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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2010.07.23

vol.86  − 不定 −

草木の花々が季節の移ろいとともに入れ替わっています。花々は、黙して語りませんが、“時”の不定さを容赦なく教えてくれます。
通勤で、道端の庭越しにみえる花は、いつの間にか木槿(ムクゲ)や葵(アオイ)が主流です。
空港への高速道路の土手には夾竹桃(キョウチクトウ)が乱れ咲き、夏到来を告げています。
庭には百日紅(サルスベリ)が一輪顔を出し、庭際に揃えた梔子(クチナシ)と対照の美を醸しだそうと準備を始めたようです。

この2、3日、福島盆地の早朝は澄みきった青空です。
その青空を背景に、吾妻の嶺々がくっきりと稜線の美をみせてくれています。
山々の緑は、様々な濃淡をみせてくれており、それ自体が抽象画のようです。

秋田へ行ってきました。秋田といえば、秋田蘭画や勝平得之(農民版画家)が思い浮かびます。
今回は秋田市なので、有名な木村伊兵衛の「おばこ」を所蔵している秋田市立千秋(せんしゅう)美術館と、藤田嗣治コレクションで有名な平野政吉美術館に足を運びました。
前者には岡田謙三記念館が併設されています。彼の生きた時代を考えると、彼の不羈(ふき)の精神と日本を感じさせる幽玄(?)な作風が好きで、秋田へ行ったときは必ず寄るようにしています。

今回は「魯山人の宇宙」という企画展が開催されていました。これは、思いがけない贈り物でした。
窯別、系統別に分類された膨大なコレクションの整然とした展示、勉強になりました。
それにしてもこれだけの多方面での卓抜した美の創出、そして文献で窺(うかが)える狷介(けんかい)な性格(?)を考えると、作品と対話するのはいいですが、一緒に働いたり、語り合うのはしんどい感じがします。
やはり人間の評価は、熟成するまでの一定の時間が必要なのでしょう。「棺(かん)を蓋(おお)いて事定まる」は、時間を掛けて初めて一面の真実となるのでしょうか。

平野美術館の藤田嗣治は、何度みても「秋田の行事」のスケールに圧倒されてしまいます。
只、館内の空調や展示が必ずしも万全でないのではないかと心配です。1930年代の彼と関連作品の質量と展示されている場の差異を考えると、より近代的な入れ物を提供したくなります。

“一流の美”は、一時(いっとき)、一つ一つの音や色に自分の心が過不足無く反応できるようにしてくれます。只、仕事に戻るとすぐに背筋を伸ばして働いてしまいますが…。

今週の花材は、執務室は器とススキが相俟って気品のある黄色を演出しています。
秘書室は、緑と白を透明なガラスで組み合わせています。この組み合わせが、一層涼しげに見えます。

(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■シマススキ   イネ科/多年草/原産:日本
/ススキの園芸品種。縦に白色の斑が入るのが
特徴。他に、葉に黄白色の斑が入る「タカノハスス
キ」や葉の細い「イトススキ」もある。
■カラー(テンデンス)   サトイモ科/球根植物
/原産:南アフリカ/花弁のように見える部分は
苞で、その中に棒状の花序がある。「テンデンス」
は黄色〜オレンジのシックな花色。
■オンシジュウム(ハニーエンジェル)   ラン科
/原産:中南米/無数の蝶が舞い飛ぶような花
姿で、「バタフライオーキッド」という別名がある。
「ハニーエンジェル」は従来のオンシジュウムに見
られる斑が入らず、きれいな花色。
■ノバラ   バラ科/落葉低木/原産:日本・朝
鮮半島/花後の青実の状態。実は秋になるにつ
れ、どんどん赤く色づく。花期は5〜7月頃で、芳
香のある2cm程の白い花が咲く。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/86_1.jpg
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【秘書室】
■ブルースター(マーブルホワイト)   ガガイモ科/原産:中南
米/「マーブルホワイト」はブルースターの白色品種。他にピンク
色の「ピンクスター」もある。花弁は5枚で星型に咲き、ベルベット
のような独特な質感。
■ヒペリカム(グリーンコンドル)   オトギリソウ科/半常緑低
木/初夏に黄色い花が咲き、実をつける。実色は赤・ピンク・白・
茶など多品種。「グリーンコンドル」は爽やかな緑色。
■スチールグラス   ユリ科/原産:オーストラリア/ワイヤー
のように細く長く硬い葉。シャープなラインを描くのに最適なグリ
ーン。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/86_2.jpg
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