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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2010.06.18

vol.81  − 万物流転 −

梅雨(つゆ)を前に、緑がますます濃くなって躑躅(ツツジ)の赤を際立たせています。
  (※編集註:東北南部は6月14日に梅雨入りし、今回はその直前の執筆です)
そして、鶯(ウグイス)、郭公(カッコウ)、時鳥(ホトトギス)が、早朝と夕暮れ時、庭や大学の林で競い合うように鳴いています。
風や雨の際(きわ)を看ることがあるのも、この時季の楽しみの一つです。

世の中、服飾や食では“走り”を大切にします。
先日、銀の糸で紫陽花(アジサイ)が織り込んである黒地の帯を締めた着物姿をみました。久し振りに、日本人の大切にしている季節感や美意識をみた想いがしました。
歳を重ねて、毎年の季節の移ろいを経験すると、「万物は移ろいゆくもの」を実感します。

先日、トロッコを舞台廻しに使った映画の紹介記事を見つけました。
読んでいて、想いを小学一年生の時に馳せました。それは山の掘削と堤防の工事です。町内を迂回する道路(今でいうバイパス道路の小型版)工事が、山を切り拓いて行われていました。切り崩した土を、トロッコを使って運び出していたのです。
一日の工事が終わり、夕闇が迫る頃、周囲の目を盗んでトロッコに乗り、坂を下って楽しんでいました。子供心には一大冒険です。大らかで、しかし自己責任が徹底されていた自律社会だったのだと、今にして想い至ります。

堤防工事では、昔あって今はないもの、棒を通して前後で籠のように担ぐモッコ(運搬吊荷資材)が鮮烈に心に残っています。
子供時代を過ごした故郷は、毎年のように川の氾濫に見舞われていました。畳を上げて床上浸水から家財道具を避難(今なら多すぎて不可能?)させたことを鮮明に覚えています。
これに備えて川沿いに築堤工事をしたときに、通学の往き来の際に、モッコやツルハシ(堅い土砂などを掘削するのに用いる工具)を目にしました。今の工事現場から考えると夢のようですが、今から50〜60年位前の地方では、この景色は現実の光景でした。

幻灯機(スライド映写機の原型)もそうです。そして、今では帰宅して電気時計(これを使っているのも今は絶滅人種のみか)が点滅していることでしか知ることのない「停電」があります。
時を積み重ねてきた今は、停電のなくなったことの有り難さ、そして、それを当たり前のことにしている関係者の途方もない努力に感謝できます。
歳を重ねた人間が、肌で理解できることです。

この花だよりも80回を越えました。「愚直なる継続」が、私のような凡人を普通人(弟子が聞いたら「異議あり、奇人変人」と言うでしょう)たらしめる唯一の道と信じて歩んできた人間にとっては、一つの節目です。

今週の花材は、執務室では“情熱を秘めた優雅”を、
秘書室では“凛とした健気さ”を表現しているように私は受け止めました。

(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■LOユリ(セラノ)   ユリ科/球根植物/ロンギ
フローラムハイブリット(LH)種とオリエンタルハイブ
リット(OH)種の交配品種。LHの代表種は「鉄砲ユ
リ」で筒状の花を咲かせる。OHの代表種は「カサブ
ランカ」などで、大輪で芳香の強い花を咲かせる。
「セラノ」は淡い黄色で優しい花色。
■スモークツリー(ピンクファー)   ウルシ科/落
葉高木/花自体はあまり目立たず、花後の姿を観
賞する。花後に花序が伸びて、煙がモクモクしてい
るような姿になる。ピンクファーはフワフワがピンクに
なる品種。
他にホワイトやグリーン、赤などある。
■グロリオサ(ロスチャイルディアーナ)   ユリ科
/球根植物/原産:アフリカ・熱帯アジア/メラメラ
と燃える炎のような花姿が特徴。半蔓性の植物で
葉の先端は巻きヒゲになり、他に絡まりながら成長
する。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/81_1.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■向日葵(サンリッチパイン)   キク科/一年草/
夏を代表する花。品種がとても豊富で、淡いクリーム
色からオレンジ、茶色やエンジ色もある。サンリッチシ
リーズは花粉のでない品種。他にサンリッチレモン、オ
レンジ、マンゴーもある。
■アナナス(ピンクパイン)   パイナップル科/多年
草/パイナップルを小さくした花姿の可愛い観賞用ミ
ニパイン。水に活けなくても1カ月程観賞できる。
■アンスリュウム(マキシマエレガンス)   サトイモ
科/多年草/光沢のある苞が美しく、トロピカルな趣
のある花。色や大きさは様々で、約500種以上が栽
培される。
■ギボウシ   ユリ科/原産:日本・中国/葉色がと
ても綺麗で涼しげなグリーン。初夏から秋にかけて花
が咲く。花は一日で萎むため「ディリリー」という英名を
もつ。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/81_2.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

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