感情というコンパス

皆さんは何かを決める際、論理的に判断をしていると思いますか?新しい服が欲しいな・・・と思ってお気に入りのお店に行き、商品を手に取って悩んでみる。いろいろ考えたけど、デザインもいいし、今度遊びに行く際にこの服は最適!よし、購入しよう!私は今日も論理的に良い判断ができたと思う!

意思決定に係るテーマは心理学で良く取り上げられ、多くの研究が実施されています。私たちは「論理的に判断をしている」と思いがちですが、実は多くの場合、錯覚をしていることが分かっています。最初に「好きか嫌いか」の感情のレッテルをはり、その後「論理的な理由」を探しているようなのです 1)。

意思決定論を考察する際に「ビュリダンのロバ」というたとえ話があります 1)。空腹のロバがT字路に立っており、左右どちらに進んでも、同じ距離に同じ量の干草が置かれていた場合に、ロバはどちらの道も進まずに餓死してしまうというものです(注:西洋ではロバは愚か者のたとえとして使用されています)。私たちの思考や行動は外部の何かによって決定されているという決定論の考え方を持てば、2つの条件が全く同じ場合にどちらも選ぶことができなくなってしまいます。それに反して私たちは、自由な意思や直感によって物事を決めることができます。その選んだ道が最適であったと信じたいが故に、論理的な理由を後から探すということのようなのです。

人は皆、自らの進路を選択せざるを得ない時期がやってきます。「良い進路が見つからない」という不安を持つ方も多いのではないでしょうか。しかし、私たちは感情という優れたコンパスを持っています。「これは良いかも」という直感があり、それを基に意思決定を行い、最後に論理性を評価する。最初に「好き」と思えることに巡り合ったのであれば、心が論理的な理由を探してきてくれるのです。そう思えば思い切って進路を選択する勇気が湧いてこないでしょうか。

1) 今井むつみ. 何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?
日経BP. 2024


進むべき道に迷い、考え込む少年のイラスト。左右に矢印の看板が立っている。

メッセージ一覧

ページの先頭へ戻る