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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2010.10.29

vol.98  − 錦秋 −

咳、体中の節々の痛み、そして寒気の為に、一晩中眠れずに夜来の雨を聴きながら床に就いていました。
真夜中に吹き始めた強風が、雨を屋根に一層強く打ちつけていました。
冬の到来が間近であることを、肌で知る夜になってしまいました。

仕事に追われているうちに短い期間で終わりそうな今年の紅葉、みる機会を逸してしまいました。
一足早い寒波襲来を詫びるかのように、朝霧の中、“白い太陽”が放つ早朝の光の中で、大きな虹が低く垂れ籠めた雲を背景に輝いていました。雲が晴れた後、吾妻の嶺々が初冠雪している姿を現しました。

それにしても“たおやか”と表現できる日本の四季の移ろいが少し変わってきています。
とは言え、この時季、暁方(あかつきがた)、福島盆地の西に位置する吾妻の山頂の冠雪が赤く輝く光景は一見の価値ありです。短い時間ですが、“神々しい”という言葉がぴったりです。

紅葉と言えば、世界中どこでも日本の秋のような文字通り“錦秋”だと思っていました。
カナダでは違っていました。私が研修していたカナダでの紅葉の名所と言えば、ローレンシア山脈です。
只、北米の紅葉は黄一色でした。カナディアンロッキーを“スイスの10倍”と自慢するカナダ人の言うように、紅葉の雄大さも私の想像を絶していました。
しかし、華麗さという点では、赤や黄が様々な具合に組み合わさっている我が国の “錦秋の紅葉”に軍配が上がるように思います。

紅葉は、いつ頃から我が国では鑑賞の対象になったのかという疑問が湧いてきます。紅葉に関する歌が万葉集に載っていることから、日本人は、古来、紅葉を美しいと感じて、愛してきたのでしょう。

秋の錦のような木々の華やぎには、春の花々の華やぎと違って、哀しみが少し伴っているように感じられます。
春の華やぎは、あまりに眩し過ぎて、時に、桜に代表されるように死を連想してしまうのかも知れません。
一方、秋の華やかさは滅びの美です。秋の幾分の寂しさを伴った美を愛でる心情は、「死の恐怖が自分には無い」(森鴎外「妄想」)という死生観に共通する感覚を感じます。

今週の花材は、執務室も秘書室も“秋”がテーマです。
最近はあまりみられなくなったダリアが、芒(ススキ)の中に日溜まりのようにうずくまっています。
秘書室は清涼感のある秋の表現です。


(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■糸ススキ   イネ科/多年草/原産:日本
/ススキは秋の七草の一種。日本全土の山
野に自生。糸ススキは葉の幅が5mm以下の
細いもの。今回使用したものは斑入り糸スス
キ。
■ダリア(ムーンワルツ)   キク科/多年草
/原産:メキシコ/《名前の由来》スウェーデン
の植物学者の名に由来/世界で3万種以上
あるとても品種の豊富。花径が3cmほどの小
さなものから30cm以上の巨大輪まである。
大輪種は一輪だけでも存在感がある。「ムー
ンワルツ」は淡いオレンジ×黄色の綺麗な花
色。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/981.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■ニシキギ   ニシキギ科/落葉低木/原産:日本・中国・朝
鮮/《名前の由来》秋の紅葉が非常に美しく、その姿を錦に例え
て/カエデ、スズランの木と並ぶ世界三大紅葉樹。枝にコルク質
の翼を4方向につける。春に小さな花が咲き、赤い実をつける。
■アンスリュウム   サトイモ科/常緑多年草/原産:熱帯アメ
リカ/団扇のような大きな苞が特徴。エナメル質のような光沢と
立体感のある花。苞を観賞するので、非常に長く楽しめる。今回
は2種使用、白色「バニラ」・緑色「みどり」。
■葉ぼたん   アブラナ科/多年草/原産:ヨーロッパ/《名前
の由来》幾重にも重なった葉が牡丹のように美しいことから/キ
ャベツのような観賞用の植物。大輪・小輪や紅葉、縮れ葉などあ
り。寒さに強く、冬のガーデニングに人気。
※拡大写真http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/982.jpg
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