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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2010.10.15

vol.96  − 秋思 −

早朝の出勤時、道路脇の庭に、“青みがかった白い女郎花(オミナエシ)”をみつけました。
こんな色のオミナエシがあるのかと調べてもらいました。「男郎花(オトコエシ)」という花はあるが、白い花だと教えて戴きました。あの花は一体何だったのか、気になります。藤袴(フジバカマ)の見間違えだったのでしょうか。花に疎い私には確かめようがありません。

今は、秋の行楽シーズンです。
前にも書きましたが(vol.59、65)、列車内の雰囲気が昔とは随分変わりました。
  (vol.59 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=85
  (vol.65 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=91
「過去は動かないから美しい」、
低い連続音の新幹線と規則的な断続音の在来線との違い、高齢者の年代層、あるいは“良い想い出も悪い想い出も、想い出は自分を裏切らない”という感覚を割り引いても、確かです。

父の急逝後、しばらくの間、福島で研修中は車で、帰国して東京へ移ってからは毎週末(当時は土曜日の午後)に在来線、新幹線(大宮始発)、そして車を乗り継いで実家を往復していました。
当時、車内に、懸命に努力しても届き切れない夢や目標に対する諦念に似た静謐な雰囲気を感じたことが何度もありました。私は、この雰囲気を今でも愛おしく感じます。

今、元気な高齢者達が、添乗員に頼り切って賑やかに(騒々しく?)旅行を楽しんでいます。
女性の添乗員が、車掌さんや客の苦情に顔色一つ変えず素早く対応しています。“今時の女性”の勁さ(つよさ)が眩しく感じられます。
車内の高齢者達の“明るさ”は、下に記す透明感のある秋の空の明るさとは、明らかに、何かが異なります。
         古(いにし)えより  秋に逢えば 寂寥(せきりょう)を悲しむも
         我は言う  秋日  春朝に勝れりと
         晴空  一鶴(いっかく)  雲を排(はい)して上れば
         便(すなわ)ち詩情を引(いざな)いて  碧霄(へきしょう)に至らしむ
                                        (劉禹錫「秋思」)
                                         (一海知義「漢詩一日一首〈秋〉」より)

毎日、津波のように押し寄せる書類、持ち込まれる課題や依頼、そして医師としてしなければならない勉強に、思索したり無為の時間をつくることがなかなか出来ず、心穏やかでない日々です。
過去を振り返ることの大切さと哀しさが理解できるだけの歳月を重ねてきました。
漢詩では、酒が重要なテーマかと思う程度々取り上げられています。“独酌”の時間を導入することも、ときには必要なのではと感じているこの頃です。

(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
※編集註:今回は、出張等で不在のため「今週の花」活け込み前に書き上げた原稿につき、お花についてのコメントがありませんことをご了承ください。

今週の花


【理事長室】
■ホトトギス   ユリ科/多年草/原産:日
本・東アジア〜インド/《名前の由来》花弁の
斑点模様が鳥のホトトギスに似ているころから
/山野草として人気が高く約20種のうち10種
が日本固有種。9〜10月に咲き、花色は他に
黄色、白、オレンジ、青など。
■小紫   クマツヅラ科/落葉低木/原産:
日本・中国/別名「小式部」/《名前の由来》
「紫式部」を小さくしたところから/6〜7月頃に
薄紫の花が咲き、10月頃に紫の実を付ける。
「紫式部」はまばらに実をつけるのに対し、「小
紫」は枝に沿ってまとまって実をつける。白花
が咲き、白実をつける「白式部」もある。
■ワラタ   ヤマモガシ科/常緑低木/原
産:オーストラリア/《名前の由来》“赤い花の
木”を意味するアボリジニの呼称/存在感のあ
る大きな花。シドニーのあるニューサウスウェー
ルズの州花。シドニーオリンピックのブーケに
使用された。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/961.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)


【秘書室】
■ピンポン菊   キク科/多年草/原産:オラン
ダ/ピンポン玉のようにまん丸に咲く可愛い菊。
非常に花持ちが良く、長期間観賞できる。今回は
白とグリーンの2色を使用。
■フリースドルフ   ナス科/一年草/観賞用の
トウガラシの一種。枝にパプリカを小さくしたような
実をいくつもつける。今回は黄色を使用している
が、他に赤やオレンジもある。
■ハラン(旭ハラン)   ユリ科/多年草/江戸
時代から生け花に利用させてきた青々とした大き
な葉。「旭ハラン」は葉の先端に白い斑が入るの
が特徴。他に縦縞の斑が入る「シマハラン」、点々
の斑が入る「ホシハラン」もある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/962.jpg
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