2.自然のもの (Natural) vs. 人工的なもの (Industrial)

概要

「Natural(自然のもの)」と「Industrial(人工的なもの)」のリスクに対する受け入れ方には大きな違いがあります。自然のものは神から与えられると考えられるためか、許容度が高くなります。一方、人工的なものは人間が作り出したものとされ、許容度が低くなります。この点は、自主的(Voluntary) vs. 強制的(Coerced)の議論と繋がる部分もあります。

自然に土壌から発生するラドンは、特に地下室などに溜まり、肺癌の第2位の原因とされています。しかし、その危険性にもかかわらず、ラドン濃度の測定器の設置はなかなか普及しません。

一方、過去に放射性ラジウムを添加した蛍光塗料が使用されていた時代がありました。その放射性ラジウムが地下土壌に残存していることが発覚したことがあり、その際の住民の反応は大きく異なりました。ラジウムから発生するラドンは、科学的には天然ラドンとほぼ同じなのですが、こちらは「人工」または「工業的」ラドンと見なされ、強い拒絶反応を引き起こし、大きな反対運動へと繋がりました。

対応法

人工的なものを自然のものに変えることはできませんが、いくつかの点に注意する必要があります。特に、リスクを他のリスクと比較して説明する際に注意が必要です。科学者は、リスクが少ないことを説明するために「自然の**と比べるとこのくらいのリスクです」と比較することがありますが、この自然のものとの比較は一般の人々に安心を与えることもありますが、反感を与える可能性もあります。

例えば、「自然のラドンと比べると、この人工的なラドンは同程度のリスクです」と説明することで、聴衆から「科学者たちは、自分たちがばらまいた汚染を神の所業と同等に扱っている」と受け取られ、反感を買うことがあります。これは、Outrageを高める結果となります。

まとめ

「自然のもの」と「人工的なもの」は、Hazardの評価では区別がないかもしれませんが、Outrageの評価では全く別物として扱われ、人工的なものに対するOutrageは高くなる傾向があります。人工的なリスクを自然のリスクと比較することは、聴衆を安心させるよりも、反感を買ってしまう可能性の方が高いです。リスクコミュニケーションにおいては、この違いを認識し、適切に対応することが重要です。

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