8.自分がコントロールする (Individually controlled) vs. 他人がコントロールする (Controlled by others)
概要
リスクに関するcontrol(コントロール)は、1.のvoluntariness(自主的か)に似ていますが、voluntarinessは誰が決めるか、controlは誰によって実行されるかに関わる点で異なります。自分自身でコントロールできる場合、人々はより安全だと感じやすく、他人によってされる場合には不安を感じることが多いです。
例:
自動車の運転:
多くの人が自分で運転する方が他人の運転する車に乗るよりも安全だと考えています。実際、85%のアメリカ人が自分は平均的なドライバーより優れていると思っています。
ステーキを切る例:
自分の右手(素手)でステーキを押さえながら、左手で包丁をもってそのステーキを切っている、と頭で想像して下さい。手と包丁はどのくらい離れていますか?今度は、自分の右手でステーキを押さえながら、他人が包丁でそのステーキを切る場面を想像して下さい。手は包丁から遠ざかったと思います。更に、包丁を持つ人が見知らぬ多国籍企業の人間なら、なおさらです。これは、誰がコントロールしているかによって安全の感じ方が変わることを示しています。
このステーキの例を考えると、リスクに関するメッセージの発信では、しばしば矛盾が見られます。企業は、一方では「包丁から手を離しなして下さい。我々専門家が対応しますから。」と言いながら、他方で「心配しないでください。」ということが多いのです。このように、専門家がコントロールを握りつつ安心させようとするメッセージは、実は矛盾しており、コントロールを奪われた人々に安心感を与えることはできません。コントロール(Control)と安心(Reassurance)は切り離せない関係にあります。
対応法
コントロールを共有し、分配することが重要です。具体的な方法としては、住民参加型の諮問委員会(Community advisory boards)を設置する、環境団体(関連団体)などを参加させる、などがあります。
コントロールを分配することは簡単ではなく、多くの組織や企業は自分の権限を手放したがりません。しかし、ビジネスにおいて、コントロールの分配が最終的に利益を増やす方向に働くのならば、それは実現可能でしょう。一方、規制当局は利益を追求しないため、コントロールつまり権限を分配することはより難しいです。実際に、規制当局が、自分たちの唯一のPowerであるコントロール(control)を分配することはほとんどありません。
ただ、これまでのデータは、コントロールを分配しないまま安心感を与えることはほぼ不可能であり、矛盾することを示しています。そのため、コントロールをどのように分配するかを考えることは、Outrageを減らすための重要な第一歩なのです。
まとめ
リスクに対するコントロールが誰にあるかは、人々の安心感に大きな影響を与えます。他人にコントロールを任せる場合、不安を感じやすく、コントロールを自分たちで持つことで安心感を得られます。コントロールの分配は難しい課題ですが、Outrageを減らし、Outrage Managementでは重要なステップになります。