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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2010.05.14

vol.77  − 皐月(さつき)−

この時季、友人や知人から新茶、山菜、アスパラガス、そして筍(たけのこ)が送られてきます。木や草々の花とともに、もう一つの春の贈り物です。
これら“大地の恵み”は、季節が一期一会であることを実感させてくれます。と同時に「他人との繋がり」を積み重ねてきた結果としての人の輪に感謝する機会でもあります。

茶摘みといえば、我々の世代はまだ「茶摘」という文部省唱歌を覚えている世代です。そして、5月2日頃にあたる、立春から数えて八十八夜を迎えると茶摘みが本格化するということも、知識として知っています。

長谷川櫂の「国民的俳句百選」を繙くと、茶摘みの詩が一首選ばれていました。
山菜採りは、万葉の昔の「若菜摘み」から続く伝統の風物詩です。
絵画でも江戸時代の代表的な画家の一人である久隅守景の「賀茂競馬・宇治茶摘図」(大倉集古館蔵)が知られています。(vol.41http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=66に「納涼図屏風」を掲載)

因みに、福島の地は、山菜やグリーンアスパラガスの一大産地です。私が以前勤務していた南会津地方は、真に山の幸の宝庫です。当時、一緒に働いていた職員から毎年送ってもらっているアスパラガスを、この季節、楽しんでいます。これを肴に、シャルドネやロワールのプイィ・ヒュメといった白ワインを飲んだら、心身の疲れを、一時、忘れることができそうです。

5月の詩といえば、漢文の授業で諳(そら)んじる程叩き込まれた杜甫の「絶句」が頭に浮かびます。
         江は碧(みどり)にして 鳥逾(いよ)いよ白く
         山青くして 花然(も)えんと欲す
         今春 看(み)すみす又(ま)た過ぐ
         何(いず)れの日か是(こ)れ帰年ならん

昔は、この詩を「音」のリズムとして読んでいました。
改めて読んでみると、色彩の対照を際立たせた前半と、後半での内省の対比が心に染みます。こんなとき、若いときに「音」として覚えることの重要性を再認識します。
と同時に、時を重ねてから読み返すことによる再発見の喜びは、年寄りの余得です。

今週の花材は、執務室は、山のような枝の拡がりが深山幽谷の趣を部屋にもたらしており、緑と白の対比が鮮やかです。
秘書室は、竹の器と緑の葉が、赤と好一対をなして落ち着いたバランスをみせてくれています。

(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■ドウダンツツジ(灯台躑躅)   ツツジ科/落葉低木/原産:日本/《名前の由来》枝分かれする姿が燈台に似ていることから/花期は4〜5月頃で、スズランに似た白い釣鐘状の花が咲く。新緑、花期、紅葉と年間を通して楽しめる樹木。丈夫で育てやすく、公園などの生垣にも利用される。ほかに「紅花ドウダン」や「更紗ドウダン」がある。白い花が多数咲いた姿を満天の星に例えて「満天星躑躅」とも書く。
※拡大写真http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/77_zoom1.jpg(無断転載等はご遠慮ください)


【秘書室】
■モカラ(ニューレッド)   ラン科/原産:東南アジア/バンダ、アラクニス、アスコケントルムの3種類の蘭を交配した人工種。南国の花なので、暑さに強く抜群の花持ち。鮮やかなオレンジやピンク、黄色など花色が豊富。「ニューレッド」は赤系の中でも落ち着いた色合い。
■利休草   ビャクブ科/原産:中国/茎の先端が蔓状になるしなやかなで涼しげなグリーン。日持ちが良く水揚げも良い。江戸時代に薬用として渡来。根にアルカロイド系の成分が含まれ、駆除材などに利用される。ブライダルや生け花にもよく利用される。
■ヒペリカム(ゴールデンピンク)   オトギリソウ科/落葉低木/原産:中国/花期は5〜7月頃で黄色い花が咲く。切花では花後の実を観賞するために流通。淡いピンク〜暗赤、グリーンなどの実色や実の大きさも様々で品種が豊富。
※拡大写真http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/77_zoom2.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

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