赤・緑・青

私たちが赤・緑・青と感じる光は、それぞれ波長650 nm、500 nm、450 nm程度の電磁波です。電磁波は電場と磁場が直交して進む波であり、マイクロ波やX線に色がないのと同様、可視光にも色はありません。人は可視光を識別するために、網膜内にある赤・緑・青の錐体細胞を利用しています。赤錐体は波長560 nm程度、緑錐体は530 nm程度、青錐体は430 nm程度を中心として、ある程度の波長幅に感度を有しています。私たちは、これらの細胞が同時に受け取った波長をもとに、色を識別することができます。

錐体細胞の機能には個人差があるため、色の見え方は人によって異なります。先天色覚異常は遺伝的要因によって発現し、男性の約5%、女性の約0.2%に存在していると言われています。数年前までは赤色レーザが一般的でしたが、大学の講義や学会等において、緑色レーザを使用する機会が増えてきました。赤色レーザは長波長の光であり、第1色盲(赤色盲)の方には非常に見えづらくなります。一方で緑色レーザは明るく良く見えますが、人によってはまぶしく感じるかもしれません。

外科医は手術においてレーザを使用します。このレーザから外科医の目を守りつつ、出血や組織を見分けるための眼鏡を開発していた研究者は、完成した眼鏡が色弱の患者さんたちの錐体細胞の機能を助けてくれることを発見します。光に色を与えてくれるこの眼鏡はEnChroma社によって販売され、半世紀以上の間、色を識別することに困難を感じていた方々に驚きをもって迎えられています*1, 2)。光に色はありません。しかし、光を色に変えるメカニズムは人々に幸せをもたらしてくれます。

私たちは今見ているものを共有できる現実として考えがちです。緑豊かな山々に沈む太陽が空を茜色に染める瞬間、それをきれいだと共感してもらえなければ残念に思うかもしれません。哲学で有名な逆転クオリアの思考実験にあるように、私が見ている赤色とあなたが見ている赤色は異なっている。それは当然のことなのです。さまざまな人に思いを馳せること。大学生の4年間で是非学んでほしいと思っています。

1) EnChroma: "Tough Guy" Sees Full Color for the First Time.
https://www.youtube.com/watch?v=xZ7AvvYsr54
2) Color blind awareness! 3 wives surprise their husbands with EnChroma glasses Stockholm Sweden.
https://www.youtube.com/watch?v=dVQKam5HWHU

色覚の違いを示すために、異なる色の皿と料理が並べられた画像。上段には一般的な色覚、下段には色覚異常の例が示されている。

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