11.信頼できる情報源 (Trustworthy sources) vs. 信頼できない情報源 (Untrustworthy sources)
概要
10.まではリスクそのものの特徴に注目しましたが、ここでは、リスクをもたらしている者やそれを伝える者の特徴に注目します。
一般的に、企業は環境汚染や健康に関する分野では信用度が非常に低いです。政府や規制機関も、警告を発するような場合の信用度は比較的高いですが、安全性を伝える際にはあまり信頼されないという二面性を持っています。ここで重要なことは、「多くの人が企業や政府を信用していない」ということを認識することです。(実際に企業、政府、規制機関が信頼に値するかは別問題です。)そして「信用されていない」ことを踏まえて、重要なことは2つあります。
① 長期的な視点で、企業や政府は一般の方々からの信頼を回復する方法を学ぶこと。信頼を失うのは簡単ですが、回復するのは非常に難しく、多くの時間もかかります。
② 短期的な視点では、信頼が脆いものであることを理解し、「信用してください」と頼まないこと。信頼を要求するほど信頼されなくなり、Outrageが増す可能性が高くなります。
例
多くの企業が環境に対しての汚染排出の量を大幅に削減しています。一方で、その大多数の企業は、自分たちが排出削減したことを証明する方法や戦略を考えていません。結果、どうなるでしょうか?
企業:「我々は、汚染の排出量を80%も削減しました!」
公衆:「じゃあ、証明してみて下さい。」
企業:「(グラフを表示して)これが排出量のグラフです。過去よりもこんなに排出量が削減したのです。これが証明です。」
公衆:「そんなの信じられませんよ、あなたたちが自分たちで作ったグラフでしょう?」
企業:「… でも、… 我々のこの分野の担当専門家が解析した結果です。嘘はありません!」
公衆:「そんなの信じられませんよ、あなたたちが自分たちで作ったグラフでしょう?」
企業:「…」
対応法
重要なポイントは、「信頼(Trust)」ではなく「結果に対する責任(Accountability)」を目指すべきです。それは、「我々を信頼してもらう必要はありません。他の専門家や専門機関に我々の行動を監視してもらいましょう。我々を信じなくても大丈夫な方法を探しましょう。」というアプローチです。このように信頼を要求しないことで、むしろ信頼されやすくなります。人間は信頼されたいと思うあまり、責任ある行動をとることや説明責任を全うすることを忘れがちです。
具体的には、何かを検査・解析する場合であれば、その方法や結果の解釈について事前にお互いが合意できる方法を確立することが重要です。サンプルの採取法や解析法、結果の解釈方法など、全てを事前に相談して確立します。特に直感的に避けたい相手もこの話し合いに含めることが重要です。この過程は時間が掛かるかも知れませんが、「結果が信頼できない」と言われる可能性は著しく低くなりますし、結果がどうであれ、皆がそれを受け入れることになるでしょう。
まとめ
企業や政府が信頼されていない現実を認識し、信頼を強要するのではなく、結果に対する責任を担保する方法を見つけることが必要です。事前に合意された方法を使用することで、結果に対する信頼性を高め、信頼を回復するための基盤を築くことになるでしょう。