体調の悪い人が分かる?

 みなさんはクラスの友人の顔を見て、「もしかして、今日体調が悪い?」と気が付いたことがありますか?表情だけでなく顔色も体調不良を知らせるサインになっていますよね。改めて考えてみると、周囲の方々の些細な変化に気づく能力は不思議なように思えます。なぜ私たちは顔色から人の体調を気遣うことができるのでしょうか。

 私たちは青・緑・赤の錐体細胞を持っており、眼に入った光がどのような波長成分を有するかに応じて各錐体が活発に働き、その信号が脳に伝えられることによって色として知覚しています。私たちは様々な色を感じることができますが、これには3種類の錐体の活動比が関係しています。青錐体、緑錐体、赤錐体の典型的な最大感度波長は419 nm、531 nm、558 nmであり、普通に考えるとそれぞれの感度波長間距離は一定になりそうですが、興味深いことに緑錐体と赤錐体の最大感度波長は非常に近くなっています1)。この不均衡が生じているのは遺伝学的に何か重要なことがあったためだと考えることは不自然でしょうか。

 人が持つ緑錐体と赤錐体の波長感度が長波長域に偏った3色型の色覚であることは、3種類の錐体の波長感度が均等に分布した3色型や、2種類の錐体により色弁別を行う2色型よりも顔色の変化をよく検出できると報告されています2)。これは、顔色から感情を読みとり、健康状態を察知できる人の能力として活かされているようです。

 ここ数年の科学の進歩として、女性に四式型色覚の方がいることが分かりました3)。青・緑・赤という判断基準だけではなく、さらに別の色が見えている方々がいるようです。もしかするとこのような方々は人の顔「色」、つまりは体調をより鋭敏にとらえることができるのかもしれません。これらの仮説をもとに顔色を識別できるカメラシステムを開発すれば、光をとらえて人の体調を推定することができるようになるのかも。病院における診察の形が少しずつ変わってくる可能性を秘めています。

 

1)      色覚. 脳科学辞典. アクセス. 令和7年7月11日.   https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E8%89%B2%E8%A6%9A

2)      九州大学PRESS RELEASE(2017/06/14). 霊長類の色覚が、顔色を見分けるのに適していることを証明―適応進化の過程の解明に期待―

アクセス. 令和7年7月11日.  https://www.kyushu-u.ac.jp/f/30779/17_06_14.pdf

3)      エド・ヨン. 動物には何が見え、聞こえ、感じられるのか. 柏書房. 2025

進むべき道に迷い、考え込む少年のイラスト。左右に矢印の看板が立っている。

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