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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2010.08.06

vol.88  − 平穏 −

今年も、同じ時期、同じ場所にオハグロトンボをみました。
(vol.38 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=62
去年の子供と勝手に思い、愛しく感じてしばらくみていました。
庭は、一挙にサルスベリ(百日紅)が満開で、熱い夏の日差しの中、庭のこの赤が私に元気をくれようとしているかのようです。
大学構内の林は蝉しぐれ、一転、早朝には蝉の亡骸が散在しており、「生の儚さ(はかなさ)」を教えてくれます。

今年初めてのエンジュ(槐)との出会いは、去年より1か月程早く、思いがけない所ででした。
(vol.44 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=69
建物に導いてくれる小道の敷石にエンジュの白い花が、敷石の錆(さび)色と相俟って、散り際の美を演じていました。
落下した花をみて、頭上の木が何であるか初めて知るという毎年の光景は、「失ったものでしか語れない」人間の哀しい性(さが)を想い出させます。いつも、この光景は、普段見ようとすることしか眼に入らない人間に対する黙示録のようです。
他日、車中から皇居の内堀通りにエンジュの木が多く植えてあるのに初めて気付きました。

先日、和歌山へ行ってきました。
関西空港と和歌山市を結ぶ阪和自動車道から望む大阪湾、そして和歌山市のある天野盆地の景色は、海と山と対照的ですが、我が国の典型的な風景です。いつも心を和ませてくれます。
関西空港へ向かう夕暮れ時、根来(ねごろ)の丸盆を思わせる朱のような太陽が、淡路島の方向へ沈むのに出会いました。しばらく、時を忘れて車中から見ていました。
熊野灘から南方浄土を目指した補陀洛渡海(ふだらくとかい)もこのような中で培われた信仰かと思いました。
数日後、福島でも朱色の夕陽が吾妻の嶺に沈むのに出会いました。
人は何故、夕陽に心惹かれるのでしょうか。

先日、夭折(ようせつ)の画家、「没後25年、有元利夫展−天空の音楽」へ行ってきました。
(有元利夫「厳格なカノン」http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/88_kanon.jpg
 ※東京都庭園美術館(http://www.teien-art-museum.ne.jp)より許可を得て掲載)
彼の作品は、漆喰の壁を連想させてくれる画面の素朴さと登場人物の雰囲気が、観る人に懐かしさや安らぎを与えてくれます。まとまった作品をみるのは初めてでした。
私のような者に対しても、彼の絵は、一時、安らぎをもたらしてくれます。人格が円満になったような気がするから不思議です。
ウィリアム・バードをモチーフにした作品をみて、彼がどれ程バロック音楽を愛していたのかを知ったような思いがしました。

今週の花材は、執務室はヒマワリ、ワレモコウ、そして柳の組み合わせです。
ヒマワリも種類と使いようで“和”に調和します。
秘書室は真に清涼を演出しています。

(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■雲竜柳   ヤナギ科/落葉高木/原産:中国
/《名前の由来》竜が昇っていくような曲線を描く事
から/日本でも広く栽培され庭木や生け花に利用。
■ワレモコウ   バラ科/多年草/茶色の実のよ
うに見える部分が小さな花の集まりで花弁が無い
のが特徴。日本全土の山野に自生し7月〜10月
頃に咲く。根はタンニンを多く含み、漢方では止血
薬などに用いられる。
■ヒマワリ(チョコフレンド)   キク科  一年草/
原産:北アメリカ/《名前の由来》太陽を追うように
花の向きが回る事から。実際は花首の柔らかい若
い時期のみで花が咲く頃には動かない/「チョコフ
レンド」は茶褐色のセミダブルの品種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/88_1.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■オオニソガラム(サンデルシー)   ユリ科
/球根植物/原産:南アフリカ/星型の花を
咲かせる球根植物で100種以上ある。小さな
花を次々と咲かせ非常に長く楽しめる花。「サ
ンデルシ−」はクリームがかった白色で横に丸
く咲くタイプ。
■トルコギキョウ(ブライダルスノ−)   リンド
ウ科/多年草/原産:北アメリカ/《名前の由
来》桔梗に似た紫色とトルコ人のタ−バンに似
た花姿から/「ブライダルスノ−」は真っ白な
八重咲きの品種。
■スモ−クグラス   イネ科/茎の先端と各
節に、ほうき状に広がる花穂をつける。ススキ
のような形状で涼しげなグリ−ン。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/88_2.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

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