4.悪い想起性がない (Not memorable) vs. 悪い想起性がある (Memorable)
概要
リスクの受け入れ度合いに影響を与える要素として、「Not memorable(悪い想起性がない)」と「Memorable(悪い想起性がある)」があります。Memorability(想起性)は、悪い状況が起こるだろうと想像する度合いを指し、対照的にFamiliarity(親しみやすさ)はリスクが高くても悪い状況が起こらないだろうと思う度合いです。想起性が高いと、そのリスクに対する警戒心や不安が増します。
例:想起性(Memorability)の原因となるものの例
個人の経験:
洪水を経験したことがある人は、普段から洪水に対して心配・警戒をしやすくなります。
メディア(テレビ、ニュース):
チェルノブイリの経験がなくても、ニュースやドキュメンタリーを通じて原子力発電所のリスクに敏感になります。
小説・映画:
遺伝子操作をテーマにしたSF映画を見たことがあると、バイオテクノロジーに対して警戒感を持つことにも繋がります。
シンボル(象徴):
欧米では「リンゴ」が潔白の象徴ですが、同時に「毒リンゴ」は非常にネガティブなイメージもあります。また、「牛乳」も同様にポジティブな象徴として扱われます。
対応法
想起性をコントロールすることは難しいです。人々の経験や記憶、イメージを変えるのは簡単ではなく、ほぼ不可能です。ただし、想起性の重要性を認識しておくことは大事です。その対応策として、早期に認識しておく(Acknowledge)ということがあります。自分たちが犯した過去の事故や不祥事については、最初からそれを述べて認め、議題に挙げておくことで、聴衆の心の中にある悪い記憶やイメージに対して早期に対応できます。これにより、次の課題に取り掛かる準備が整います。心の奥にある悪い記憶やイメージに対応せず、それらを引きずり続けることは得策ではありません。
まとめ
リスクコミュニケーションにおいて、Memorability(想起性)が高いリスクに対する対応は非常に重要です。人々の記憶や経験を変えることは難しいですが、早期に問題を明らかにし、率直に認めることは対応策の1つです。これにより、聴衆の不安や不信感を軽減できる可能性があります。