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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2010.06.25

vol.82  − 回想 −

梅雨の合間で文字通りの「五月晴れ」、今月も峠越えをし、太平洋を臨む病院へ行ってきました。
この時季、道路沿いの山の緑は一年で最も輝いています。夜来の雨で洗われたせいか、今日の緑の葉は、風が織りなす葉音と相俟って、「初夏」のシャワーを浴びたような爽やかさでした。

「何を見ても何かを思い出す」(ヘミングウェイ)、
白樫か裏白樫(ウラジロガシ)の葉が、風で葉の上面を下面に一斉に翻るのをみていると、いつも決まって昔の一コマが脳裡を過ぎります。それは、カナダで修行中、恩師の別荘に招待されたときの情景です。恩師と庭を散歩しているとき、壮大な樫の林で、濃い緑(上面)と淡い緑(下面)が舞っている様子を視たことです。

奈良市の興福寺南大門跡で、地鎮の儀式に使用されたと思われる須恵器の壺が出土したことを新聞が報じていました。
小学生の時、雨が降れば敷地が池になってしまう借家を引き払い、父が家を新築した時の情景をこの記事から初めて想い出しました。敷地の造成が終わった時、小さな器(壺?)に10円硬貨(?)か米(?)を入れて、敷地の四隅に埋めて祈る儀式に付き合いました。
私の親の時代までは、古来から続く儀式(しきたり)が受け継がれていたことに驚きます。

梅雨といえば、燕と紫陽花が頭に浮かびます。
季節の到来を知らせるように、燕があちこちの家の軒先に巣を作っていた光景も、近年はみられなくなりました。
この時季に身につけるようにしていた燕や紫陽花の私のネクタイは、縁(ふち)が擦り切れてきてしまいました。思い入れのあるネクタイほど、擦り切れてもなかなか遠ざけられないものです。

先日モーリス・ユトリロ展に行ってきました。
会場には若い人も多く、我が国での彼の人気の高さが窺い知れます。来場者の年齢構成が普段のそれとは異なっているのを感じました。
初期から最晩年までを通覧できる構成でしたが、「白の時代」の透明度の高い寂寥感や沈黙と比べて、晩年の作品には荒涼という感じの印象が強いように思いました。彼の生涯を知っている私達が今という地点から俯瞰すると、彼の絵は「荒廃」、「痛々しい」というのが正直な感想です。
帰路は重い足取りになってしまいました。

今週の花材は、執務室は緑と白の濃淡の組み合わせで、花器の渋さと相俟って落ち着いた雰囲気です。
秘書室は、梅雨に相応しい潤いのある可憐な優しさが表現されています。

(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■ドウダンツツジ   ツツジ科/落葉低木/原産:日本/花期
は4〜5月頃で、スズランに似た白い釣鐘状の花が咲く。新
緑、花期、紅葉と年間を通して楽しめる樹木。丈夫で育てやす
く、公園などの生垣にもよく利用される。
■ノーブル   ユリ科/球根植物/スカシユリの突然変異か
ら生まれた品種。淡いミントグリーンの花色と幾重にも重なる花
弁が特徴。ユリ特有の香りはほとんど無い。
■ナルコラン   スズラン科(ユリ科)/多年草/原産:日本/
日本の山野に群生。春にスズランのような白い小さな花が咲
く。草丈は50cmほどで、葉に斑が入り涼しげなグリーン。とて
も強健な性質でガーデニングにも最適。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/82_1.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■ハイドランジア   アジサイ科/落葉低木
/原産:日本/日本のアジサイがヨーロッパ
に渡り品種改良されたもの(西洋アジサイ)。
在来のアジサイに比べ、花色が豊富で球状に
開花。梅雨の季節にぴったりの花木。
■トルコギキョウ(エクローサリラ)
リンドウ科/多年草/原産:北アメリカ/夏の
花なので比較的暑さに強く、日持ちする。エク
ローサシリーズはバラと見間違うような花形
で、八重咲きの大輪種。リラは綺麗な薄紫色
で、他にピンク、イエロー、グリーン、ブルーな
どある。
■グリーントリュフ   ナデシコ科/多年草/
原産 ヨーロッパ東南部/ナデシコの一種で、
マリモや芝を思わせる花。フサフサした花の部
分は、花弁・雄しべ・雌しべが変化したもの。
■モンステラ   サトイモ科/多年草/原
産:熱帯アメリカ/切れ込みや穴のあいた葉
が特徴の蔓性植物。インテリアグリーンとして
人気がある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/82_2.jpg
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