称で1700種ほどある。「カボチャのなる
木」は、カボチャそっくりの実をつける。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/992.jpg
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