平成30年度修了生の体験

臨床の現場では日々多くの事象に出会うものの、それらにじっくりと向き合うことなく過ぎる時間を過ごしていました。そのような中で、助産師としての存在意義をもう1度考え直したいという思いから、修士課程への進学を決めました。

研究テーマを選定するにあたっては、まず自分の興味のある分野で文献検索・検討を行ない、徐々に研究分野を絞っていきました。そして、母親の自覚する“力”に着目し、母親が自覚している母乳育児継続の力を明らかにするため、産後2~6カ月の母親を対象にインタビューを実施しました。インタビューでは、子どもとの関係性や母乳を与えることの喜び、母乳育児を継続する中で積み重ねた経験などが語られました。分析にあたっては、インタビューで得られたデータから研究テーマに関連した内容を抽出し、その内容の意味を明確にしていきました。そして、内容の意味合いや関係性を比較・統合し、類似性の高いものをグルーピングしながら母乳育児継続の力とは何かを明らかにしていきました。

得られた結果から本研究における母乳育児継続の力とは、①子どもの反応やはたらきかけによってもたらされる母ならではの喜び、②自然と湧き上がる母乳で育てたいという思い、③母乳を与え続けることで経験を積み重ねながら母乳育児を習得していくこと、④母乳育児を理解し協力し合える周囲の存在であると読み取りました。そこで、この4つの視点から考察を行ないました。

分娩の医療化・施設化、核家族化といった様々な要因に伴って母乳育児支援に関する課題が残る状況下、母乳育児を継続している母親と子どもの力強さに改めて気付かされると共に、さらなる支援の必要性を実感しています。また、本研究を通して、母乳育児を継続する中で習得していく経験そのものが母乳育児継続の力となっていたことから、今後は母親の持つ背景・経験の違いにも焦点を当てながら、母乳育児期間を通してどのような時期にその力が出現するのかといった縦断的研究の継続が課題と考えています。

H30年度修了 森 美由紀

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