研究成果情報・学会等表彰 (研究成果)

英国科学誌「Scientific Reports」掲載 〔平成27年9月〕

Increase in dicentric chromosome formation after a single CT scan in adults
(成人の1回CTスキャンにおける二動原体染色体の誘発)



医学部 放射線生命科学講座
教授 
坂井 晃 ( さかい・あきら )
助手 
阿部 悠( あべ・ゆう )

 概要

論文掲載雑誌: Scientific Reports 2015 Sep. 9

医療被ばく(CT検査)による生体影響に関する発見

福島県立医科大学 医学部 放射線生命科学講座は、英国科学誌「Scientific Reports」2015年9月9日号において、医療被ばく(CT検査)による生体影響に関する発見を発表しました。本研究は、医療被ばくの中でも比較的被ばく線量の高いCT検査について、二動原体染色体 ※1 (dicentric chromosome : DIC) 解析(dicentric chromosome assay : DCA)という手法で、100 mSv未満の低線量被ばくの評価を行うことを試みたものです。

【研究成果のポイント】

1.
1回のCT検査 (5.78 mSv〜60.27 mSv) によって染色体異常が誘発されている可能性が示唆された。 しかしながら、今回の解析対象である二動原体染色体を持つ細胞は長期間生き残ることが出来ず、時間とともに消えてなくなることが分かっており、二動原体染色体の増加が、がんや血液腫瘍などの発生に直接つながるものではない。

2.
100 mSv未満の放射線被ばくにおいても二動原体染色体解析による線量評価が可能なことを示した。特に従来のギムザ染色 ※2 による手法に比べFISH法 ※3 で効率的な解析が可能であることが示された。

今回我々は福島県立医科大学附属病院を受診した成人患者10人を対象に、CT検査前後の染色体異常頻度の変化についてギムザ染色およびFISH法によるDCAを行いました。1検体につき2,000細胞まで解析した結果、10人全員において1回のCT検査によりDIC数の有意な増加が認められました。また、2,000細胞の解析では両解析法のDIC増加量が相関し、特にFISH法では1,000細胞の解析でも評価ができる可能性が示唆されました。これらの結果は100 mSv未満の低線量被ばくでもDCAによる評価が可能であること、1回のCT検査でも染色体異常が誘発される可能性を示しています。一方で、DICの増加量とCT検査による被ばくの推定実効線量の間では相関が認められていません。
 本研究で1回のCT検査により染色体異常が誘発されている可能性が示唆されました。しかしながら、今回の解析対象である二動原体染色体を持つ細胞は長期間生き残ることが出来ず、時間とともに消えてなくなることが分かっており、二動原体染色体の増加が、がんや血液腫瘍などの発生に直接つながるものではありません。

今回の解析結果から低線量被ばくにおいてもDCAによる被ばく線量の評価は可能であることが示唆されましたが、今回の解析条件では低線量被ばくにおけるDCAの実用には問題点が多いことが分かっています。1検体あたりの解析細胞数の増加や低線量域の定量評価に対応した新たな検量線の作製など、低線量被ばくにおける線量評価の適応条件や効率的な解析方法の検討などを進めていく必要があります。

詳細は、こちら(520KB) をご覧ください。

【用語解説】
※1 二動原体染色体  染色体異常のなかでも特に放射線の影響を受けて生じ易い異常
※2 ギムザ染色  血液標本染色法の1つ
※3 FISH法  
蛍光色素で標識した抗体やオリゴヌクレオチドなどをプローブに用い、組織切片や染色体の構造が保たれた状態のままでハイブリッド形成させてプローブ結合部位を蛍光で検出し、目的とするタンパクやmRNA, DNAの存在部位を特定する実験法。

(坂井 晃、阿部 悠)

連絡先

公立大学法人福島県立医科大学 医学部 放射線生命科学講座
電話 024-547-1421 / FAX 024-547-1704
講座紹介ページ http://www.fmu.ac.jp/cms/rls/
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