『救急医学は医療の原点である』
            福島県立医科大学附属病院高度救命救急センターが開設されたのは、平成20年1月28日のことです。当初は附属病院4階東病棟(現・きぼう棟)にICU4床、CCU4床、HCU12床で始まりました。同時に全国で14番目、東北地方では初めてのドクターヘリが導入されました。さらに平成23年2月に救急医療学講座が設置され、初代主任教授に田勢長一郎先生が就任されました。
福島県立医科大学救急医療学講座および高度救命救急センターでは①院内の救急体制の整備、②救急診療の質の向上、③福島県における救急医療体制の整備を進めてきました。この院内の救急体制の整備のため、福島県内外から救急医の獲得をしております。現在では高度救命救急センターには16名の救急医が診療しており、うち日本救急医学会指導医4名、救急科専門医が8名となっております。さらに日本集中治療医学会専門医、日本麻酔科学会指導医・専門医、日本外科学会専門医、日本消化器病学会専門医、日本中毒学会クリニカルトキシコロジストなど幅広い医療が展開できる構成となっています。
また救急診療の質の向上のため、救急医療の標準化教育に力を入れてきました。日本でいち早く心肺蘇生のACLS(Advanced Cardiovascular Life Support:二次救命処置)や院外外傷診療のPTCJ(Prehospital Trauma Care Japan)の講習会を開催しました。これらはやがてAHA(American Heart Association:アメリカ心臓協会)のACLS、BLS、PEARS講習会やJPTEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care )、JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care )へと発展していき、福島県内の救急の向上につながりました。さらに一般市民への啓蒙活動として、県内の中学生へAED講習会を開催しております。
また、災害医療にも取り組み、DMAT参集訓練などを行いました。また、平成11年の東海村JCO臨界事故以来、緊急ひばく医療に関する教育にも力を入れてきました。平成23年3月11日に発生した東日本大震災には、当院救命救急センターが福島県の救急・災害医療体制の要として活動いたしました。このときに前述した訓練や教育が、東日本大震災の対応に大いに役立つことになったのです。
 福島県における救急医療体制として、福島県救急医療対策協議会を主催し、メディカルコントロール体制の構築に当たりました。救急救命士の処置拡大のためにACLSやJPTECの標準教育を行い、院内外で統一した評価と治療が行えるようにいたしました。また、県北地区の二次救急医療の強化のために、福島市から寄附講座である地域救急医療支援講座が設置されました。市内二次輪番病院の当直業務を救命救急センターが請け負うことで、二次病院においても救急医療が強化し、初期研修医にたいして救急医療教育を行っております。
平成28年12月にみらい棟が新設されると、1階に救急外来と入院病棟が一体化した災害医療・高度救命救急センターが開設されました。上記の20床に加えて、緊急被爆患者用の1床が増床されました。また、CTや透視装置、高気圧酸素装置が設置され、救急患者の治療を救急外来から集中治療室まで同じフロアで行えるようになりました。
我々は県民の健康のため、日本の救急医療の向上のため、最高の医療が提供できるよう邁進していきます。