EMERGENCYMEDICAL SERVICE救急医療

放射線災害医療(緊急被ばく医療)

福島第一原子力発電所における廃炉作業が現在も進行中の福島においては、あらゆる被ばく・汚染を伴うあらゆる傷病者が原発内で発生しうることを想定して緊急被ばく医療体制を構築しています。
被ばく医療については、日常の診療手順に被ばく医療特有の手順がいくつか加わった、いわゆる応用医療と考えています。その診療手順についてはJATEC™の診療手順に、被ばく医療特有の手順を組み込み、未経験者でも対応しやすいよう配慮しています。
さらにCBRNE(C: chemical 化学 , B: bacterial 生物 , R: radiological 放射性物質 , N: nuclear 核兵器, E: explosive 爆発物)と表現されるあらゆるタイプの災害に応用できることを目標の一つとしています。

基本原則

  • 傷病者に放射性物質の汚染があっても医療を行う。
  • 汚染があった場合は、適切な防護と汚染管理区域を設定する。
  • 通常の救命救急処置は、外挿される被ばく医療の診療手順より優先される。
  • 汚染検査と除染は、傷病者デメリットの最小化を担保した上で、可及的早期から行う。
  • 脱衣は原則として診療前ないしは診療初期に行う
  • 汚染管理区域内ではPrimary Surveyと蘇生までを行う
  • 除染してから汚染管理区域を退出する。
  • 傷病者の表面汚染密度が院内基準値をクリアーできない場合は、汚染管理区域退出前に汚染拡大防止策を施す(ドレッシング材で汚染部分を被覆します)。
  • 外部・内部被ばく線量の評価においては、線量計測値の確認はもちろんのこと、急性放射線症候群に関する問診、特に初発症状(嘔吐・発熱・下痢・意識障害)の評価を確実に行う。
  • 診療手順および除染のための表面汚染密度基準値は、傷病者重症度・緊急度、施設の医療資源や医療提供能力、災害時相により変化しうる。電離放射線障害防止規則等を参考に、各施設の実情に合わせて設定する。

本項に於ける用語の用い方

「緊急」 急性期の医療
「被ばく医療」 放射線による被ばく、放射性物質による汚染、またはその可能性のある傷病者に対するあらゆる種類の医療
「災害医療」 医療需要と供給のバランスが崩れた時に提供される医療
「放射線災害医療」 上記「被ばく医療」と「災害医療」の重なり部分
「原子力災害医療」 上記「放射線災害医療」のうち、原子力事業所で発生した事象に対する医療